2009年6月4日木曜日

レッドクリフ パート2~未来への最終決戦~

★★☆☆☆
~ジョン・ウーのお笑い三国志♪~

まず言い訳させてもらえれば、この映画は本来見る予定の物ではなかった。
父がテレビでパート1を見て、続きを見たいと誘ってくれたのである。
見事に術中にはまっている。

大層な副題も、各種CMも、もうそれだけで腹一杯という後編。
希望があるとすれば、前編でため込んだ分後編ではスペクタクルの連続だろうという期待のみだが、まるで裏切られた。

素人目にも「これいらないんじゃないの?」というシーンが前編と同様に出てくる出てくる。
なにより初っぱなから目と耳を疑う失笑シーンである。
何というか、音と映像を完全に無視して、この映画のルールばかり押しつけてくる。
これはこれで昨今まれにみる貴重な種類の驚きなので一応伏せておくが、本当に気持ちの悪い導入だ。狂っておる。

この冒頭ですっころぶ展開も、その後の展開への布石なのかもしれない。
「この映画は、そういう映画なんですよ」
「いちいちつっこむのは野暮な、お笑い映画なんですよ」
そういう宣言ではなかったか?

そう飲み込んでしまえば、この作品はとたんにクオリティの高いバラエティに変質する。
最盛期のダウンタウン、そのシュールなコントに匹敵する破壊力をもった「ジョン・ウーのお笑い三国志」なのである。
何しろ本気なオーラを放射しつつ、世界全体がおかしな事を大まじめで行っているのである。多少引き込まれそうな展開があったとて、そのようなシリアスは数分も続かず台無しにされる。
一瞬後になにが起こるか分からない緊張感は、すごい。

このお笑い三国志の主要人物をその線で解釈すれば以下となろうか。

  • 乗りつっこみの名手 曹操
    相手の下手なボケにつきあってつきあって、最後に全力で憤怒。そのつっこみは中国全土を戦渦に巻き込むほど。
    負け惜しみや逃げ口上から下ネタまで、細かい芸までこなせるオールラウンドプレイヤー。
  • 最強の天然ボケ 周瑜
    決断力のないボンボン天然キャラを周囲の全員でいじりまくるという構図が美しい。
    どんな状況も微笑と演舞でクリアするというお約束を生かし、どんなにいじられても品位を守り抜く。
    大量の団子を頬張って気勢を上げる姿は今作中屈指の名シーン。
  • 口はいっちょ前のトッチャンボウヤ 関羽
    偉丈夫の英雄をまさかの解釈で小柄に。
    どんなに良い台詞を発しても、強がりに聞こえる不思議!

このようなお笑い英雄を軸に、名も知れぬ端役がとばすギャグの連発。
劉備、孔明、張飛などは意外なほど地味に目立たないが、舞台の下支えとして映画の崩壊を支える。

見終わって思うのは、これは三国志じゃなくても良かった、もしくはそうではない方が認められる作品だったのではないかという事。
この題材はジョン・ウー監督の悲願だったという事なので、当人は満足なのだろうか。おそらく彼が惚れ込んでいたのは、三国志ではなく、赤壁の戦いだったのではないか。そう思えるほど、「三国志」に無頓着な赤壁だった。

それにしても前編後編に分けた意味不明よ。
海外では分けることなく公開したとのこと。おそらく不要なシーンを削りに削って、短くまとめたのだろう。
監督としては不本意だったのかもしれないが、客観的に見てそれが正解だったと思う。監督の固定ファン以外、かったるいスローモーションと古くさい演出を見たい奇特な人はそうはいない。
前後編を適切に合わせることが出来ていたなら、見所満載の大作映画として、お笑い三国志などという非難を跳ね返すだけの密度を備えることが出来ただろうに。

一つの映画となるはずの物を、水増しして二つに分けたその詐欺的な行為。
評価も半分に扱うのが適切な対応というものだ。

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