★★☆☆☆
~現地感のある海外ロケ~
織田裕二主演の邦画。
全編イタリアロケで撮られたクライムサスペンス(になるのかな?)。
監督は「容疑者Xの献身」の西谷弘。
主演は織田裕二。
やはり織田裕二はスクリーン映えするというか、華がある。彼自体がドラマの成分を持っていて、全編にその風味を放射しているという感じ。
特別出演の福山雅治とイタリアの路地で振り返り、二人ならんで微苦笑するシーンがあるが、映画中の意味は限りなくゼロなのになんともゴージャスな、ある種の映画が持つお祭り感が溢れている。
映像は、海外ロケ特有の浮いた感触の薄い、地に足が着いた物になっている。きちんとロケした場所はかなり限定されていると思われるが、スナップショット的に撮った町や人々の風景が要所要所で挿入され、きちんと生活感のある血の通った物語舞台となっている。
ただ残念ながら、総合的に見ると大したことのない映画だったな、という感想になってしまう。
物語は勢いを保って進展していくが、どうも納得のいかない展開がそこここにあって、それを無視できるほどの没入感はない。犯人の動機からして説得力に欠け、スケールも大きいような、小さいような……。
細々とした演出には気が届いているが、そもそも何のためのシーンだろうと考えたり、なぜこうなっているのだろうと疑問を感じると、とたんにシチュエーションが並ぶだけのちぐはぐさが浮かび上がってくる。細密画を描いて体を上げてみると、バランスがむちゃくちゃだった、という感じか。
伏線や小道具の使い方。見所を釣り合いよくはめ込んでいく構成など、西谷監督の手腕は近年の邦画にない映画らしさを感じさせてくれてくれるが、向き不向きとして、もっと細々した人情的な作品の方が西谷監督の得意分野なのかもしれない。
脇を固める俳優陣も、いかにも選りすぐりで格調高く、きちんとした映画の範疇で見られる映画であることに間違いはない。
全編なぜかテレビドラマの映画版といった雰囲気だが、よくあるテレビスペシャルを劇場で流しました的ななんちゃって映画ではなく、劇場での上映がふさわしい(お金を払う価値のある)、きちんとした映画だ。
それにしても、題名はなぜこうなったのか、一応関連はあるものの大いに疑問。