★★☆☆☆
~イージーリスニングアニメ~
2014年に放送された24話(2クール)のオリジナルアニメ。
二足歩行の巨大ロボット兵器が主力として活躍する世界。「アランダス連合王国」と「インゲルミア諸国統合体」は長い戦争状態にあったが、ついに均衡がくずれアランダス軍は撤退戦へと追い込まれる。
主人公はアランダス側のロボット操縦士であるススム上等兵。撤退のさなか新型機体「アルジェヴォルン」を運搬する民間会社を助けたことからそのパイロットとして登録されてしまう。担当技師(といっても新人で知識はほぼない)ジェイミーも従軍することとなり、二人でアルジェヴォルンに搭載されたユーリンクシステムの謎を追うことになる。
二人の所属する独立第八部隊の面々や両軍の策謀も描かれるため、主人公が引っ張る物語というより群像劇の印象が強い。
特に後半は主人公の比重が下がって部隊隊長のほうが表に出てくるくらい。
見終わった後思い返すと、自分はなぜこの作品を最後まで見たのだろうと不思議に感じるほど印象が薄い。普通このような感想を持つ場合、時間を損した! といった恨み言が湧いてくるのだが、なぜかそれさえもない。ロボットの位置づけはあやふやだし、格好良いシーンもあまりない。デザインも好みではない。感情移入できる登場人物はおらず、戦争なのに緊迫感は薄く、特に悲惨なことが起こるわけでもない。(起こっているはずなのだがたんたんと描かれるのでむしろ笑いが漏れそうになる)
ないないづくしなこの作品なのにちっとも腹が立たない。
思うに、この作品は存在が「ゼロ」に近いのだと思う。
良いところも悪いところも起伏が少ないフラットな作品。
一話を見ると良くも悪くもないので次も見てみる。それも良くも悪くもなく……という具合に最後まで至ったのだ。
なにも与えてくれないが、邪魔にもならない。ぽかーんと見る事ができるのでリラックスタイムとしての時間の方が勝ってしまい、時間を無駄にしたという風にも感じない。魚のかからない釣りだ。
存在感のない隣人というか、言い方を変えればとても自然な存在なのだ。
テレビで放送終了直前に流れる風景映像やイージーリスニングのような……。
こういった感想を書くのは製作者にとても申し訳ないのかも知れないが、むしろそういう存在を目指したということは無いだろうか。
なぜなら、この作品はすべての事柄が中途半端に、成し遂げられずに終わっている。
主人公は最終決戦に挑まぬまま、なんと機体の電源が落ちて終了。
ライバルは主人公と再戦できず、おなじく電源が落ちて終了。
ヒロインは端からなんの目的もなく状況に流されるだけなので成し遂げることもない。
部隊長の想いも、副隊長の想いも、成し遂げられることなく終了
戦線さえもが開戦前に立ち戻って終了。
物語は「行きて戻れる形」があるべき姿だと聞くが、それは螺旋階段のように成長を含めたものだろう。
今作は、誰も特に成長したと思えないまま、まるで落ちた石を拾い上げただけといった感触だ。
ここまで徹底するのは強い意志、それこそ白銀の意志が必要なのではないか。
現実は物語のように行かないし、意味の無いことの方が多い。
こんな事柄を描いたのかも知れない。
しかしまあ、こんな解脱者みたいな作品に合ったのは初めてだ。