2009年11月12日木曜日

魔法にかけられて


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★★★☆☆
~Blu-rayの付加コンテンツがすごい~ 

 
森で暮らす美女。
運命の相手を探すたくましい王子。
二人の中を引き裂こうとする、王子の継母=魔女。

おとぎ話の定番の展開がまずはアニメーションで描かれる。一線を画すのが魔女の取った妨害の手段。
なんと、結婚の妨害のために女を現実のニューヨークへと送り込んだのだ。
以上ような展開を見るとディズニーからの著作権的なツッコミ大丈夫かいなと心配になるが、この作品自体がディズニーの作品。

非常に大胆だと思う。
おとぎの国の女の子が現実世界でたたきのめされ、おとぎの国なんて所詮作り話で価値はない、と結論づけやしないかと不安になるが、うまいこと切り抜けている。
少々打ちのめされるも、持ち前の明るさで現実をおとぎ話のようにしていくのだ。
また、二つの世界を隔絶された別世界としていないのもうまい位置づけで、現実とおとぎ話の人物が入れ替わるなど、別の世界というより、別の国くらいの距離感
このようなバランス感覚なくしては、この企画が実現することはなかったのだろう。

視覚的な試みも面白い。
おとぎの世界は、そのままアニメーションで描かれる。それも今や見かけることのなくなった手書きアニメである。
CGアニメばかりとなったディズニーだが、手書きの最新作であろうこの作品のアニメパートの出来は実に出色。絵を描くスタッフの力量はもちろんのこと、CG技術をうまく組み込んで、ダイナミックな画面展開を実現している。
実際、このクオリティでもう一度ディズニーアニメをつくって欲しいと思うほどだ。CGアニメの精緻さももちろん良いが、手書きにはそれを描いた者の気持ちがより直接に乗っている。暖かいというありきたりの表現が、やはりしっくりとくる。

現実パートでも見所が多い。
ディズニーアニメの代表的なイメージを、実写でやってのけているのである。
音楽に乗せて、動物たちが女の子の家事を手伝うシーン。
女の子の歌が周囲を巻き込んで、登場人物達が美しい動きで踊り、歌うシーン。
これらをうまく実写に持ち込んで実現している。おとぎ話といささか異なっているのも面白い。

ただ、後半の展開はいささか唐突で強引に感じるし、ご都合主義が鼻につく。
深刻になることはないが、物語の重みも無い。これは制作者の意図通りなのであろうし、とやかく言うのも野暮だろう。
おとぎ話だと思えばそれまでだ。 

見終わった後、Blu-ray向けに追加されたコンテンツを眺めてみたが、これがすごい。
ディズニーマニアではない自分はいくつかしか気がつかなかったが、この作品、従来のおとぎ話系ディズニー作品のオマージュに満ちあふれているのだ。特典モードで鑑賞していると、突然にクイズが出題される。たとえば、このシーンはどのディズニー作品を参考にしているでしょう、など。
正解すると、参考とされた別のディズニー作品の該当シーンが再生されるのである。これが思いの外うれしい。
オマージュ部分が多いため、クイズの出題箇所も多く、さまざまなディズニー作品のダイジェストを楽しめるのである。
ああ、これは見たな。まだ見ていない、といった具合に、懐かしかったり、新たに見てみたくなったりする。
なるほど「魔法にかけられて」をより楽しむことのできるコンテンツでもあるし、ディズニー作品のプロモーションにもなっている。一石二鳥を無理なくはめ込んだ太っ腹に乾杯だ。

ディズニーはBlu-ray作品の付加コンテンツにかなりの力を入れており、「パイレーツ・オブ・カリビアン」も手間暇かかった特典付きだった。そういったものは子供向けのおまけだと侮っていたが、そうとばかりも言えないようだで、思惑通り、ダイジェストを見ているうちに、リトルマーメイドと美女と野獣が見たくなってきた。

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