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2021年3月22日月曜日

トムとジェリー (2021年の映画)

映画 トムとジェリー ブルーレイ&DVDセット (2枚組) [Blu-ray]

★★★☆☆
~実写の思いもよらぬ効果~


 まずはあらすじ。

※小一息子の感想(聞きとり筆記)
トムとジェリーは町に出かけて、けどいつものけんかで世界が注目した結婚パーティーを破壊してしまった。そして、タッグを組むことになったトムとジェリーはまずはお嫁さんを連れ戻しに行き、ペットの猫をつかって結婚式のある場所に、そしてエンディングで、その後に少しシリーズが続いた。そしておわり。
トムが飛んで落ちたところがおもしろかった。トムはちょっと詰めが甘かった。二人が結婚できて良かった。

 改めて読んでみるときっちりポイントをつかんでおり、長い映画を見られるようになったんだなあと感心してしまう。(親ばか)
 
 2021年の米コメディ映画。トムとジェリーは自分も子供の頃から見ていたし、息子がもっと小さい頃から、今に至るも放送している。何と息の長く、普遍的なコンテンツなんだろう。息子と一緒にテレビのトムとジェリーを見ていて改めてそのクオリティの高さに驚いた。

2021年3月8日月曜日

シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇


★★★★★
~一緒に変わってきてくれた~


 延期に継ぐ延期を経て、ようやく今日2021年3月8日に公開されたシン・エヴァンゲリオン。新劇場版四部作の最終となる作品を先程みてきた。
 パンフレット含めて他の情報が入る前に、自分のファーストインプレッションをネタバレにならないよう書いておこうと思う。様々な考察を経ての感想は、また書く機会があるだろう。
 

・とても良い幕引きだった

 三作目の「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」は非常にショッキングな内容で、ファンにとっては辛い内容だった。状況として墜ちきった形で終幕するため、いったいこの後どうなるのかと、評価を宙に浮かされたまま8年。この風呂敷を綺麗に畳むことはもはや出来ないだろうと思っていたが、これ以外は望めないだろうという形に至った終劇だった。
 特に各キャラクターの結末について、皆がきちんと幸せになる道筋を見いだせた点が嬉しい。
 振り返ると今作の着地点は『序』から積み上げられている物で、長い雌伏お見事です。
 

・Qがあってこそ

 Qがあってこその今作になっている。闇が深いほど、夜明けのコントラストは凄まじい。
  ※ただ8年はタメには長すぎるよね……。

・古いファンにとても誠実な内容

 TV版は26年前の作品となり、まさに四半世紀が経過している。今作は、その長い時間をシリーズと一緒に過ごしてきた視聴者に、とても誠実な内容になっている。
 自分(庵野監督)の葛藤をさらけ出したような生々しい感触がエヴァらしさの一端だと感じているが、つまり庵野氏も同じく長い時間をかけてシリーズに向き合ってきている。当時感じていたことが、時代を過ごして変わる事もあるだろう。むしろ変容していくことが当たり前だ。
 今作は、長い期間における作り手の変化を素直に認め、丁寧に総括している。同じく長い時間をかけて変容してきた受け手にとって、一緒に歩いてきた作品だと、強く感じさせてくれるのだ。
 みんな大人になったねと、作り手、受け手、キャラクターによる幸せな同窓会であり、これからも生きていこうと互いに肩をたたき合う感触。

・旧劇場版「Air / まごころを、君に」をもう一度見たくなる 

 テーマや描きたいことは旧劇、そしてテレビ版から同じで、驚くほどぶれていない。ただ、過去作はテーマを示す方法、見せ方が、子供っぽく強引で共感を得にくかったと思う。
 時を経てそれが整い、とても分かりやすく、優しい心根で展開されているのが今作だ。
 だからもう一度「Air / まごころを、君に」を見てみたいと思った。きっと昔と違う見え方がするだろう。

2021年1月26日火曜日

オール・ユー・ニード・イズ・キル

オール・ユー・ニード・イズ・キル [Blu-ray]
★★★★
~未来の端を切り開いていく~

 2014年アメリカ。日本のライトノベル『All You Need Is Kill』を原作とした「エイリアン侵略」×「タイムリピート」SFアクション映画。
 何をもってライトノベルとするのかは様々な議論があろうが、ともかくハリウッド全力で実写化された日本のSF小説である。その本気具合は主演がトム・クルーズである事からも明白。映像や演出のクオリティも高く、どこに出しても恥ずかしくない大作映画となっている。
 

 ギタイと呼ばれる異形の侵略勢力は瞬く間にヨーロッパの人類を駆逐。人類も決死の反抗をくり返すがいつも裏をかかれて敗北を重ねるばかり。
 残存兵力をつぎ込んだ最大で最後の反撃作戦を間近に控え、広報官を務めるウィリアム(トム・クルーズ)は将軍から最前線での活動を命じられる。命を賭けて戦ったことも無い口だけ勇敢なウィリアムにとってこれは死刑宣告であり、これまた口八丁で切り抜けようとするが将軍の反感を買い、脱走兵として逮捕。将校身分を剥奪され一介の歩兵として配属される。
 作戦が開始され、何の戦闘技能も持たないウィリアムは役に立たぬままギタイに殺されるが、偶然か最後の意地か、地雷を炸裂させて相打ちとなる。
 目が覚めると、歩兵に配属された場面に時がさかのぼっていた――。

2021年1月19日火曜日

移動都市/モータル・エンジン

移動都市/モータル・エンジン [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]

★★★★
~実写版ラピュタ!~


 英国の作家「フィリップ・リーヴ」の小説「移動都市」を原作とした移動捕食都市SFアクション。2018年。ニュージーランド/米映画。
 映画「指輪物語」のピーター・ジャクソン監督が脚本に参加しており、本作の監督であるクリスチャン・リヴァース自身、ピーター・ジャクソンの多くの作品でイメージボード(世界観を絵として作成する)作成に関わった盟友。
 

 世界を60分で崩壊させた戦争から数百年、人々は荒廃した土地に資源を求め都市を移動させながら生活していた。 そんな移動都市の頂点である巨大都市ロンドンで、史学士見習いのトムはある日ロンドンに「喰われた」小さな採掘都市から紛れ込んだ1人の女性と出会う。 (WIKIPEDIAより)

2020年10月12日月曜日

TENET

※アマゾン商品(パンフレット)へのリンクです。

~映像の圧倒的説得力~
★★★★★


 2020年。クリストファー・ノーラン監督による時間反転SFスパイ映画。
 

 ウクライナのオペラ劇場で「プルトニウム」の争奪を目的としたテロが発生。
 CIAに所属する主人公(名もなき男)は目標物の確保に成功するが、それはプルトニウムではない謎の金属塊であった。
 その後敵勢力に捕らえられ拷問にかけられるも、口を割る前に服毒に成功、自死をもって機密を守った――。 
 目が覚めると一連の経緯はとある活動に従事するためのテストであり、それに合格したと告げられる。
 目的は「世界を第三次大戦による滅亡からすくう」こと。続いて明かされたのは、未来から時間を逆行する物質が現在に送り込まれているという事実。
 複雑に入り組んだ二つの勢力の戦いは規模と混迷を拡大させていく――。

 導入やあらすじからこの映画の魅力を想像するのは非常にむずかしい。物語が複雑で面白さを説明するにはその全てを並べ立てる必要があるのだ。これはノーラン監督の作品全般に言えることで、上映時間中積み上げて積み上げて辿り着く場所(物語の頂上といえるクライマックス)からの絶景が1番の魅力であり、それを伝える有効な方法がないのだ。こういう作品が好きそうな人に、ぜひ見て欲しいと信用買いを薦めるしか手はない。
 なので、このようなブログの文面を読んでくれているあなたに、こう伝えるしかない。
 
 これは見るべき映画だ。
 
 最も伝えたいことは↑なので、ともかく騙されたと思って見て欲しい。おそらくこれ以上何を書いても、この作品を前情報無く最大限楽しむという経験を損ねてしまう。この作品は宝物のような存在で、そうそう出会えない特別な作品である。
 以下に視聴したくなるような要点だけ列記し、詳しい内容は書かずにおきたい。
 ぜひ最低限の情報だけで、この「映像体験」を満喫して欲しい。
 
 ①「時間移動」の新たな定義の新発明とそれに直結した映像表現

見慣れたはずの映像が複数重複することで生まれる、これまで誰も見たことのない異様な映像体験。

 ②作品自体がパラドックスであり、伏線の塊

考えれば考えるほど頭がおかしくなりそうなタイムパラドックスの酩酊感。正解は不明なのに、浮かび上がり、最後に心に残る金の砂粒。

 ③入り組んだ物語を分かった気にさせる様々な映画的技法

嘘の世界を現実と遜色ない体験とする、映画が持つ強い力。「なんでもCGで描ける」を越えた、説明でなく、心に投影される映像。

 いつになるか分からないが、もう一度見る機会を得た後、上記項目について詳しく書きたいと思う。

 

2020年7月2日木曜日

機動戦士ガンダムF91

 ※Amazonの商品リンクです。

※古い感想に追記をした物です。
★★
~素性のよさが惜しまれる単発作品~

 1995年公開の完全新作劇場アニメ。
 情報量が多いので冒頭あらすじは非常に難しいのだが、最も魅力的な部分に着目すると以下のような感じ。

 コロニーの学校に通う17才のシーブックは別の科の学生セシリーと出会い、その魅力に惹かれた。
 貴族政治を復活しようとする勢力がコロニーを急襲。戦火に巻き込まれたシーブック達は博物館のMSを操って脱出を試みるが、セシリーが敵に囚われてしまう。
 避難先で母が開発に関わったモビルスーツF91と遭遇。その頃セシリーは貴族政治の象徴として祭り上げられていた――。

 オリジナルガンダムの主要メンバー、富野由悠季、キャラクターデザイン安彦良和、モビルスーツデザイン大河原邦男が再結集した新シリーズ……のはずだったのだが、この劇場作品単発となってしまった。
 元々はテレビでの連続アニメとして企画された物らしく、なるほど、人物配置の厚み、背景設定の豊かさなど、如何様にも話を膨らませそうな奥行きある世界を感じる。単発となったのにはあれこれあったようだが、あずかり知らぬ一ファンとしては口惜しい限り。

 実際映画は壮大な物語の序章といった位置付けで、ほとんど謎のままのキャラクターや、これから活躍するのだろうという予感のみのキャラクターが沢山存在する。何しろラストに「これは物語の始まりに過ぎない……」などと明示されているのだから淋しさもひとしお。

 驚嘆すべきなのは、このような状況でも、一本の映画としてなんとか成り立っている点。序盤から話はすいすいと進み、意味が分からなくなるギリギリの高速展開を見せる。普通ならただの総集編になってしまうが、エピソードの取捨選択が非常にうまいのか、重みを失うことがない。どうやら、物語に重要なエピソードだけではなく、味のある部位を入れ込んでいるのが功を奏しているようだ。富野監督は、総集編やPVに特異な才能を持っている
 また、描くべき人物を限定したことで、ラストのまとまりが実際以上にキリッとしている。未来に展望を感じさせるエンディングは、富野監督の作品中珍しい部類に入るだろう。

 しかし、残念だ。

 この内容をテレビシリーズで描けていたなら、物語はもっと豊かな物になっただろう。映画の内容に当たる部分も、より情緒を持っただろう。その形が見たくて仕方がない。
 安彦良和の描くキャラクターは骨太で、バラエティーに富み、掛け替えがない。大河原邦男のデザインも、過去に捕われず野心的で、敵MSのデザインラインはザク以来の発明なのではないかと考えている。

 このように基本褒めてきたが、全体の印象として駆け足なのは否めないし、後半の展開は正直むちゃに過ぎる。それらを考慮に入れても、魅力に溢れる作品だと思う。

 今回何回目かの鑑賞だが、ブルーレイでは初めて見た。作画が群を抜いて良いということが無く、いささか古い作品だったので大して期待していなかったが、そのクリアさと精密さはいくつかの事に気づかせてくれた。
 ヒロインであるセシリーの作画について、多くの場合髪とブラウスに黒の描線を用いていない。また、登場シーンの多くにソフトフォーカスフィルターを使用しており、結果、セシリーの存在が画面から美しく浮き上がる効果を生んでいる。これは彼女の魅力を伝えるためでもあるが、他の人物と異なる背景を持っている彼女の立ち位置を象徴するためのエフェクトだとも思われる。
 このような点に気づくことが出来たのはブルーレイのおかげだ。再見する機会を与えてくれたという点においても、そうだろう。

2020年5月28日木曜日

逆襲のシャア

 

 ★★★★
~望んでいた物語~
※2008年の感想の調整版です。

 機動戦士ガンダムのライバルキャラクター、アムロとシャアの決着を描いた劇場版。

 短い尺の中にぎっしり要素を詰め込んだ、月餅のような物語。
 シリーズ第一作「機動戦士ガンダム」に歓喜したファンは続編シリーズ「機動戦士Zガンダム」に少なからぬ失望を覚えた。ヒーローであったアムロとシャアが、社会の常識に押し潰され、窒息しそうになっていたからである。

 今になって考えてみれば、あれほどの事を成し遂げた人物が、その後も自由に生活できるはずはないだろうと想像できる。世の中から無責任な関心を寄せられ、また、自分の言動の影響の大きさを認識した人物が、どうにも煮え切らない生活を送っているのはありえることだ。そういったしがらみに捕まった「大人」を尻目に新たな主人公が情熱で駆け抜けて行く、という構成なのだろう。だが、かつてのヒーローの情けない姿を見るのはファンにとってうれしいはずもなく、見たかった続編はあのような物ではなかったのだ。

 そこに、この逆襲のシャアである。

 Zの流れを引き継ぎつつ、葛藤を乗り越えて再び自分に立ち戻った二人のライバルが、卑怯や弱さを包含した大人として、対峙しなおしている。
 シャアの野望を食い止めようと立ちはだかるアムロ。それぞれに正義があり、悪がある。これぞ大人の戦いだ。

 この物語にも、当然この時代の若者が登場する。が、それは二人のヒーローを揺るがすことは出来ない。事情を理解しきれぬまま、決めつけの狭小な自意識でヒーローにちょっかいをだす、邪魔な存在として描かれている。(少なくともそう感じてしまう)
 大人は大人の立場で、子供の小賢しさを無視するのだ。Zとは異なるこの態度が、とても頼もしい。

 そのような二人の戦いは、まさにこれが見たかったと体震えるものだ。今だに共通の女性に心捕われている姿は、情けなくもあり、切なくもあり。だが、そういう二人が、僕は(おそらく僕ら、は)好きなのだ。

 ラストをファンタジー気味に強引にまとめるのは賛否あるだろうが、世紀のヒーローの結末としては、華やかでいいのかもしれない。

 見直してやはり思うのは、

 ・シャアのロリコンが、全ての元凶
 ・チェーンかわいい

 そして、平民代表ブライトさんがシャアに言わせた言葉、
「やるな。ブライト」
が心に残る。

2020年5月25日月曜日

風立ちぬ

風立ちぬ [Blu-ray]

 ★★★☆☆
~創作という呪われた性(さが)~

 2013年公開のアニメーション映画。監督は宮崎駿。
 

 子供の頃から飛行機を作ることを夢見る堀越二郎は第二次世界大戦に向けて緊張の高まる中、飛行機の設計者として才能を開花させていく――。 

 まず、ここまで宮崎駿がパンツを脱ぎ去って自身をさらけ出した作品は、「未来少年コナン」以来初めてではないかと思う。
 コナンの時(宮崎氏37才。既婚)は、それまで自由に創作できず鬱屈、堆積したオタク願望を脅威の熱量と圧力でダイヤモンドに変質させた。その鮮やかさ、さわやかさに目を奪われるが、やりたいシチュエーションを出し切り、行きすぎて変態的な領域に突っ込んでいる箇所も多い。もちろんそれが良い!
 未来少年コナンは「原作あり」だが、初の宮崎駿が好き勝手につくったオリジナルアニメーションだと思っている。
 
 その後彼はたくさんの作品を生んでくれたが、確実におもしろい作品でありながら、「ナウシカ」や「もののけ姫」でさえどこかきれい事と感じていた。最大の理由は自分が年を取ったことだろうと思うが、何らかの窮屈さが宮崎氏にもあったのでは無いだろうか。
 何のために、誰に向けて作品を作るのか。
 彼は常にそれを大前提に物を作っているのではないかと思う。作品は自分の思いをただ叫ぶものではなく、社会に接続され時代の中で立ち位置を獲得するものだという意識。これは盟友、高畑勲監督から薫陶されたものかも知れないが、そういう作家なのだと思う。
 どんなに気楽に作ろうとしても、彼の作る作品はただのエンターテイメントではいられないのだ。良くも悪くも。
 
 そんな彼が、久々にとうとう好き勝手につくったのが、この「風立ちぬ」なのではないか。
 これまで積もりに積もったたくさんの思いを、コナン同様周囲に斟酌せずに一息に吐き出そうとした作品に思える。
 
 「風立ちぬ」は、物作りに取り付かれた男の、どうしようもない性(さが)を描く物語で、宮崎監督の私小説のようなものだ。
 失敗したり、恋に揺れたりしながら、それでも結局物作りにしか魂を捧げることができない。
 物作りのために、たくさんの人をないがしろにして、それでも価値があるのだと信じたり自分を丸め込んだり。
 結果たくさんの後悔と、先達たちとの共感、すがすがしさに救われたり、絶望したり。
 作った物の価値は時代に呑まれて転倒していき、それを目の当たりにしながらも、のめり込んでいく。
 
 飛行機づくり以外について、二郎は結構場当たり的だ。
 分かりやすいのが恋。
 宮崎駿の演出は登場人物の感情に伴って具体的に容姿を変化させる。ナウシカやラピュタでお馴染みなのが、髪が逆立つ演出。まさに怒髪天を突く。
 今作で注意すると興味深いのが、瞳の輝き。人物の心がときめいたときに、目がウルウルと輝いている。
 二郎が奈穂子と出会うシーンで、奈穂子は一目で二郎に憧れている。反して二郎が奈穂子にきちんと恋するシーンはどこなのか。それが、二郎の証言と合致しているのかどうか――。
 終盤、二郎の元を去った奈穂子を二郎は追わない。飛行機についてはあんなにも必死に食らいついた二郎が、奈穂子には冷静なものだ。
 
 だから奈穂子は、そういう男と知りながら惚れてしまった女は、一心に愛し尽くしても自分のものにならなかった男の魂に、呪いをかけるのだ。
 最後の彼女の台詞「生きて」は、絵コンテの段階では「来て」だったのだという。このシーン、二郎の心象風景であるのだから、結局彼自身の言葉といっていい。
 好きなことをやりきった男に女が優しく「来て」なんて、なんて甘ったるい結末だろう。完成した映画は「生きて」となり、続く二郎の「ありがとう」は「甘やかさないでくれてありがとう」なのだろう。
 自分は「来て」の方が好きだ。こちらの方が宮崎監督の全裸だと思うから。
  
 ふと目をあげれば廃墟であり、夢の跡形であり、愛していた(と思っていた)人の残像――。
 
 物作りに関わり、狂ったように専心した経験を持つ者にとって、この映画は大筋として理解しやすい内容ではないか。
 熱中するときの幸福感。世界と歯車ががっちりかみ合ったと感じる自身の拡張感――。
 そして、そのために二の次になっていった愛する人や物。それに対する反省を含まない悔恨の思い――。
 理屈で理解というより、心当たりがあるのだ。
 
 劇中最初から最後まで登場するカプローニとの異世界対話についても、心当たりがある。
 創作活動を続けていると、他の作品に強い共感を感じる事があるのだ。
 なぜそういう形になっているのか。なぜその選択をしたのか。
 そういうことが分かる作品がある。まさしく作品を通じた創作者との対話だ。
 作中の描かれ方では、二郎はカプローニと終生共感を保持しているが、これは幸せなことだろう。
 二郎の思いはずっと同じ方向を向いており、一途だったということだ。
 
 カプローニは、夢の中で語る。
 
 「飛行機は美しい夢だ。設計家は夢に形を与えるのだ」
 
 この言葉は創作全てに当てはまるだろう。
 映画も、小説も、音楽も、ゲームも――。
 素晴らしい輝きを感じる方向に、手を伸ばし、具体化して手元に引き寄せようとする行為だから。
 
 この映画も、無論。
 
 美しい夢だ。

2019年12月9日月曜日

ターミネーター:ニュー・フェイト

ターミネーター:ニュー・フェイト [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]

★★☆☆☆
~女子会もしくは同窓会~

 1984年公開の「ターミネーター」からさまざまなナンバリング、関連作品を生んだSFアクション映画の2019年公開最新作。ナンバリングで言うと6作目になるが、さまざまな理由で評価が芳しくなかった3/4/5(新起動)を無かったことにして2の直系として位置づけられている。
 オリジナルの監督はジェームズ・キャメロンで1と2の監督後はちょっと意見を言うくらいみたいなスタンスだったが、今作ではとうとう制作として参加。ガッツリ関わったよ! というのが売りの一つである。
 

 未来からの刺客を撃退し、起こるはずだった世界戦争を回避した女性闘士サラとその息子ジョン。しかし「起こるはずだった未来」からすでに出立したターミネーターはその後も二人の前に現れ、二人は逃避行を続けざるを得ない事態となっていた。
 前作(2)から23年たった2020年。再び未来からの使者がメキシコに現れる。一人は体に機械を埋め込んだ強化改造人間。一人は流体金属と金属骨格で構成されたハイブリッドターミネーター。
 二人が守り、狙うのは誰なのか。また、なぜ、何のために現れたのか。守護者と暗殺者の戦いの中に現れるサラ。再び未来を賭けた戦いが繰り広げられる――。

 1に続いて2を大ヒットさせたジェームズ・キャメロンの関与があっても、シリーズの立て直しは出来なかった。
 3~5と比べて「直系だなあ……」とは確かに感じるが、見知ったところに帰ってきた安心感と同時に代わり映えのなさにがっかり。しかも冒頭でとてつもない喪失感を味わわされることになり、戻った故郷は冷たかった……、みたいな盛り下がりムードがずっと継続される。
 
 そらおもしろいよ!? 豊富なアイデア、でたらめにリッチなシーンの連続。ワクワクするし、ドキドキするし、映画の楽しみは充分に詰まっている。でも、「彼」とこれまでのがんばりをほぼ無かったことにされてしまうと、もう何しても、何を成し遂げても時間軸(世界線)が増殖するだけで意味が無い、という虚無感に捕らえられてしまう。
 
 冒頭で彼を殺し、それなのに無理矢理サラとターミネーター(アーノルド・シュワルツェネッガー)を連れ回すことに商業的打算を感じるのも辛い。二人のアイコンを並べることが今作最大のフックなのだろうが、そのために物語が犠牲になっている。正直二人の活躍もたいしたことない。「2」を覆す展開は欲しいが、「2」の続き感が欲しい。そのためにむりくり二人の立ち位置を用意して苦しい動機を持たせているのだ。納得感のあるはずが無い。ターミネーターにいたっては、実質新キャラなのだ。感情移入のレベルが上がりませんよ。
 
 物語の主軸である「運命」に立ち向かう人間メンバーがすべて女性なのも、もうこれははっきりとやり過ぎだ。もともとジェームズ・キャメロンは一番の重要キャラを女性にする事が多い。「エイリアン2」ではリプリーが子供を守って戦い、「ターミネーター2」ではサラがジョンを守って戦う。使命感と母性の相乗効果で生まれる驚異の力が観客に素直に刺さる構成なのだが、今作では「女性」の位置づけがおかしい。性差のない平等を目指したのかどうかは分からないが、「女性的とされる魅力的な要素」まで削り取ってしまっている。
 見た目がどうあろうが、全員がウホウホ筋肉バカでたおやかさも優しさも無い脅威の戦闘狂集団だ。だって、味方メンバーが「30年以上にわたって鍛錬と実戦をくり返したターミネーターキラー」「体に金属骨格とジェネレーターを埋め込んだ強化人間」「人類を勝利に導く人類司令官」だよ? もうね、人類ドリームチームですよ。「ターミネーター:エクスペンダブル」ですよ。
 こんな状況に叩き込んでシリーズの正史ですとか、キャメロンさんどうしちゃったの!
 全員中身を男にした女性映画なんて、それこそ女性抹殺の愚行じゃ無いのか。
 
 敵ターミネーターのギミックは新規性があり脅威感も充分。初見のときめきとこりゃやばいという圧力は本当に楽しいものだ。ただ序盤で能力を見せた後はそのインパクトを上回るシーンが無く尻すぼみ。流体金属の能力も上がっているようなので、体全体パチンコ化とか、旧式の火薬銃を腕に急ごしらえするとか、プラスアルファの使いこなしを見せて欲しかった。

 「2」は敵だったターミネーターが味方になるという大仕掛けがバッチリはまった。今作にも(難しいとは思うが)そういった大仕掛けが必須だったのだろうが、残念ながらそれを見出すことが出来ていない。「彼」の死をそうだと考えているならそれは間違いだ。
 マトリクス的に考えるなら、人類とマシンの戦いにさらに中立の存在が介入してくる展開はあるかもしれない。人類を滅ぼそうとはしないマシン陣営。そこがエージェントを送り込んできて三体のターミネーター(あれ? 今作も大体そんな感じ?)の戦いの中、不利な方に加担して戦いを継続させようとするとか。
 もしくは心を入れ替えたスカイネット率いるターミネーター軍団が人間と共闘し、第三の敵に挑むとか。歴代ターミネーターそろい踏みで敵陣営と勝ち抜き戦とかフックとしては価値ありそう。

 今作、邦題は「ターミネーター:ニュー・フェイト」だが、原題は「Terminator: Dark Fate」。おそらく「見えない運命」的なイメージなのだろうが、これではシリーズの「暗澹たる運命」である。またしばらくシリーズは地下に潜らざるを得ないだろう。

 さてキャメロン氏、5(新起動)の公開時に褒めちぎっていたのが後に手のひら返して苦言をくり返しているように、どうも信用ならない部分がある。今回も制作としての参加と言うことで、また無かったことにして監督復帰とかしても全然驚かない。そのための制作止まりでは無いかというくらい構えてしまう。「アバター」続編に集中と言うことなのだろうが、早いところ作り上げて中途半端な関与でほったらかしの「アリータ: バトル・エンジェル」の続編なりターミネーターの新作なりの監督に復帰して欲しい。


 

2019年11月28日木曜日

ターミネーター2

ターミネーター2 4Kレストア版 [Blu-ray]

★★★★
~SFアクションの金字塔~

 1991年の米映画。1984年公開のターミネーターの続編となる。監督は引き続きジェームズ・キャメロン。

 前作の事件から10年後のカルフォルニアに再びターミネーター(アーノルド・シュワルツェネッガー)が送り込まれてくる。前作で標的とされたサラは息子ジョンに機械との戦いに備えた英才教育を施していたが行きすぎた行動から精神病院に収監。ジョンは里子に出されてハングレ状態。ターミネーターはジョン捜索を開始するが、それとは別にもう一人のターミネーターが送り込まれてくる。流体金属の体を自在に操り、姿形を変えながらこちらもジョンを目指して行動を開始。ハッキングで手に入れたお金でゲームセンターで遊ぶジョンの元に二人のターミネーターが到着した――。


 ヒット映画の2作目というものは非常に受け容れられるのが難しいものだが、ジェームズキャメロンは実にエイリアン2」と今作で輝かしい続編成功を収めており、この点だけでも特筆に値する。二つに共通して言えることは1作目で登場した要素の位置づけをうまくスライドさせて異なる関係性を作り出す事と、規模の圧倒的な拡大によるお祭感の演出であろう。
 エイリアン2では1作目では一体しか登場しなかったエイリアンを大量に登場させて「群れ」にし、さらに女王蟻ならぬ女王エイリアンを設定。海兵隊とエイリアン軍団の激突を構図として「今度は戦争だ!」のコピー。
 ターミネーター2では1作目の宿敵をあろう事か味方に据えて新型のターミネーターを追加。「ターミネーターvs人間」から「ターミネーターvsターミネーター」とした上に旧型と新型、剛と柔の対決をプロデュース。
 何かもう設定だけでときめくのである。
 
 流体金属の新型ターミネーターは当時としては出色のVFXで描かれており、イマジネーション含めて強烈なインパクトを残した。水銀のように銀色に流れる金属が人型になり質感を得て完全な擬態を行い、また体の一部を槍や剣のように変えて戦闘を行う。現在ではこれくらいの映像はテレビドラマでも実現されているが、当時は本当に驚いたものだ。あまりに気持ち良かったので劇場に二度も見に行った。
 映像だけで無く物語としても見所が多く、特にジョンとその保護者となったターミネーターの関係は父親を知らないジョンにとって父と触れ合うような形で描かれており感情移入させられる。タイムパラドックスにはあまり触れず、現在でのやり取りのみに集中しているのも安っぽくならなくて良い。
 改めて1と間を置かずに見てみると、1を踏襲している演出が数多くある事に気づく。有名なターミネーターのセリフ「I'll be back」であるが、1ではこれを受付に告げた後すぐに車で突入してくるというちょっとコメディーぽい使われ方をされている。2では緊迫したシーンで使われているが、このセリフの後車で突入してくる展開になっているのは同様。他にも1の最後で這いずりながら迫ってくるターミネーターの姿が2の最後でも同様に再現されており、ファンに嬉しいパーツが沢山ありそうである。

 この後「3」「4」「ジェネシス」とシリーズが続いたが2を最高潮として評価は下がっている。どれも楽しめる内容だが、確かに1と2程の親密感は無く、特別な作品にはなり得ていない。2の直系続編と銘打っていよいよキャメロン関与の高い「ニューフェイト」が公開されているが、いかな評価に落ち着くであろうか。

 関連作のリンク。3だけ感想ないんだ……。

◆シリーズ第1作『ターミネーター』 の自分の感想はこちら。

 
★★★☆☆
~演出の教科書~

◆シリーズ4作目『ターミネーター4』 の自分の感想はこちら。

ターミネーター4 スペシャル・エディション [Blu-ray]
★★☆☆☆
~ジョン・コナ―しっかりしてくれ~

◆シリーズ5作目『ターミネーター:新起動 ジェニシス』 の自分の感想はこちら。 

 ターミネーター:新起動/ジェニシス ブルーレイ+DVDセット(2枚組) [Blu-ray]
★★★☆☆
~極悪な予告編~

 ◆シリーズ6作目『ターミネーター:ニュー・フェイト』 の自分の感想はこちら。

ターミネーター:ニュー・フェイト [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]
★★☆☆☆
~女子会もしくは同窓会~

◆同監督の傑作『エイリアン2』 の自分の感想はこちら。

エイリアン2 [Blu-ray]
★★★★
~相似拡大+α~

 

 

 

2019年11月18日月曜日

ラストスタンド

ラストスタンド Blu-ray

★★★☆☆
~激突までの見事な構成~

 2013年の米アクション映画。
 世の中にはさまざまな料理がある。気楽に食べる日常的料理から、特別な日に食べる高級料理。映画にも色々な立ち位置があり、立ち位置で優劣がつくことは無い。卵かけ御飯と懐石料理のどちらが旨いかについて、絶対的回答はないのである。
 この映画は大衆居酒屋で食べるうまい焼き鳥だと思う。決してコース料理のような高尚さは無いが、手間をかけてさまざまな部位が仕込まれており、炭火できちんと焼き上げられている。これに代替する食い物は見あたらない独自の魅力を持っている。

 メキシコ国境近くのへんぴな町で保安官をつとめるレイ(アーノルド・シュワルツェネッガー)はロサンゼルス市警で麻薬犯罪に立ち向かった経歴を持つが、いまは大きな犯罪も起こらないこの町で静かに過ごしていた。そんな町でおかしな事が続けざまに起こる。ダイナーで見かけた不審な男達。町外れの頑固じじいが朝牛乳配達を無断で休む。とどめはFBIを名乗る者からの電話――。
 麻薬王が脱獄して国外逃亡を図るために最後にここを通る……。強制された最後の砦(ラストスタンド)の保安官として、レイは数少ない仲間とともに決死の最終防衛戦を展開する――。

 カルフォルニア州知事を2004~2011年の2期7年つとめたシュワルツェネッガーが復帰後初主演した映画なので、それを前提にしたような台詞が散見される。「もうお前は未来のない老人だ」的な揶揄に「まだまだこれからだ」と答えてみたり、町の人から最近太ったね、と声をかけられたり。確かに往年の肉体の張りはなく、特徴的だったぎこちない身のこなしはただ堅くなった老人の体としか感じられなくなっている。ただし無骨で融通の利かない雰囲気、それを主張する眼光の鋭さは決して衰えては居らず、7年間の政治家としての生活が精神的な鋭さを増大させたような気がしないでもない。

 序盤、ラスベガスで進行する脱獄とメキシコ国境の町の様子が交互に描かれ、それが徐々に結びついていくという演出。それぞれの中心は麻薬王ガブリエルと保安官レイであり、まだ関連のない二人を混在させて描いていくことで、まるでボクシングのタイトルマッチを迎えるような期待感を積み上げていく手法が見事。ガブリエルの卑劣さが描かれるほど、レイの剛健さが描かれるほど、激突の瞬間が待ち遠しくなるのである。
 果たして二人の衝突は文字通りすさまじいもので、田舎のトウモロコシ畑で演じられるカーチェイスだったり、メキシコにつながる一本橋で繰り広げられるプロレス的格闘だったり、シチュエーション含めて満足たり得るものだ。
 
 その二人の周囲を固める人間達の立ちっぷりも見事で、幼なじみとのほんのりした三角関係、ボスに無理難題を積まれるマフィア組織員、短絡的だが強力な裏切り、のんきで図太い町の面々――。枚挙にいとまがない一癖二癖あるキャラクターが全編バランス良くちりばめられている。作品自体、脱獄のスリル、武装集団との大銃撃戦、超スピードのカーチェイスなど、盛りに盛ったゴージャスな内容となっており、串焼き各種の豪華盛りである。

 決して緻密な映画ではないが、豪快で外連味の効いた魅力あふれる良作だと思うが、興行的にはかなりの失敗だったらしくシュワルツェネッガーにとっても俳優業復活の痛い船出となっただろう。比べるのはおかしいが、例えば森田健作が再度俳優業に復帰したところで何の感慨も起こらないわけであるし、天下のシュワちゃんといえどもそのネームバリューは当時を知るものにとって信じられないほど低下しているということだろうか。

2019年10月4日金曜日

名探偵ピカチュウ

名探偵ピカチュウ 通常版 Blu-ray&DVDセット 

★★☆☆☆
~毛深いおっさんピカチュウ~

2019年。ゲームを原作としたアクション冒険映画。
ピカチュウはもともとゲームボーイのゲーム「ポケットモンスター」に登場するモンスターの一種に過ぎなかったが、愛くるしい容姿で圧倒的な人気を博し、以降シリーズの看板キャラクターとして20年以上にわたりポケモンコンテンツを支え続けている。

間違いそうなのはこの映画がポケモン本編ではなく、その派生作品である「名探偵ピカチュウ」を原作としているということ。
名探偵ピカチュウは、本来可愛く「ピ〜カピカ」とかしゃべる(鳴く?)ピカチュウがおっさん声でしゃべるというかなりの異端作品でゲテモノと言っていい。
なぜこれを実写化したのかと思うかも知れないが、RPGである本編は映画化するには長すぎるし、話自体はわかりやすさ優先で子供向き。
映画脚本としてまとめるのはなかなか難しそうである。
頑張ったところであまりに大きなファン層は趣味嗜好も様々であり、パイが大きい分ネガティブな反応も大きなものになるだろう。

反して名探偵ピカチュウはそもそも知名度が(本編に比べれば)低く、そういうのを許容できるファンにしか届きにくい。
洋画であり、実写であり、ピカチュウが毛深いことで、純真な子供が中身がおっさんというショックにさらされる危険性は低いだろう。
老若男女の正当派ファンは邦画のポケモン映画シリーズを見るという住み分けが行われるのだ。

自分はポケモンにさほど詳しくない5才の息子と見に行ったが、反応はいまいち。
邦画の3DCGアニメ「ミュウツーの逆襲EVOLUTION」も見に行ったが、明らかに見ている間の反応も、その後の話題に上る率もこちらが良い。

作品としてはきっちり手堅い感じだなと言う印象。
原作ゲームのシナリオをどれだけ踏襲しているのかは分からないが、テンポ良く進み、良いタイミングで差し込まれる見せ場など、さすがハリウッド。
ちょっとどうなの、という展開が多くオチも上手くまとまってはいるのだが、残念感の方が強い。

何よりポケモンがおしなべて毛深いのが嫌だ。
がっかりしたり、悩んだりというピカチュウの表情がしっかり描かれていて目新しいが、やはりオーバーアクションに感じる。
やはり自分の中のピカチュウはぬいぐるみのような存在なので、リアルになってもミュウツーEVOLUTIONの方向性だ。

海外のファンの脳内ではこのような形でポケモンが再生されているのかと思うと、文化に根ざす世界認識の相違は大きいのだなあと改めて驚く。

2019年9月19日木曜日

アベンジャーズ  エンドゲーム

★★★★
~よくぞここまで走り抜けた~


前作「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」のラストを引き継ぐ続編。というか元々は一つだった企画を規模のため二つに変更したとか。

まずこれはお祭映画なのだということ
何年にもわたって公開された、各ヒーロー個別の映画に埋め込んだ物語のカケラを、全て束にして総括する総決算映画!
Marvelの様々なヒーロー、ヴィラン(悪役)たちが一堂に集まって大規模な物語を展開するヒーロー大集合映画!

もうこれだけで胸ときめく。
そんな映画が楽しくないはずは無く、見せ場の連続で一気呵成にたたみ込んでくれるんだろうと期待したら序盤がとてつもなく暗い
前作がとんでもない終わり方(完全敗北)をした状態からの続きなので妥当なのだが、さらに深く陰鬱な方へ掘り込んでいく。
闇落ちする者、飲んだくれる者、生死不明になるもの……。
正直しつこすぎだと思う。
もともと多くの作品をまとめるためにいろいろ突っ込み所のあるシリーズなので、こんな真面目にされても……。
比較的新参者が重要な役割を負って物語を進めているのも感情移入しにくくて序盤は本当に厳しい印象。

お祭映画なのだから、もっと陽気にドッカンドッカンやれば良いと思う。
これまでがそうだったように、細かいことなど気にせずにイマジネーションの可視化によって観客を圧倒してほしい

中盤からは期待通りのいつもの乗りで、物語自体のむりくり具合が気になる前に勢いで突破していく。
話のつじつまで無く、全体の雰囲気を感じながら映像を楽しむのが正しいと思う。

ともかく出し惜しみの無いヒーローの活躍は本当に気持ちが良い

終盤の展開も異様に暗くなるが、戦闘シーンをお腹いっぱい楽しんだ後なので、食後の苦いコーヒーのようにスルーできる。
変に「つづく」とせず、一定のけじめをつけて終了したことに大きな満足感を感じた。

心配なのはこの後の「アベンジャーズ」シリーズの道行きで、また各ヒーロー個別の映画やテレビ番組の後、総決算となりそうであるが、主軸のキャラクターが物語上や、権利関係の都合で離脱を余儀なくされそう。
あと、本当にやりきった感がある。
一緒に完走できて嬉しいが、もう一回初めから走れと言われると、正直もういいかなと言う気分
このシリーズは今作を頂点として規模を縮小して行かざるを得ないだろう。

今作だけのことではないのだが、明らかに最近(現在2019年9月)のディズニー映画は女性キャラの押し出しが強い。
しかもおかしな方向に。
これまでの男性キャラ主体の揺り戻しかと思うが、「スターウォーズ8」「インクレディブルファミリー2」などもやり過ぎのように感じる。
女性キャラの出番の多さが気になるというより、その扱いが変わらず「女性的」なために映画全体の進行が重く、ウェットになっている印象がある。
どうにも色恋沙汰に流れたり、アクション映画なのに女性の社会進出の問題意識が臭いすぎたり、きれいどころはきれいに殴られるだけで汚れ役にならなかったり。
女性にこういった縛りを持たせたままで比重を上げているので、なんだか物語のバランスが崩れてしまっているように感じる。

この点、胸がすくのは韓国映画や香港映画。
女性であろうと美人醜女関係なく、平等に容赦なくボコボコにされる。エロとか性的残酷というのではなく、普通にえげつない。

ともかく、今作は夏の花火の最後の一発。一番大きい尺の大輪が夜空に咲いた作品。
こんな長丁場の仕込みを完遂して公開されたことを、素直にすごいなあ、と思う。


2019年9月17日火曜日

ミュウツーの逆襲 EVOLUTION


※映像ソフトがまだ出ていなかったのでBGMのリンクです。

★★☆☆☆
~竜頭蛇尾~

1998年以降回されたポケモン映画1作目「ミュウツーの逆襲」のリメイクでフル3DCG化されている。

CGの質も高く、気を配られた細かな演出に期待感が高まる。
オープニング曲裏で展開されるポケモンバトルがとても格好良い。

しかし中盤以降は代わり映えしない舞台で代わり映えしない展開。
よく分からない理屈で物語が締められて終了。
明らかに序盤とそれ以降でかけられた時間と予算が違うと思う。

CGのポケモン達は名探偵ピカチュウの実写寄りの物とは異なり、アニメやゲームの雰囲気をそのまま質感向上したもので、違和感なく受け入れることが出来た。
その後テレビで通常アニメーションのポケモンを見たが、形が崩れたり省略されたりしているシーンを見ると、3DCGの方が良いなと感じたり。
元がゲームであるし、3DCGとの親和性が高いのだろう。

2016年9月26日月曜日

ハドソン川の奇跡

★★☆☆☆
~奇跡的なノンフィクション~

日本人にはとんとなじみがないが、2009年にニューヨークで発生した飛行機不時着水事故を題材としたノンフィクション。また、だからこそ結末知らずの楽しさを味わえるのかも知れない。
離陸直後にバードストライク(鳥が飛行機にぶつかる事故)にあい、全てのエンジンが停止。幾つもの選択肢からハドソン川への着水を選択し、全員が無事助かったことから「ハドソン川の奇跡」と呼ばれる。
この映画では事件そのものではなく事件後に機長、副機長の判断の妥当性が追求されていく検証と後片付けをメインに据えている。

監督は今や巨匠のクリント・イーストウッド。
映画のために本物の飛行機を購入して再現に努めた映像はきっとリアルなのだろうが、摩天楼をバックに巨大な飛行機が飛ぶ様は、同時多発テロで見た映像のようにどうにも違和感が強い。理不尽な話だが、リアルすぎて嘘っぽく見えてしまっている。この事件に対する距離感がアメリカ人とは決定的に異なる事もその理由だろうか。
バードストライクから着水まで200秒程度に込められた様々な覚悟と判断。機長の回想、乗客や添乗員の回想、外側からの目撃――様々な視点からくり返し事件が語られ、最後にはボイスレコーダーによる主観と客観を統合した「答え合わせ」で終劇。
なかなか凝った構成だと思うが、視点が少しずつ拡大していくので事件をまるで知らない者(自分含め)でも理解しやすい。機長をただの完璧な英雄として描かず、副業のトラブルや定年までのキャリア設計の危機など、ちくりと現実的な情報を織り交ぜて予定調和へのゆらぎを見せるのも上手い。ただ、作品の基本姿勢自体が事故に対して周囲が起こした行動への賛美に凝り固まっている(前提としている)のもひしひしと感じるので、安心してみられる。

飽きることなく楽しむことが出来る作品だが、現実は想像を超えず、まあそうなるだろうという所に着地。金かけて補強した王道野球チームが順当に優勝しました、みたいな。しかし、現実でここまでの劇的な内容とは、まさにハドソン川の奇跡。

作品内では特に主張されないが、この事故が突きつける現実が空恐ろしい。
曰く、AIが完全な判断を下せるなら、人間よりも遙かに事故が減り、その規模も縮小するのではないか――。

2016年9月14日水曜日

シン・ゴジラ

シン・ゴジラ Blu-ray2枚組

★★★★★

~日本人専用。だからこそ世界に通じる~

2016年公開。ゴジラシリーズ29作目にして、(日本制作としての)前作FINALWARS(2004年)から12年ぶりの復活作品。
監督は「トップをねらえ!」「ふしぎの海のナディア」「新世紀エヴァンゲリオン」の庵野秀明。

アニメ監督として絶大な知名度と人気を持つ庵野氏は、元々ウルトラマンなどの特撮作品のマニア。アニメ作品にも特撮映画から持ち込んだ演出が多用されている。
実際に何本かの実写映画も監督しているが、アニメ作品のような高い評価は得られていない状況。
したがってこのゴジラ監督については期待と不安が入り乱れる前評判となっていたが、不安を吹き飛ばし、期待を軽く越える出色の出来であった。

もとよりゴジラ1作目は戦後の空気を引きずるまま、核実験の恐怖が蔓延する1954年に公開。核実験によって誕生したゴジラが日本を恐怖に陥れるという内容。
おそらく当時の観客達はゴジラという存在の圧迫感を現実の圧迫感と結びつけて、とんでもなくリアルに感じた事だろう。
今作においては戦争を大震災、核実験を原子力発電所と置き換え、3・11で日本が経験した絶望感を再現するがごとく構成されている。
この全体構成を着想したことがすでに素晴らしい。ゴジラの歴史と存在意義を突き詰めたからこそ手に入れた発想だろう。



※以降感想を続けるが、今作は前情報の無い方が確実に楽しむことが出来る内容なので、未見の方は読まない方が良い。



話自体は非常にシンプル。
東京湾に出現した謎の怪獣に対して必死に対応する日本政府とその実体である政治家と高級官僚。
圧倒的な破壊力を誇るゴジラに対してあまりに無力な日本政府。だが決してあきらめることなく、着実に対応を進めていく。
ついにはゴジラ無力化の方法を導き出し――。

映画は大きく2つのパートに分かれている。
その分岐点はゴジラが圧倒的な破壊を東京中心部で成し遂げる部分。
それまでもゴジラは移動するというだけで大規模な破壊をもたらしているが、しかしその規模はどこかまだ「範疇」内で有り、政府の対応が可能だという安心感があった。
そのような状況で決行されたゴジラに対する日米共同の反攻作戦。ようやくゴジラに痛手を与え、この調子だと思った瞬間、桁外れの反撃が開始される。
この絶望感がすごい。
苦しむゴジラはうつむき、津波のような赤い炎を吐いて一面を炎の海とする。ここでぎくっと驚く。
こんな火の海にされたら、もう東京は駄目なんじゃないか――。
軽く絶望したところで炎は細く収束し、徐々に青色に近づいていく。まるでレーザーのような張り詰めた凶器と化し……。
振り回される光線はビルを切り倒し、遙か遠方まで火の海に飲みこんでいく。爆撃機も撃墜され、総理大臣含む政府高官の乗り込んだヘリまでもが四散。
その有り様に、思わずため息のような、うめくような声を漏らしていた。
こりゃもう駄目だ。
取り返しがつかない。
もう日本は終わりだ……。
この感覚こそ、3・11で原発が水蒸気爆発(メルトダウン)を起こした時と同じであった
このシーンが作品の分岐点であると思う。

そこまでが既視感の伴う3・11の再現であり、以降は絶望を希望に変えるためのおとぎ話である。
これは言い換えると前半が「現実」であり、後半が「虚構」とも言える。

今作の宣伝コピーの1つ「現実(日本)vs虚構(ゴジラ)」。
これは様々に解釈できるコピーだが、映画を見る前から非常な違和感を感じていた。
せっかく幾多の努力を尽くしてリアルに描いたゴジラを、そもそも一文の元、「虚構」つまりは「偽物」と言い切ってどうするのだ、と。
冷や水をぶっかけるようなコピーに不安感が増したが、作品を見て、異なる解釈が見えてきた。

「現実(絶望)vs虚構(希望)」

現実の絶望を打ち返す虚構の希望。
3・11以降、我々はなんだかんだと平穏を取り戻してきたが、それは時間をかけて絶望を薄めていったような印象だ。
映画にあるような、一気呵成に事態を収束するような物では無かった。
しかし、振り返って考えるに、3・11から現状までに起こった変化は、ゴジラを何とか無力化したのと同様の大きなものではないか。
少しずつの変化であるため気がつきにくいが、日本国が成し遂げた復興は素晴らしい規模と速度だ。
これを濃縮し、短時間に描いたのが、後半の虚構部分ではないだろうか。
あまりにご都合主義で一気に嘘くさく感じる後半部分の展開。しかし胸の空くような反撃。
虚構に感じられるこのようなことは、しかし実際にはすでに成し遂げられた現実なのだ。

そうしてみると、ゴジラ自体は街中にあるままで、問題は決着しておらず、目を反らすことも出来ないというエンディング。
これは我々の現況にまったく符合するのではないだろうか。
複数の意味が混在となった「現実vs虚構」という言葉は、確かにこの映画を表するのにぴったりなのかも知れない。

第一作のゴジラは海外でも大ヒットとなった。
しかし、海外バージョンは核やアメリカに対する不信感を感じさせる部分はすっぱりとカットされているらしい。
「派手でリアルな怪獣もの」としてヒットしたに過ぎない。本来のゴジラを鑑賞することが出来るのは、あの時代の日本を知った者だけなのである。
今作はどうだろう。3・11の体験が前提条件となっており、それを知らない者には分かるはずがない。
核に対する長年の不信と許容。段取りを踏まなければ動けない日本のシステム。これらに対する理解も前提条件だろう。

あまりに日本向けすぎる内容なのだ。

このまま公開しても、海外でヒットは望めないだろう。
ただし、このあまりに特化した前提の多い映画は、特定の観客にとんでもないトゲを突き立てるのでは無いか。
世界の誰が見ても楽しめる映画は、無国籍ののっぺらぼうだ。
反してシン・ゴジラは閉塞的村社会に代々伝わった起源も定かではない不気味な行事、それが生み出した神像のようなものだ。
そういうものを内包している文化は根が深く、強い。呪いのような情念が良くも悪くも地盤を固めている。
いまや世界を席巻している、日本のポップカルチャー、マンガ、アニメ、アイドルも、本来同じような存在ではなかったか。
それらはかつて異質で薄気味悪いものであったろうに、いつの間にか世界に理解者を増やしている。
少数の人間には、必要なはずの前提条件を越えて、刺さったのだ。
刺さったあと、前提条件を乗り越えるような者たちに届いたのだ。
シン・ゴジラも同様の存在になり得るのではないか。
不評渦巻く世界公開の中、心臓を鷲づかみにされる者が居て、そこから根が広がっていくのだ
そんな夢想が浮かぶほど、このコンテンツは、あまりにエスニックで独特で、他に類の無い物なのだ。

最後に特筆したいのは、この作品に出てくる人物の全てが、前向きで善人であるということ。
長い会議や縦割り組織、責任を回避しようとする動きが前面に出ているためそれと感じにくいが、全員が全員、自分の立場で前向きに努力している。
笑いの対象になっている総理大臣さえもが、システムの一要素になって選択の余地なく責任を負わされる存在として描かれ、このような切り口で総理大臣を描いた作品は見たことがない。

日本人が、日本人の経験の上でのみ味わうことのできる、皆で一生懸命がんばる話。
こんな優しい物語、そうそう出会えないよ。
庵野氏の振り絞った人間賛歌に、乾杯。

2016年4月5日火曜日

スター・ウォーズ/フォースの覚醒

★★☆☆☆
~均衡のなれの果て~

J・J・エイブラムス監督。2015年公開のアメリカ映画。

言わずと知れたスターウォーズのナンバリングタイトル。
4⇒5⇒6⇒1⇒2⇒3の順で製作、公開された三つ目の三部作の1作目。
ちなみに4/1/2/3はジョージ・ルーカス監督だが5/6は異なるので、初の別監督エピソードというわけでもない。

4/5/6でアナログ特撮の伝説となり、1/2/3でCG技術の地平を切り開いたスター・ウォーズ。
小説やアニメなどで映画以外にも広がり、厚みを増した世界観。飽和したファンにより新シリーズにかかる期待はとんでもない重さ。

ここでJ・J・エイブラムス監督。
好き嫌いはともかく、「期待水準に達する作品をコンスタントに生み出す」監督として無双の安定感を誇ることは認めざるを得ない。
何かとライバル扱いされるもうひとつの伝説的SF作品「スター・トレック」の映画監督もつとめたのだから、なんちゅう強心臓なんや!
こんなん普通の精神では耐えられない重圧だろうに!

出来上がった作品を観て思ったことには、やはりこの監督の安定感はすごい。
なんだかんだで値段分の映像であるし、過去作へのオマージュもたっぷり。
スター・ウォーズらしい映像と話がすらすらと展開されていく――。

けれど、見終わった後に心に残るのは新しいドロイドBB-8の立ち居振る舞い程度。
基本的にはルーク三部作(1/2/3)をなぞる展開で、各要素を極限まで大げさにした感じ。
「デススターを惑星規模に」
「ダース・ベイダーよりも宿命度の高い敵役を立ち上げる」
「ルーク三部作の要素をこの一作に凝縮」
これらがおもしろ差に結び付かずに上滑りして腑に落ちないまま終劇。
なんといっても主人公が誰か分からず、おもしろ黒人枠がヒーロー役を務めているというのが腑に落ちない。

・スター・ウォーズは結局設定ガバガバの雰囲気SFだよね!
・話しも強引でむちゃくちゃだよね!
・そんな雰囲気もきっちり再現したよ!

こんな開き直りが透けて見える。(そうだよなあと思ってしまえるのがこれまた悔しい)
前シリーズが何やかんや言われながらも挑戦して切り開いた映像表現。そういった闘魂がまるで感じられない作品だった。
お偉方(ヘビーなファン)の意見をすべて汲み取って上手くパッケージングしただけ。最小公倍数を求めただけのように感じる。

これまでの文面でにじみ出ていると思うが、自分はこの監督が好きではない
監督ファンの方には申し訳ないが、監督と視聴者としてどうにも根本的に相容れない要素がある気がする。
どの作品も「秀才のとる及第点」の雰囲気で、その薄っぺらさがはがれる前に次の話題作を手がけることで自分の地位を保っているように見える。
上手いが、誰かの心の一本になる作品は作れない監督なのではないだろうか。
自分の手できっちり作るというより、時代の空気をきちんと理解し、商品価値を組み立て挙げて市場に投下するプロデューサーのように感じる。
美術界で言う「村上隆」みたいなイメージだ。

それはそれで希有な才能であり、果たすべき役割があると思うが、いびつにゆがんだ思い込みの激しい情念がスター・ウォーズには似合うと思ってしまう。
ともかく新三部作の立ち上げにあたって、この「7」でこれまでの総括が終わった訳なので、次からの新展開に期待である。(監督も違うしね!)
……と言いたいところだが、結構お話しがまとまってしまったので、もう十分かなという気分も。R2D2が動かないままならきっと次も見に行ったと思うけど、彼もきっちり復活してしまったから……。

スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐

★★★☆☆
~伝説の収束~

ジョージ・ルーカス監督。2005年公開のアメリカ映画。
ルーク三部作(4/5/6)のあとに制作されたアナキン三部作(1/2/3)の最後を飾り、スター・ウォーズの実質的1作目であるエピソード4につながる重要な作品。
アナキン三部作の最大の使命である「ダース・ベイダーがいかに誕生したか」を画竜点睛する。

エピソード1~6のストーリーを端的に説明すると以下のようになる。

◆「1~3」…自己中近視眼の行動で宇宙全体に迷惑をかけるバカップルの話。
◆「4~6」…その迷惑を収集するためにバカップルの子供が奮闘する話。


エピソード3は1/2でじっくりと積み上げてきたバカップルそれぞれの駄目さ具合が一気に花開き実を結ぶ章となっており、物語的にも映像的にも見所が多い。
冒頭から惑星上空での激しい空戦。敵将の討伐任務。残酷な敵黒幕の正体と陥穽にはまる主人公――そして最後は活火山惑星での宿命の師弟対決。
映画作品として金字塔である「エピソード4」へつながる物語要素の収束は非常に気持ちが良い。
ついに生まれた「ダース・ベイダー」のバックに流れるあの聞き慣れたライトモチーフ(キャラクター旋律)。
ブロックがぴしゃりと組み合った余韻のまま終劇。

ゴールデンラズベリー賞を受賞したり、酷評も多い本作だが、思い入れたっぷりに描かれる愛憎劇は28年の重みと共に心に残る。
きっちりと描ききった、作りきったことは紛れもない偉業であり、続く三部作が蛇足にならない事を願うばかり。

2016年3月15日火曜日

クリード チャンプを継ぐ男


★★★☆☆
~ロッキーシリーズ第七作目!~

題名や宣伝を見てもほとんど分からないが、この作品はシルベスター・スタローンの「ロッキー」シリーズのスピンオフ(といっているが、七作目の続編といって良かろう)である。なぜこの点を強く喧伝しないのが不思議だが、前作(シリーズ六作目)評価が低いと言われていることが原因なのだろうか。

ロッキーシリーズで「クリード」という題名なら、ファンならピンとくるかも知れない。一作目から四作目まで登場し、ある時はライバル、ある時は盟友としてロッキーと深く関わった偉大なチャンピオンがアポロ・クリード。そして彼は四作目でリング上での死を迎えている。――ということは……。

クリードの主人公はアポロの愛人の子供であり、唯一の血族アドニス。出会うこともなかった父の背中を追ってボクシングの世界に入ろうとする彼は近しい者たちからそれを拒絶される。アドニスが最後にたどり着いたのがロッキー・バルモア。
はじめは師事を断るが、その熱意に負け、またボクシングに関わる喜びを思いだしていくロッキー。
アドニスと同じアパートで音楽の夢を追うビアンカとの出会い。ロッキーが立ち向かうリングの外側での戦い。
二人の「いわくつき」師弟のボクシングに世間は好奇の目を向け、やがてとんでもない大きな話が転がり込んでくる――。

物語は一作目をなぞるように進むが、ただ繰り返しているのでもなければ、無理矢理独自性を打ち立てようとしているのでもない。一作目の物語を今もう一度描くとしたらこうなるという答えが示されている感じ。そもそも、それさえ流れればロッキーというあの「ロッキーのテーマ」が流れないのだ。それなのに同じような昂揚を感じる事ができる。
主人公であるアドニスの短絡的な素直さは魅力的で、自然と応援したくなる。ロッキーの後継者としてするっと収まってくれるのも気持ちが良い。ロッキーも年老いながらチャレンジスピリッツを失わず、変わらず戦い続けているのが嬉しい。エイドリアンに対する愛情もそのままなのがまたロッキーらしい。

ロッキー一作目を楽しめた人は、つまり多くの人は、この作品を楽しむことができる。
四作目まで復習してから見るとなおさら楽しめるだろう。
三作目のラストで静止した、あのアポロとの第三戦についても言及があり、さらっと語られるだけだがそれがまた良い。
ただその言及が本当なのかどうかについては、自分は多少の揺らぎを感じる。

2015年11月24日火曜日

バタフライ・エフェクト

Butterfly Effect [Blu-ray] [Import]

★★★★
~繰り返す一途~

幼い頃から突然記憶が途切れる障害を追った青年が、その謎と仕組みを解き明かす物語。
過去を繰り返して望む結末を追い求める「ループもの」の典型だがアイデアと説得力に富んでおり、オリジナリティを強く感じる。

繰り返しが始まる前にきちんと本筋の人生を描き、そこから改変を行うという段取り。
このおかげで時系列がバタバタするややこしい話なのに理解しやすい。

主要人物を絞り、彼らの人生改変を描くことで繰り返しの影響、その功罪を一目瞭然に浮かび上がらせる。
繰り返しの基点となる場所時点を限定していることも、混乱せずに物語を楽しむことの手助けになっている。
歴史を書き換えようとする物語なのに、パラドックスが起こらない設定となっていることも興味深い。

繰り返せるのに、何度も失敗を繰り返す切なさ。迫るタイムリミット。くじけない一途。
設定に踊らされるのはなく、描きたい内容のために設定を完備している作品。万人に勧められる一本。

DVD特典として上映版とは異なるエンディングを複数収録しているバージョンがある。
特に監督自身が本来のエンディングとした物は、当然だが作中の伏線(手相について)が最も回収された形に収束しており気が晴れる。
その上で正式決定されたエンディングが最も良い形だと納得することも出来るので必見。