★★★☆☆
~たっぷり楽しめる超長編~
3時間22分にわたる超長編映画。テレビでの放映はノーカットで実に4時間枠。良く放送したと思う。
大人の事情はあれこれあれど、どう見ても日本航空や日航機墜落事故がモデルとなっており、その他もろもろも実際の会社内の雰囲気を反映したものであるのだろうと思われる。
自分などは日航の提灯持ち映画かと思っていたため、会社の腐敗っぷりがこれでもかと描かれるのに驚いてしまう。当の日航も気分を害し、映画化に抗議を行ったという。
主人公に渡辺謙を配し、時にエキセントリック、時に自重のきいた説得力のある人物像を描く。労働闘争時代から海外派遣、墜落事故以降の東奔西走と、数十年をたどる大河ドラマの骨子となるのは、かつて親友であり、途中で道を違えた二人の男の人生の交錯。物語を追えば善たる主人公とそれに立ちはだかる悪に落ちた友人となるが、それぞれの立場でそれぞれに抱える問題がきちんと描かれており、感触としてどちらが善でどちらが悪といった単純な割り切りが出来ない。
どうにも変えることの出来ないメカニズムが国の中に鉄骨のように完成されており、それは支配者階層の決めた一方的な構造であるがため、いびつで狂っている。それに気づいた時、システムに沿って窮屈に生きることを選ぶのか、蟷螂の斧で無謀な戦いに挑むのか。
この問題は時代を超えて普遍的なものなのだろう。自分でさえ、長い物語の間にあれこれと考えさせられた。
映像も全編にわたって丁寧に作られており、海外ロケがきちんと敢行されているのが品格を高めていると思う。飛行機関連の描写は少なく、特に航空機業界の物語だと構えてみる必要はないだろう。登場人物も多く、複雑に感じられた部分もあるが、長い作品時間がきちんと物語を描くことに費やされているため混乱することなく理解することが出来た。
最後に題名となった言葉が主人公の口から出るが、どうも唐突で、作品とは似つかわしくないもののように感じる。
物語自体、最後がどうも尻切れトンボに感じられるが、2010年の日航破綻まで続いていたのなら、物語としてさらに完成したものになっていたのかも知れない。