2020年1月16日木曜日

宇宙戦争

宇宙戦争 スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray]

 ☆☆☆☆
~ただそこにあるだけの映画~

 2005年の米映画。宇宙人襲来に伴う騒動を戦闘では無く市井の人々のパニックを主体に描いている。
 原作はSFの父、H・G・ウェルズによる1889年発表のSF小説。
 映像化の回数も多い古典的な名作をスピルバーグ監督はどう扱ったのか。
 

 港で巨大クレーンを操作する仕事に就くレイ(トム・クルーズ)。元妻は離婚後すでに再婚しており、引き取られた息子と娘が定期的に訪れるが、それも失念したり、扱いが雑で嫌われがち。
 元妻から子供達を預かったその日、とてつもない雷が町に降りそそぎ、電気製品が一斉に使えなくなる。様子を見に家を出たレイの前に、地面を引き裂いて巨大な機械が現れた。機械は光線を放ち、人々を塵に還元していく。
 侵略は世界で同時多発しており、人類に反撃の希望が見えないまま、レイと子供達は町からの脱出を余儀なくされる――。

 2005年当時は輝いていた宇宙兵器の映像も、今見ると見慣れたクオリティに過ぎない。
 見た目のブーストが剥落した状態で鑑賞すると、色々中途半端な駄作と言わざるを得ない。フューリーと同じく「この映画は何なのだろう」である。虚無である。
 
 そもそも主役がトム・クルーズである事が、すでに色々あきらめている。港湾労働者の駄目親父をトムに演じさせてどうするつもりだったのだろうか。彼からにじみ出るスターのオーラは完全に「陽」のもので一挙手一投足が設定を拒否し続けている。
 想像してみて欲しい。もしレイを演じたのが我らがニコラス・ケイジだったとしたらどうだったか? 少なくとも序盤のちぐはぐさは無くなり、駄目親父がそれでも子供のために奮戦する様子が、もっと親身に感じられたのではないだろうか。
 たしかに映画の雰囲気は一気にB級感に沈むので、売れたかといえば――。
 
 他に心に残るのは子役としてダコタ・ファニングが演じるレイの娘のうっとうしさ
 ダコタはさまざまな監督、俳優から絶賛される名子役とのことだが、確かに事ある毎に金切り声を上げる姿は演技と思えない腹立たしさ
 真に迫った演技と言うことなのだろうが、そのうっとうしさが今作で重要かといえばそんなこともなく、不必要な方向に才能を発揮して映画の不快度をさらに上げているだけだ。良くも悪くも、映画の力を強化する力を持っているのだろう。
 
 とまれ全体から「こんなもんでしょう」という空気が漂い、本気で作られていない感が強い。少なくともスピルバーグは手癖で流している
 「急遽空いたトム・クルーズのスケジュールに合わせて突貫で作られた」「スピルバーグが次世代の映画撮影手法の実験として作った」などといわれているが非常に納得できる。
 
 ただ、本気で無くてもこのクオリティの大作をぽんと生み出せるハリウッドの映画制作システムは本当にすごいなと、その懐の深さに感銘を受ける。


 

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