★☆☆☆☆
~質に関わらない価値~
1994年の米映画。爆破アクションと言おうか、ラブロマンスと言おうか……。さまざま要素が絡み合うと言うより好き勝手に各要素をぶち込んだ闇鍋爆弾ロマンスと言ったところか……。
元CIAの工作員で爆破による暗殺のプロフェッショナルであるレイ(シルベスター・スタローン)の元にメイ(シャロン・ストーン)から暗殺の依頼が入る。幼い頃両親を殺し、今や町の有力者然としている三人を殺して欲しい、と。レイは固辞するがメイに懇願され、まずは素性を確認するため監視を開始する。メイのあまりの美しさにに引きつけられてしまい結局依頼を受けることになってしまうが、暗殺対象の警護人ネッドはレイがCIAをやめる契機となった事情のある人物だった――。
まず出てくる感想は「ぜんぜんスペシャリストちゃうやん!」という事になる。寡黙な戦士の雰囲気で描かれるレイだが、メイの声に惚れてのぞき見で姿に惚れて、ころころ転がされる童貞くさいおっさんといわざるを得ない。ライバルのはずのネッドも中二病っぽい「僕イカレテますよ」演技がきついだけでその戦闘力は未知数のまま終わる始末。巧みに自分の立場を切り替えてでっち上げの話で周囲を煙に巻きつつ、ありえない機転と実行力を発揮するメイこそが御都合主義の申し子としての「スペシャリスト」だろう。
しかし、このような映画が生まれた背景も、これが正しいのだという主張も分かる。
スタローンは前年1993年に「クリフハンガー」「デモリションマン」で再び注目を集めており、シャロンは1992年に「氷の微笑」でセックスシンボルとなっていた。この二人が主演し、それぞれの持ち味を活かした映画が作れれば内容はどんな物でも良いというタイミングだったのだろう。レイは筋肉トレーニングを怠らないマッチョな爆弾専門家という筋肉が邪魔では無いかという設定だし、メイはいかにも男を籠絡するミステリアスな女。この二人のベッドシーンがあるとなればもう勝ちゲームの様相だったのだろう。
時流を捕らえて売れる映画を出すというのは非常に難しい事だと思う。確実で簡単な事のように思われがちだが、実現するには幾つものハードルが存在したことだろう。その代償として質が損なわれたとしても納得である。
分かりやすくいうと、これは旬のアイドル映画で、両スターの共演という内容はノスタルジックな視線において、今も何らかの価値を持っている。