★★★★☆
~マカロニ・ウエスタンの起爆剤~
1964年公開(日本公開は1965)のイタリア産西部劇。
イタリアを中心とするヨーロッパ製の西部劇「マカロニ・ウエスタン(スパゲッティ・ウエスタン)」が大量生産されるようになったのはこの映画の大ヒットがきっかけ。
西部劇はもちろんアメリカの西部開拓時代を舞台とした映画なので、ハリウッドの時代劇、的な奇妙さがつきまとうが、我々日本人にはどちらも異邦なのであまりに気ならないだろう。
イタリア映画なのでイタリア語が原本で、それを英語吹き替えしたものを視聴する機会が多い模様。
※セルソフトを見ても英語収録が基本でイタリア語収録は少ない。
主演のクリント・イーストウッドはじめ、全編台詞のアフレコ感が強いのはこの経緯からだろう。
この作品は余談というか、作品外のエピソードに面白いものが多い。
・低予算映画なのでトップスターでないクリント・イーストウッドが主演することになった。
・主人公の衣装はイーストウッドの持ち込みが多い。
・黒澤明「用心棒」のまるっきりコピーであるが許可を取っていなかったのでその後問題になった。
・用心棒は時代劇で西部劇を、という意図があったらしいので、脚本的にぴったりくる。
・登場人物にアメリカ人が少ないことの理由付けとして、「メキシコとの国境付近」を舞台としている。
etc.
国境付近の町サン・ミゲルは無法者一家と保安官の二大勢力に分断され、町民のまともな生活は望むべくもない荒廃した有り様となっていた。
そこに流れ着いたジョーは両勢力に自身の腕前を見せつけ、甘言を弄し、両者のバランスを崩していく……。
保安官側勢力は正当なのかというと無法者に対抗するために無法者を雇っており、そもそも対立はどちらが密輸利権を握るかが原因となっており、両者悪という事になる。では主人公が正義かというとそうでも無い。正々堂々とはかけ離れた卑怯な手段を使い、彼の行為によって大量の死人が出る。
それなのに後味がすっきりなのは、彼の目的が「ちょっと見かけたいい女」を元の男と子供のところに戻すことであり、また途中でえらいボコボコの目にあっていながらもくじけないからだろう。
冒頭のエキセントリックな影絵に音楽が被さるオープニング。
最後の決闘の場にジョーが現れるシーン。奇跡的な美しさの土煙。
ワクワクせずにはいられないシーンが多く傑作に数えられるのにも納得。