~ヤンキーコメディー~
★☆☆☆☆
宮藤官九郎脚本、監督。宮崎あおい主演のバンド映画。
といってもメインのバンドは解散後数十年が経過した初老の集団。解散ライブ映像がネットに出回ったことで、大きな時差を経たブレークとなった。
宮藤官九郎の脚本らしく、登場人物全員がちゃらんぽらんでいい加減。そのくせ自意識とプライドは過剰と、ヤンキー向けの映画だろう。自分には感情移入できる一人もなく、外国のシチュエーションコメディーを真顔で見る気分だ。
この、外国のコメディーというのはなかなか言い得て妙で、日本のコメディーらしからぬ放り投げた感じがそうさせるのだろう。
自分の認識では、洋画、特にアメリカのコメディー映画は回りに迷惑をかけすぎる。主人公が周囲を信じられないような目に合わせて、大変なことになった相手の姿を笑う。
対して日本のコメディーは迷惑が仲間内で収束する。笑いの根本もひどい目にあった人よりも、ひどい目にあった人に逆襲されてさらにひどい目にあう所で笑うパターンが多い。
もちろん完璧に当てはまる決まり事ではないが、結構うなづける点も多いのではないか。洋画コメディーと言わず、トムとジェリーなどの米アニメーションをイメージした方が分かりよいかもしれない。
洋画コメディーの主人公は、回りを気にしない馬鹿で、邦画コメディーの主人公は、回りを気にしすぎる馬鹿だ。
この映画の主人公は明らかに前者である。
傍若無人な振る舞いに悪びれることなく、回りをひっかき回し続ける。迷惑をかけられる方に感情移入してしまう身としては、いらだたずにはいられない。所々に吐く格好いい言葉も上滑りして物語に根を下ろさない。
極力、好き嫌いをのぞいて考えてみても評価は大して変わらないだろう。宮藤官九郎の脚本はフックに富んだ奇抜で興味を引くものだが、監督としてはひらめきを感じない。各シーンで何を描くのかが茫洋としていて、それらをつなげた各シーンもうまくつながらない。ぶつ切れの日記を見ているような、物語を感じられない内容となっている。
脚本と監督は別の才能がいるのだなあという感想。