2010年9月21日火曜日

真夏のオリオン

~貧乏くさい~
★☆☆☆☆

テレビ録画で見たので公開時のテンションなどは不明だが、全編で一貫しているのが貧乏臭さ。予算少なかったんだろうなあと常に気の毒になって淋しい気分になる。

太平洋戦争末期。沖縄方面に展開された日本海軍最後の戦力である潜水艦がいかに戦い、終戦を迎えたか。そのほとんどはフィクションであろう。
このような設定であるから、舞台のほとんどは潜水艦の中であるのだが、これがどう見ても広々している。広島、呉に展示されている自衛隊の退役潜水艦を見学したが、後世のそれでさえ驚くほど狭かった。撮影の都合などがあるのだろうし、なにも現物ままにセットを作る必要もないのだが、狭苦しさを表現しようという気がないのが残念。物語の追いつめられた雰囲気も薄くなってしまっている。
その広々とした船内の綺麗さがまた安っぽい。
使い込まれた機械という風がない。軍人らしい几帳面さでいつもピカピカに磨いていたとしたらこんなもんなのかとも思ったが、それなら磨き上げるシーンを入れるべきだろう。中途半端な汚れと軽々しさが、ブリキのおもちゃに見えてしまう。地上波デジタルの高精細が逆効果だ。

さらに艦長役が玉木宏。

人気があり、演技もそこそこならば問題ないようにも思われるが、一人涼しげに超然と、浮き世離れした雰囲気に他の乗組員と大きな隔たりを感じる。印象として、重みのない夢見がちな艦長が、超絶な幸運で生き延びていく物語と思われてしまうのだ。
ライバル役となる海上の米軍駆逐艦の表現がまた安い。
ロングのイメージカットと人物バストアップの両極端。最低限の画面要素で何とか状況を説明しようと一生懸命だ。選べない手段の中でよくやっているとは思うが、やはり安っぽさは拭えない。
物語も、妙なお涙頂戴の展開ばかりに辟易。全般に冗長な雰囲気で無駄に時間をとったカットが多い気がしてならない。

結論として、全てのパートが出来うる範囲でがんばっているけど、やはり全てが安っぽい。見ていると貧乏な祖母のかつかつな生活を見ているような、切なく、淋しい気持ちになる。(そういった経験はないが)
これがテレビドラマなら、このような切なさは感じなかっただろう。映画なのにこの安っぽさ。映画の中に馬鹿に出来ない努力を感じるだけ、やりきれない思いに捕らわれるのだ。

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