2014年5月30日金曜日

ファンボーイズ

★★☆☆☆
~スターウォーズファンの旅路~

スターウォーズの新三部作一作目、ファントムメナスの公開直前のドタバタを描くコメディー。
熱狂的なスターウオーズファンの三人のうち一人が、重病(癌?)により公開前に死んでしまうことが判明。
社会に出て距離が生まれていた三人が再び力をあわせて、スタジオに忍び込んで公開前に見てしまおうとたくらむ。
大陸横断旅行をしながらの物語なので、いびつな形のスタンド・バイ・ミーというのがしっくり来る。
スタートレックファンとの確執、本家スターウォーズの俳優が出演してキャラクターがらみの演技を見せるなど、特にアメリカのスターウォーズファン向けに特化された作りなので、スターウォーズ見てますよ程度の自分には分からないネタも多数。ただ、この映画がファンによって楽しみながら作られている感じが滲み出ており、後味含め悪くない。
男三人組に女性が一人合流して旅が続くのだが、ざっくばらんで一途なこのキャラクターが中々に魅力的。

アメイジング・スパイダーマン2

 

★★★★
~1・2作合わせての作品~


 一作目はこの二作目の前振りだったのか! と驚くほど面白い。
 敵役のエピソード、ヒロインとのエピソード、ヒーローの過去にまつわるエピソード――。一作目で描かれた断片が焦点を合わせるクライマックス。そして失意と復活。
 二時間半と長い映画ではあるが、盛りだくさんの要素をきちんと消化して一作の中に折りたたむ手腕は見事としかいいようがない。

 特に最後の下り、長い年月が流れ、それとともに変化するピーター・パーカーの心と分岐点が描かれる部分。映画の終盤であり、下手にやるとそれまでのドラマを全て薄っぺらにしてしまう危険がある。これを必要最低限の時間で秀逸に演出している。
 特にラストシーンはとてつもなく尻切れトンボなのだが、ここまで見てきた観客にはその後のシーンが目に浮かぶ。描かず、余韻と想像力で潔く終わるこの形は盛りだくさんだった映画の後味をきりっと引き締めて、ああ面白かったと思わせてくれる。フルコースの後のフルーツシャーベットのようなもの。
 映像的にも高速で移動しながらの戦闘シーンは3D効果と相まってインフレの行き着いたような迫力。そもそも今回のメイン敵役エレクトロは自身を電気に変えて自在に移動、攻撃するというとてつもない能力の持ち主。一昔前なら不可能だったろうその戦闘シーンは、イマジネーションさえあれば、どのような映像も作り得る現在の映像魔術の粋を感じさせてくれる。
 最後には次回作への引きも用意され、四作目までの製作が決定しているというが、一二作目が二つで一つであるように三四作もそういったくくりなのかも知れない。そうすると三作目のテンションは下がるだろうか……。楽しみ。
 ※残念ながらこのシリーズ続編はその後キャンセルされ、またリブートされる流れに……。会社の都合で振り回されるコンテンツであるが、それだけ根強い人気があるということなのだろう。

 エンドロール中に、なぜか少し遅れて公開の「Xメン future&past」の宣伝が差し込まれる。同じマーベル原作だが、映画化権利者が異なっているスパイダーマンとXメン。まさかのコラボレーションかと思ったら、政治的な駆け引きの生んだただの宣伝行為だということ。むやみに期待をあおるのはやめて欲しいしものだ。

アメイジング・スパイダーマン

★★☆☆☆
~新旧比較~

映画館で見たきりだったのだが、続編公開に合わせてテレビ放送されたのを再鑑賞。

やはりサム・ライミによる前三作のシリーズ(2002~2007)と比較することになる。
サム・ライミ版一作目からちょうど10年目の2012年公開。
映像技術は当然時間なりに高まっているのだと思うが、インパクトいう点で前シリーズに劣る印象。
蜘蛛の糸による移動シーンも、スリリングな空中戦も、豪華で見栄えのするものだが、前と同じように感じられる。

スパイダーマンの誕生が描かれる点は同じだが、設定や物語は大きく異なる。
アメコミの状況や、スパイダーマンの歴史は明るくないのでどういった前提によるのかは分からないが、思っていた以上に違うので前シリーズの焼き直し感は薄い。
主人公、ピーター・パーカーの人格、ヒロイン、スパイダーマンになる過程、はじめの敵……。
十分別物として楽しむことができる。

自分が寂しく感じたのは、ピーターがかなりのリアル充実組に入っていた点。

前作では学校ではからかわれ、カメラだけが外界との接点であるかのような、根暗の秀才。
そんなピーターがスパイダーマンとなり立場を逆転させていく痛快さが強く押し出されていた。
今作では端から結構イケてる。いじめられる方ではなく、いじめている側をとがめる強さを持っている。(その後ボコられるが)
スマホを使いこなし、恋人も早々に手に入れ、卒業式の充実っぷりと言ったら……。
何もかも思い通りかというとそうではない。前作では叔父叔母を親族の中心にすることで軽く過ごしていた両親の不在とその原因が新ピーターの大きな問題となっている。前作では叔父の言葉がピーターを規定するものだったが、今作では実父、叔父、彼女の父、と様々な父性が主人公を導き、また縛り付けている。

ヒロイン像に関しては今作の方が確実に一般受けするだろう。
前シリーズのヒロイン、メアリー・ジェーンはこれでもかというくらい惚れっぽい。一本の映画中で4人も渡り歩くという凄まじさ。そういう女性に惚れるピーター・パーカーがまたオタク気質でたまらんと言う手合いもありそうだが、万人受けしそうにない容貌と言い中々強烈。
今作のヒロイン、グウェインはまるっきり反対で、一途であり、理性的であり、地に足がついており、かわいい。確実に軍配はグウェインに上がる。

ヒーローとヒロインセットで見比べてみると中々に興味深い。

前シリーズはさえない秀才とビッチ(最近はそんなに悪い意味でもないらしい)。お互いあまり裕福ではない家庭。
ヒーローは堅く、ヒロインは緩い。
根本的にさえない者同士が、様々な事件を経て陶冶されていく。人並みに近づいていく。
スーパーヒーローとしての活躍はあれど、ただのラブロマンスとしてみた場合、非常に身近だ。

新シリーズは普通の青年(多少学力はありそう)と才女。ヒロインは割と裕福。主人公の貧乏描写は少ない。
ヒーローは軽く、ヒロインは堅い。
すでに一定の地位や自分を持っている者同士が、それ以上を求めて悩み、求める。
スーパーヒーローであることは早々にヒロインとの共有事項となり、おとぎの国のラブロマンスだ。

前シリーズの垢抜けなさに比べて今シリーズのなんと洒脱なことか。
これが10年の世の変化だとは言わないが、ああ、そうかもなと感じなくもない。
旧ピーター。公私を切り分け、仕事(ヒーロー)をまじめにこなすあまり家庭を顧みない古いサラリーマン。
新ピーター。仕事(ヒーロー)はそれなりに私事を重視して人生を楽しむ今風のサラリーマン。
ちょうどそんな感じだが、良い悪いではないと思う。
異なる主題を持ち、それにアプローチした結果だろう。
今作の主人公達は十分に魅力的で、スピーディーで、楽しい。

ただ、さえないピーターが僕は好きだった。

まじめで、それなのにM・Jなんかに惚れて、小学生の時からずっと好きで。
ヒーローであることを受けとめ、責任を持ち、暑苦しくのたうち回って。
どこまで行っても垢抜けないピーターが僕は好きだったのだ。

比較はここまで。
単体作品として観た今作の弱点として、敵に魅力がない。
リザードマンは壁も移動できるししっぽもある。爪も強力で再生能力も驚異的。
強いが、ただのでかいトカゲだ。
絵的な見所はスパイダーマン側のアクションが主体になり、見所が少なく感じる。
話も決着のつかない要素が多く、尻切れトンボの印象が強い。
続編前提なのだろうが、単体で見た時のすっきりしない感じはひとまず評価を下げるだろう。

それにしても、なぜこんなに早く新シリーズを立ち上げなおしたのか。
旧シリーズ三作目は2007年公開。五年空きはやはり短いと感じる。
ハルクも気がつけば同じ話が映画化されており、アメコミ系実写映画の乱立にはいささか閉口する。
きっちり3Dにするための新シリーズ、と考えれば多少すっきりするかも知れない。

スパイダーマン(サム・ライミ版)


★★★☆☆
~ピーターの物語~

新シリーズ一作目、二作目を見たあとあらためて見直してみた。

2002年公開だから、12年前の映画となる。
数字としてみるとそんなに昔か、と多少驚く。

12年の差は思ったよりも大きい。

ビルの間を自在に駆け抜けるスパイダーマンを自在なカメラでアクロバティックに描いた映像は、当時大きなインパクトだった。ジェットコースターに乗っているような主観的映像にシネコンの大画面で感激した記憶がある。
あの時点で最高峰だった映像が、今観ると不自然に感じられる。CGで描かれたスパイダーマンの動きは物理法則を乱しすぎており、違う加速度、重力の中で生きる存在を無理矢理この世界に連れてきたような(アメコミという点で実際そうなのだが……)違和感を感じる。比較すると新シリーズの映像は確実に一段高い次元に達している。
だからと言ったこの作品の価値が無くなるわけではない。スパイダーマンの滑空シーンイメージはそのまま新シリーズにも受け継がれているし、物語として非常に綺麗にまとまっている。なにより古き良きヒーローのイメージだったスパイダーマンを現代に完全復活させたという功績は大きいと感じる。

改めて見てみると、スパイダーマンよりもピーターを描くことに注力した作品だったのだと気づく。
さえない男がヒーローの力を手に入れて颯爽と大活躍……、なのだが、いちいちスマートではなくえらい目にあってばかり。それでも強い責任感で役割を果たそうと不器用ながらも努力する姿に親近感を覚えずにいられない。
身近なヒーローというスパイダーマンを、ピーターのキャラクターで描いたのが旧作なのだろう。
新シリーズはピーターではなくスパイダーマンとニューヨーク市民の関係性が身近だということを、スパイダーマンの活躍を通して描いている。

しかし、ヒロインの尻の軽さには久しぶりに見てみても閉口。当時も、今もM・Jのルックスはあまりあこがれの対象ではないように感じる。しかしだからこそ、ピーターは彼女の事が好きなのかも知れない。ピーターのオタク気質は非常にリアルで、内向的な秀才がヤンキー女性に惹かれるというのは、悔しいかな説得力がある。

スターシップ・トルーパーズ3

スターシップ・トゥルーパーズ3 [Blu-ray]

 ☆☆☆☆
~神を風刺~ 


スマッシュヒットとなり多くの人の心に残った一作目。
未見だが、テレビ特番として超低予算で作成され、あまりに評判が悪い二作目。
二作目よりはましな予算で、とうとうパワードスーツが登場する三作目

ネタバレありで記述するので、見る予定の方はご注意。
※自分の感想は基本的にネタバレなのですが……。

一作目は軍国主義、国粋主義を揶揄しながら、その枠組みにはまる人々の生き様を切ないような、たくましいような不思議な印象にまとめ上げていた。
今作ではその世界観はそのままに、新たに宗教・神を皮肉っている。
軍国主義に対する強力な存在として宗教が描かれ、これが善かと言えば全くそうではない。むしろ、軍国主義と同じ存在として描かれ、最後には合一を果たす。何しろブレーキをかけない表現が小気味よい。

軍人のトップがより大きな存在に寄りかかるために神を求める。
宗教を軽蔑していたヒロインが地獄絵図の中でとうとう心おれて改宗する。
祈った挙げ句天から神々しく舞い降りる光はパワードスーツの噴射炎。
惑星を破壊する爆弾を打ち放ち、その爆発の光の中で抱き合い、愛を誓う男女。

これらが予算的に微妙な映像で繰り広げられ、視聴者はなにやら良くできた自主制作映画を見ている気分になる。中々良くできているなあ、という感想の。
売りの一つであるパワードスーツも、ためにためた上で出てくるにしては貧弱な映像で活躍シーンも長くない。正直なところ、格好悪い。
このような内容ではあるが、言いたいこと言って良いんだ! という映画の雰囲気。一転二転する展開。予算は映画の出来を決定づけるものではないが、予算がなければ成り立たない映像がほとんどなのだという現実。
人には勧めないまでも、見た時間が無駄と言うことはなく、あれこれ考える題材を提供してくれる一作。

ロボコップ(2014)

 
☆☆☆☆
~魂の惨殺~


ポール・バーホーベン監督の金字塔をリメイク。
ミニチュアアニメーションなど旧式特撮技術を多用したオリジナル版と比してCGによる画像完成度は高いのに、どうにも魅力の薄い駄作。
主人公の喪失したものの量が違いすぎる。
前作マーフィが失ったのは、記憶、家族、アイデンティティ。代わりに身につけた圧倒的な頑強。まるで悪魔に魂を売った(売らされた)ようなそのアンバランスな存在。
それに比べて今作の彼のなんと中途半端なことか。覚悟や凄みの無いまま、周囲に踊らされ続けるだけのピエロに成り下がっている。
それに引きずられて物語の陰影も薄くなり、派手な戦闘シーンもただのにぎやかしにしかならない。
偉大なオリジナルに対抗するために、様々な努力をしたのだろう事は感じられる。
鈍重なパワータイプのイメージから、俊敏なスピードタイプへの変更。
乗り物もパトカーから専用バイクに。
はじめは黒塗りにされ、後に……。
だがどれも、変わって良かったね、という要素ではない。
上辺だけで、血肉が通っていない印象。

描写のグロテスク具合はオリジナルの方がひどいと思う。生きたままの身体欠損をさっと見せるのがバーホーベン監督流だと感じる。
今作も中々えぐい描写はあるが、それよりも精神的なスプラッタがひどい
脳をいじって記憶を改ざんしたり、人間の意志をすげ替えてしまう哲学的ゾンビの領域に突入したり。
これに比べれば、オリジナルは人間の精神に対して大きな敬意を払っていたと思う。このような状況のロボコップに家族愛を体現させても、心底寒い。
やはり、ヒーローにはその代償として悲しい過去と取り戻せない喪失があるべきなのだと思う。

ももへの手紙

 

★★★★
~みんなで観たい作品~


 「人狼」で名を馳せた沖浦啓之監督のアニメ映画。しまなみ海道あたりの小さな島を舞台に、父を失った少女の心の再生を描く。
 人の仕草、生活感、架空生物?の気持ちよい動き、アクション、細かな演出の積み重ね……。抑制のきいた落ち着いた雰囲気。
 昨今のジブリ映画にうすくなった(宮崎、高畑監督にしか出せなかった)空気を堪能できる作品。スタッフ的にからみがあるのかどうか分からないが、「ジブリアニメの総決算」と勝手に言いたくなる。
 きちんと後継者が育ち、宮崎、高畑監督が通過して行きすぎてしまった感覚に立ち戻ったアニメ映画がジブリで作られていたなら、このような作品になったのではないだろうか。ジブリは今後どうなっていくんだろうと勝手に心配していたが、こういう作品を見られるならジブリに限ることはないのだなあと思う。

 映画館で鑑賞した際、子供客が多く、笑い声や合いの手? が多く入った。それは決して邪魔ではなく、その場にいる見知らぬ人たちと一緒に笑いながら見ることが楽しい一作。映画館で見るのは、こういう楽しさがある。