★★☆☆☆
~片側からの~
これは女性の映画だ。
平日の傍流私鉄で生活圏を移動する幾人かの人物にスポットを当てて、同じ電車に乗り合わせた程度の関わりが生むそれぞれへの影響、変化を丁寧にえがく。
実際尺の長い映画で、初っぱなのエピソードが魅力的で吸引力がある分、以降が間延びして飽きてくる。もう少し尺を短くしてテンポアップするとずいぶんすっきりするだろう。
話自体は惑うところなく分かりやすい。多くの登場人物がいながらさほど混乱しないのはきちんと設計、演出されているからで、当たり前といえばそうなのだがジャンクフードのように散らかった映画が多い中、清涼感さえ感じる。
舞台となる路線におそらく乗ったことがあるはずだが、見覚えのある景色はなかった。ただ、みんなが当たり前に関西弁をしゃべっている風景は親近感を覚えずにいられなかった。今作のラスボスが説得力を持つためには関西であることが必須条件なので、場所選定にも違和感がない。
関西のみ上映が早かったそうだが、当地の住民にはうれしいことだったろう。
全体の感想としては多少物足りなかった。
これは、バラバラの物語が最後に美しく一点に収束していくのを期待していたのに、それほどでもなく淡々と終わったことによる。まとまりすぎてはドラマチックに過ぎ、等身大の映画であろうとする今作の支障となるのかもしれないが、退屈を越えてたどり着いたのがこれか、という多少の徒労感は拭えない。
個別に気になるのは冒頭にも書いたように、女性向けすぎる点。ほとんどの登場人物が女性で男性は端役と言って良い。当然起こる問題は女性特有のメンタルな事柄であり、本来所属するコミュニティでの対人関係に煮詰まった女性達が、同じ列車に乗り合わせたというはかないコミュニティに勇気づけられ、立ち戻っていく。
男性が見ると意味が分からないといったことは全くなく、同情も共感も出来る。しかし、何か女性の井戸端会議をのぞいているような微妙な気分になって据わりが良くない。
おそらく、物語が分かりやすい色分けで語られすぎているからだ。起こる問題は日常の些細な事柄、その積み重ねであるから、それは一方だけの責任ではない。こちらにも落ち度はあり、相手にも理由があるはずなのだ。それに触れることなく片側からの視点で描かれている物語はなんだか薄っぺらで信用できない。女性から相談を受け、事情を確かめてみたら聞いた話と印象がずいぶん違う。そういった経験をしたことのある人なら、分かってくれるかと思う。
そういった点で佳作ではあるがどうにも人には勧めにくい作品だろう。
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