★★★★☆
~ウェスタン満貫全席~
ジョンフォード監督。ロバートレッドフォード主演。映画史に残る記念碑的作品、らしい。
らしい、というのも、革命的作品であったからこそ、模倣者、追随者を多く生んだからだ。それはパクリというのではなく、今の映画文法ではすでに基本となってとけ込んでしまっている。そのため、今、改めて見ても、その先進性が感じられないのだ。
これは、ヒッチコックのサスペンスなどでも感じたことで、こういった意義だけは、同時代で鑑賞していなければ感じ取ることが出来ないのだろう。
この映画のもっとも革命的だったのは、映画の舞台自体を移動させながら、物語を作ったという点らしい。
それまでは、演劇の延長として、舞台を写す、という静的な存在であった映画に、馬車で移動するその車内の様子を、外観を、追いすがるインディアン達をつなぐことで、動的な物語舞台を構築したのがこの映画の金字塔だということだ。
確かに、駅馬車をつなぐ宿場での停止はあるものの、それ以外はすべて動きっぱなしだ。
このような見方をしなくても、今作は魅力にあふれた西部劇である。
さまざまな事情で同じ馬車に乗り合わせた旅客達が、危険あふれる荒野を駅馬車で移動する。もうこのプロットだけで、興味が湧いてくる。
関わる人数は多いはずなのに、見間違いや錯綜は一切無い。しかも、キャラクター付けを台詞一本で行うような不作法はしない。
行動の一つ一つがそのキャラクターを削りだしており、振り返ってみると、細かい説明はなかったはずなのに、それぞれのキャラクターの心情までが感じ取られるのだ。
無法者。
町の人々。
馬車。
騎兵隊。
インディアン。
決闘。
大戦闘。
その後生み出された西部劇のすべての要素が詰め込まれているかのような、満貫全席。なのに、少しも腹にもたれない。
ああ、やはり名作なのだろうと納得しきり。
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最近500円といった、非常な低価格で過去の名作が販売されています。
これは、映画黎明期の作品達が著作権を喪失し始めたからだということです。同じ映画が幾つもの値段が異なるパッケージで発売されていて、買うにも選びにくい。これには閉口です。
何しろ古い映画なわけですから、値段が高くたって画質が低い物も多いでしょう。安いのが悪いのかどうかも分かりません。
何か、新しい基準が欲しいものです。
著作権が切れた映画が増えてくるわけですから、これまでになかったややこしい問題、状況が発生してきそうですね。