★★★★☆
~遠すぎない未来像~
「ブレードランナー」とともに、監督リドリー・スコットの名を世に知らしめた作品。ぶれのない世界観の描写がすばらしい。
公開年次は1979年でCGの支援も借りられない時代。それなのに画面の密度と完成度は、今見てもすばらしいレベル。
空間を限定して作り込んだ緻密な背景美術を生かし、エイリアンの描写を最低限にとどめることで、技術の限界をうまくスルーしている。
たとえば、本作でエイリアン本体はほとんど動かない。
精密な模型を台座に乗せて水平に移動させたり(これは推測だが、当たらずも遠からずだろう)、腕を広げるシーンが挿入されたり。エイリアンが襲いかかってくるなど、比較的挙動の大きなシーンを改めて見ると、中に人間が入っているチープな香りがするが、そうした部分を出来る限り排除している。
また、エイリアンの一部しか映さない手法がうまい。
ギーガーによるエイリアンのデザインは生理的嫌悪感を引き出す秀逸なもので、全体はもちろんパーツの一つ一つが印象的。部分部分を映し出すことで作り物らしさを押さえている。当然これはホラー映画の手法としても適切で、見る者の恐怖を、その想像の中に増幅させる。
このような作りのうまさが相まって、今でも十分に見応えのあるSFホラーである。
黒字に緑文字の二色ディスプレイが堂々と使われているというのに、なぜ古びず絵になるのか。
おそらくそういった古くさい要素が、描かれる世界全体の中で、違和感なく収まっているためだろう。確かに我々の生きる現在でも、列車はレールの上を走り、数十年前の意匠が取り入れられた町で生きている。
未来の世界も現在の延長であり、変わらぬ風景も多く残っているのだというイメージ。
それがリドリー・スコットのえがく未来の魅力なのだろう。
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