★★☆☆☆
~誰が見るのか?~
時々、なぜこの映画が作られたんだろう、という作品がある。
原作が有名なわけでもなく、何か時流を狙ったでもなく、そっと公開されて話題にもならずに過去作へと追いやられていく。
インディーズのような立ち位置の作品ならそれも分かるが、大手配給会社からもそういった作品がポッと配給されることがある。
今作がまさにそれで、配給会社はSPE(ソニーピクチャー)である。
自分は主演の椎名桔平が見たいためだけに映画館に足を運んだが、深夜の回であるにしても、案の定観客は自分ともう一人のみ。
自分も他の映画の開始前予告で知った位なので、存在自体が知られていない作品だろう。
内容も、実に安っぽかった。
見るからに安上がりな撮り方ばかりで、予算の制限が厳しいのだろうとひしひし感じる。ラストのシークエンスでさえ主役二人が別撮りなのが丸分かりなのがつらい。
テレビの二時間ドラマの雰囲気、というのがわかりやすいが、例えば「踊る大捜査線」の映画が予算の増えたテレビドラマだとすれば、今作の予算規模は下手をすれば通常の二時間ドラマよりも少ないのではないかという印象である。(まあさすがにそんなことはないのだろうが……。)
かといって見る価値のない、存在を忌避する作品かといえば、そんなことはない。
椎名桔平に対するひいきを差し引いても、自分は学ぶところ大きかった。
少ない予算で、映画としての雰囲気を出す創意工夫を感じたからだ。
ともかく画面の部分ぼかしが多用されている。
画面手前の事物を大きくピンぼけにして、ピントの合わせた奥の被写体をとる、というのはよく行われる画面づくりだ。立体感が強調され、なおかつ主体を引き立てる事が出来る。ぼけた部分がソフトフォーカスの要素ともなり、全体にふんわりした情感も生まれる。
この映画では、普通に取った画面の一部を後からピンぼけにするような手法で、同様の効果を遠近に関係なく発生させていた。
※上記はおそらく、でひょっとすると撮影時のレンズフィルターにそういった加工を施していたのかもしれない。
きちんと絵づくりしようと持ちこたえている人が、画面の向こうにいる。
どんな映画でも多くの人が関わり、情熱を持って関わる人は当然いるはずだ。
この映画は、シンプルな凡作であるが故に、その当たり前のことを如実に感じさせてくれる作品だった。
画面ぼかしによる画面作りは今後の参考になるし、椎名桔平はやはりいかす。
僕には後悔のない見て良かった映画で、自分のような人間が見る映画なのかと思い至るが、それでは売れないのも自明。
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