2021年1月19日火曜日

移動都市/モータル・エンジン

移動都市/モータル・エンジン [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]

★★★★
~実写版ラピュタ!~


 英国の作家「フィリップ・リーヴ」の小説「移動都市」を原作とした移動捕食都市SFアクション。2018年。ニュージーランド/米映画。
 映画「指輪物語」のピーター・ジャクソン監督が脚本に参加しており、本作の監督であるクリスチャン・リヴァース自身、ピーター・ジャクソンの多くの作品でイメージボード(世界観を絵として作成する)作成に関わった盟友。
 

 世界を60分で崩壊させた戦争から数百年、人々は荒廃した土地に資源を求め都市を移動させながら生活していた。 そんな移動都市の頂点である巨大都市ロンドンで、史学士見習いのトムはある日ロンドンに「喰われた」小さな採掘都市から紛れ込んだ1人の女性と出会う。 (WIKIPEDIAより)

 


 ともかく強烈なインパクトとなるのが「動く都市」。いくつもの移動都市が登場するが、主となるのがロンドン。まさに都市と呼ぶにふさわしい壮大な階層構造物が巨大なボイラーのエネルギーでキャタピラ駆動する姿は一見の価値あり。こいつが肉食動物のように疾駆し、他の小さな移動都市を追い詰め、全部の巨大なハッチを大口のように開き、丸ごと喰らうのだ。冒頭にこのようなシーンが展開され、もう一気に心惹かれるのである。
 文明が滅んだ後の荒廃した世界を舞台としており、動く都市がものすごく泥臭い。サイバーパンク+建築現場といった世界観。動く都市ということで「ハウルの動く城」を連想するが、イメージの共通点は少ない。全体としては「天空の城ラピュタ」のほうが近い。ちなみにハウルの城はロンドンのおやつにもならない大きさである。
 
 物語は、都市しか知らなかったロンドンの博物館見習いであるトムが、親の敵を討つためにロンドンに現れた女ヘスターと出会い、ロンドン以外の世界を旅する形で進んでいく。このトムとヘスターによるロンドン外の冒険と平行して、ロンドン上流階級のキャサリンが父の欺瞞を暴いていく物語が進行するが、お互いがほとんど関わらない状態で最後まで展開していくのでちぐはぐな印象が残る。群像劇とするには集中されているが、最後まで誰が主役ンか分からないのだ。そうしてみるとやはり、主役は移動都市であり、それが破壊しようとする都市群なのだろう。

 このように話自体には不安定なところやすっきり流れないところが散見されるが、イメージのインパクトでもう自分は満足
 ロンドン以外にも小都市が寄り集まって市場のような賑わいを作ったり、空中都市や壁と一体化した静止都市が現れたり、どんどん積み上げられるイメージの奔流に気持ちは昂揚するばかり。極めつけはやはり前世紀の破壊兵器。「風の谷のナウシカ」の巨神兵の破壊光線のようなインパクトが実写(もちろんCGだけど)で炸裂!

 やはり要所要所に「天空の城ラピュタ」「風の谷のナウシカ」「ハウルの動く城」といった宮崎駿の世界を感じる。ぱくったとかいうのでは無く、この監督は宮崎作品に触れ、そこからイマジネーションを得ているのだろうと感じる。むしろ実写の宮崎作品が見れて幸せだ! と感じてしまう。
 
 原作小説「移動都市」も読んでみた。
 基本的な流れは同じであるが、トムとヘスターの冒険はもっと長く険しい。その分二人の心の交流も丁寧に描かれている。トムの主役っぷりも小説の方が強く、芯がしっかり通っている印象。映画で気になる空中都市のその後や、別の移動都市の活躍も見る事ができる。総じて世界観が詳しく描かれているので、映画を気に入った人は一読を薦める。映画の映像を浮かべながら文字を追うことで、さらに充実した異世界経験を得ることが出来るだろう。
 この内容を映画1本の尺に収めるには大なたを振るう必要があったのだろう。映画版はかなりうまくまとめていると思う。
 
 小説には続編があるが、映画の続編の話は現在(2021年1月)聞こえてこない。残念ながら興行的には厳しかった模様だ。こんなに楽しい作品そうそう無いのに……。

 

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