2020年1月30日木曜日

盾の勇者の成り上がり


 ★★★☆☆
~序盤のおとしめっぷりが凄く良い~


 小説投稿サイトで人気を博した作品を原作としたアニメ。2クール25話で構成されている。
 

 図書館でとある本を手に取った尚文(なおふみ)は異世界に送致される。
 そこでは「盾の勇者」として扱われ、他に同じ境遇の剣、槍、弓の勇者と邂逅する。話してみるとどうやら他の三人にとってこの世界はメジャーなネットゲームの世界そのものであり、異世界ではあるが世界に対する理解度は非常に高い。ところが尚文の世界ではそのようなゲームは存在せず、どうやら異なる世界から召喚されたようである。
 召喚主である国王の態度も尚文、盾の勇者にだけ厳しい。事ある毎に他の勇者と差別され、格下扱い。
 それでも何とか仲間を見つけて救世の冒険出でようと張り切るが、さらなる虐待が尚文を待っていた――。

 異世界に召喚されて~の基本に忠実なカーボン紙作品かと思いきや、序盤の主人公に降りかかる虐待ぶりが他では見られない強烈さ。また、この世界では剣・槍・弓・盾の四人が勇者として召喚され、それぞれが共闘者でありライバルというのも特徴。決して仲良しではなく、むしろ険悪な関係。
 総じて他の異世界転生無双勇者作品と比べて苦戦や苦労が多いので違った気分で見る事ができる。虐められて拗ねまくる主人公は、手段を選ばないダークヒーローとして成り上がっていく。その心を癒す存在と出会い、性格が改善されていくのも見所。
 拗ねる気分というのは、ダークヒーローに繋がるのだなあと発見。悲劇の主役なのだな。
 
 悪辣な罠に落ちて周囲から嫌悪されることとなった尚文が成り上がる過程がおもしろいのだが、その目標は中盤程度で達されてしまう。
 物語の規模が徐々に拡大されるため悪役が相対的に小物になっていき、尚文の力がそれを凌駕してしまうのだ。こうなってしまうと成り上がりの面白さはなくなり、あとは他の救世物語と似たり寄ったりになる。ダークヒーロー感もぬるくなる一方なのだ。
 原作によるものと思われるが、抱えていた血肉の通った「描きたいもの」は「虐められてそれをやっつける」事だったのだろう。それ以降は散らかった登場人物、てこ入れ的な女性投入、その場その場ののりで進むうちわノリが目立つようになり、つまり、良くあるなろう系になる。大雑把に言うと、適当な感じである。
 ダークヒーローっぷりで差別化されていた尚文も、「やれやれしょうがないな」系のよくある主人公になってしまう。
 
 アニメーションは一定のクオリティを維持しているが、文章を映像に変える部分でうまく変換できていない部分が多々。
 文章で楽しめる内容をそのまま映像にするとまるでバカらしいシチュエーションになる事は結構多い。後半の重要な戦い、大きなクレーターの中で敵と対峙するシーンがあるのだが、早くその穴から出れば良いのに、ただただその中で敵と戦う。なんだか敵も味方もバカみたいに見えてしまう。
  これなどは「すぐ出れそう」という印象が強い映像が違和感を演出しているのだろう。同様に、位置関係や切迫感が伝わってこないシーンがとても多い。
 
 25話で構成されているため、物語のテンポ、量は丁度良い塩梅に調整されており、何よりとても区切りの良いところまで描いて終わっている
 原作はまだまだ続いているようで、アニメも続編の制作が決定したとか。
 ただ、25話でさえ中盤以降は蛇足的なので、今後についてはさらに長大な蛇足になってしまうのではないかという危惧は消えない。

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