★★★☆☆
~とても幸せな3DCGアニメーション化~
「市川春子」氏の漫画を原作としたアニメーションシリーズ。2017年、全12話。
あまりに変転した世界で、鉱物から進化した者たちが一つの島に集って暮らしていた。
それぞれが異なる鉱物の体を持ち、色、硬度、性質なども鉱物を反映させている。
少年でもなく、少女でもない、若々しい姿だが、鉱物らしい悠久を敵との戦いに費やして生きていた。
敵は月人。一見仏様のような姿で雲に乗って現れ、宝石達を砕いて持ち去ろうとする。
宝石の一人フォスフォフィライトは戦闘力が低く、その他の雑務も苦手だが、持ち前の楽観と人なつこさでそれなりに暮らしを楽しんでいた。
宝石のリーダーである金剛先生からとある仕事を任されたことで、フォスの生活に劇的な変化が生じていく――。
何とも説明しにくい物語で、世界観を理解するのに苦労しそうだが、3DCGで描かれる美麗なキャラクターがスルリとその壁を取り払ってくれる。
宝石の輝きが圧倒的に美しい。
生きて動いているが、硬質さを感じさせる。3DCGのぎこちなさ(故意半分限界半分?)が設定と見事にかみ合っているのだ。キラキラと輝くエフェクトも美しく、生きた宝石という存在を見事に映像化させている。原作は未読だが、宝石感の表現は確実にこちらに軍配が上がるだろう。
戦いの表現も素晴らしい。3DCGが許す自由なカメラワークを活かし、流麗な宝石達の戦いぶりを迫力満点で描き出している。カメラの自由さにおぼれて分かりにくかったり、無駄だったりすることなく、利点をきっちり活かしてクオリティの向上にベクトルを伝えている。
さらに幸せな邂逅といえるのが、物語と3DCGとの出会い。実際何を主題にし、何を伝えようとしているのか正解は知り得ないが、自分は「はかなさから来る切なさ」だと思う。宝石達が思春期の少年少女の姿を持ち、自分の存在意義を探し求めて傷つき、砕けていく様子はまさに汚れを知る前の純粋な魂の映像化である。3DCGの表現力によって、宝石達がはかない存在である事が常に明示され続ける。どんなに華麗に飛翔して、力強く剣戟を振るっても、砕けてしまう存在である事も同時に表現され続けるので、常にはらはらさせられる。一瞬後には死んでしまうのではないかというはかなさを内包した美しさ。コントラストに胸が締め付けられるほどだ。
原作は今(2021/01)も連載中で、当然アニメも尻切れトンボ。続きが気になって薄目で見るように情報を漁ってみたが、どうやら宝石達には過酷な運命が待ち受けるようで、ちょっともう見たくないな、というのが正直な感想。そういう意味では尻切れトンボで良かったのかも。
美しい存在がただただ無残に傷ついていき、いびつに変貌していくのを、僕はもう見たくない。
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