★★★☆☆
~カルマ判定~
上映館は少ないながらロングヒットとなったスーパーじゃないヒーロー映画の異色作。
友人に強く勧められ、自身も気になっていたのでレンタルで見た。
主人公は思い込みの激しい漫画オタクの高校生。正義感に燃えるあまりに一念発起して「一人で勝手にヒーロー」を開始する。
同様の私設通常人ヒーロー映画には「バットマン」や「ウォッチメン」があるが、彼らは財力や鍛錬、各種秘密兵器をその強さの説得力としていた。
彼にはなにもない。通販で買った全身タイツだけだ。
それが思い込みの強さ(オタク気質にありがちな瞬発的決心の強さ)と偶然により、等身大のヒーロー「キック・アス」としてメディアを騒がせるような存在になる。
この流れは、無茶だがどこか説得力がある。
誰もが常時動画撮影可能な機器(携帯電話)を持ち、ネットという個人発信可能なマスメディアが世界を覆う現代。似たようにちょっとしたことがとてつもない反響を生み出す事件をいくつも見てきたから。
ただ、このようなあらすじを見ても面白そうには見えないだろう。実際あまり面白くない。
この映画を楽しめるかどうかは主人公とは別のヒーローチームに魅力を感じるかどうかにかかっている。
キック・アスとは別に復讐のために牙を研ぐ親子ヒーローが登場。名前と格好がヒーローと言うだけでもはやテロリストだが、その子供が11才の少女。幼少より英才教育された身のこなしと知識はバットマン的な強さにまで至っている。
彼女の活躍シーンが、ともかくこの映画の見所であり、価値である。
従って、彼女に魅力を感じるかどうかが、この映画の評価になるだろう。
確かに彼女はキュートで、子役によくある薄っぺらさが感じられない。アクションシーンも見事。
でも彼女はいびつな教育を受けて育った、いわば狂信者なのだ。悪人とはいえ数十名の人間を容赦なく撃ち殺しながら、自分の為していることに罪悪感はない。父に褒められることだけを褒美に戦っている。
理性の部分が、児童虐待やん、と思う。
でも、かっこいいし、かわいいし、魅力的。そして一途だ。
守られるべき存在にやらせてはならないことを行わせる、というのはある意味ロリータ趣味のアダルトビデオ的な魅力なのかも知れない。
状況としては「レオン」に近いが、レオンの場合は手を汚すのは大人だ。
何か感じたことのない背徳感があり、これがこの映画を高く評価する人たちの共鳴した部分なのではないだろうか。
しかし実際この問題を感じさせないようにうまく作られている。
登場人物が親子ヒーローだけ、つまり彼らが主人公であったなら、どうやっても彼女の境遇に引きずられてしまうだろう。親子を描く時間が増えてしまうからだ。
メインをキック・アス、つまり平凡な少年のヒーロー物語にすることでこの親子を描くことが許されている。とすると、少なくとも製作者が最も描きたかったのは少女の残酷ヒーローであり、作品名となっている主人公さえも、彼女の隠れ蓑に過ぎないのだろう。
このように見てみると、メインストーリーが比較的平凡なのもしかるべきだと思うし、作品全体のテイストを操る技量に並々ならぬ才能を感じる。砂糖に塩に醤油にみりん。各種調味料で全体のバランスを見事に保っている。
自分は不思議とこの少女ヒーローにそこまでの魅力を感じなかった。
もし彼女が元気な女の子ではなく、おとなしい少女で、自分の為していることに多少の罪を感じ始めている描写があったのならば、一直線に引きつけられていたのではないかと思う。
してみると、これで満足できない自分こそが常軌を逸しつつある異常であり、業の深い性的嗜好なのだろうかと不安な気持ちにもなった。
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