2010年10月29日金曜日

アルマゲドン

★★☆☆☆
~異なる感想~

ながらくの間、この作品は自分の中でもっとも憎むべき映画の一つだった。
ドラマから映画化された邦画のように、お約束で、薄っぺらで、お涙頂戴で。このような作品がヒット作に名を連ねる事に、おもしろかったと抜かす回りの人間に、映画という文化を侮辱されたようで腹が立ったものだ。

この自分の反応は独りよがりで、矮小なものだったと思う。

テレビでやっていたので、録画して見てみたが、素直に楽しむことが出来た。分かりやすさ、程良い力の抜け具合。これはこれで映画の一翼を担う分野だろう。あのころの自分は、古い、評価の定まった名画のおもしろさにようやく気がついたところで、そのような作品が多くの人の目にさえ入らない状況と、時流に乗っただけの最新映画に世が傾倒している事が、不条理に思えて仕方なかったのだ。
「好きな映画にアルマゲドンをあげる奴は、はっきりと敵だ」と公言していた。今もその時の自分の気持ちは分かるし、その一片は胸にあるままだが、偏った意見だったと思う。

今回見てつくづく感じたのは、テレビの放送枠に収めるために行われる編集の切なさ。
アルマゲドンはもともと151分の長編なのに、放送枠で二時間弱まで切り詰められていた。CMをさっ引いた実際の放送時間では100分がいいところだろう。三分の一を削除するなど通常不可能だが、何とか意味が分かり、楽しめる形に編集されていた。切り詰め作業担当者の苦労はいかばかりか。
まあもともと悠長で潔くない編集だったので、テンポがよくなったとも言えるが、これはさすがに切り詰めすぎだ。大ヒットしたテーマ曲に乗せて盛り上がるシーンさえ細切れにされている。あまりに短くなったため、曲の印象が残らないほどだ。
物語を伝えるためのシーンにどうしても時間が必要だったのだろうが、この映画の見せ所が摘まれていると、何のための編集なのだろうと言いたくなる。

無料で見ているものに文句を付けるのも傲慢だろう。ただ、この作品と初めて出会うのがこの放送という人も多いと思う。そう考えると制作者の意図と異なる編集を施されたのに、同じ名前を冠ぜられている作品が不憫にさえ思えてくるのだ。

それも含めて、気軽なテレビ放送映画ということか。映画館、DVD、有料チャンネル。映画を見る方法はたくさんあって、それぞれに特徴がある。
そこまで含めて、映画の楽しみ方、なのだろう。
だがしかし、「ノンカット放送」といった宣伝をするならば、同様にどの程度の分数カットしたのかという情報を、公平にアナウンスして欲しいものだ。

おまけのようになってしまったが、ヒットメイカー、ブラッカイマーがプロデュースした本作は、細かいつっこみを無視した勢いの良さ。最後まで力押ししようとする潔さ。馬鹿馬鹿しくも手に汗握る大冒険を味わえる。今見ると、いっそすがすがしい。
予定調和といわれようが、あまりに短絡といわれようが、そのように作ったのだから当然だ。
生ビール片手にプロレスを見るような、気楽におおらかに楽しめる、開けっぴろげな雰囲気が心地よい。

リング

★★☆☆☆
~和風ホラーの定番~

一世を風靡した和製ホラー。
マルチメディア展開で一気に人気の頂点を極め、強烈な印象を残してこれまた一気に消えていったようだ。恐怖のキャラクター「貞子」は怪異の典型として定着した。

感染していく呪いの恐怖はビデオテープが媒介となっている。ビデオテープは当時非常に身近なメディアであったため、恐怖をリアルに感じることが出来た。
映画の作りとしてはオーソドックスだが手堅いもので、主演の真田広之が映画の格を上げている。人気の波をうまくすくい上げることに成功。

時を経た今見ても興味を引かれる展開と恐怖。
詰め込みすぎず、薄すぎず、ちょうど良いあんばいの映像密度。
安っぽく見える場面も多いが、楽しむことが出来る。

らせん

★☆☆☆☆
~恐怖から不気味へ~

一作目「リング」の続編。
小説は「リング」「らせん」「ループ」という連作になっているが、ループは映画化されていない。

リングの登場人物を引き継いで、物語は呪いの規模を日本中へと拡大させていく。荒唐無稽さが強くなり、素直に飲み込める範疇を超えてしまっているため、感情移入しにくく、あまり怖くない。
実体のない訳の分からないものに対する恐怖が一作目だとするなら、今作はその恐怖が実体をともなっていく過程をえがいており、物語の印象は恐怖よりも不気味さへとスライドしている。

一作目を受け継いだ物語を見たい者には、拒絶反応を起こしそうな要素が多く、単体で見るとただただ妙竹林な映画という事になる。多くの映画に埋もれていく、凡百の作品。

リング2

★☆☆☆☆
~結局ループと同じ印象~

原作にそった正当な続編「ループ」とは異なる方向の続編が今作。
ループはあまりに突拍子もない方向に話が進んだため、このような作品が出ることもなるほどとうなづける。が、印象はループとさほど変わらないように感じた。
今作も、訳の分からないものに輪郭を与えようとする物語だからだろう。
物語は新たな事件を設定し、それを解こうと奔走する人々の姿を追うが、物語として吸引力のあった一作目の謎は、一作目できちんと解けてしまっている。それ以上の状況を設定できない限り前作を超えることは出来ないだろう。
そしてそれはやはり難しいことで、今作は縮小再生産の続編となってしまっている。

続編を二種作るというアイデアは興味深いが、それだけの作品となってしまったようだ。

リング0 バースデイ

★☆☆☆☆
~貞子の誕生~

「リング」「リング2」の流れを正史として、その原点を描いたのが本作。
部隊を過去へと移して、恐怖の対象としての貞子が生まれる過程を描く。
貞子の怨念がなぜ世界を滅ぼそうとするほど巨大なのかという点に、ある程度の説得力を持たせる内容となっている。が、登場人物それぞれの理屈があまりに利己的で、この世には愛も友情も無いかのように感じられる。

うら若き貞子役、仲間由紀恵は本作で女優として見いだされ、脚光を浴びていくことになるので、彼女の出世作としての意味合いが作品よりも強いのかも知れない。

閉鎖された人間関係で運営される劇団。そのアングラな雰囲気は好みだった。

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~感性変化の7年リトマス~
★★☆☆☆

人気ドラマシリーズの映画第三作。
一作目二作目はともに邦画史上に残る大ヒットとなったため、今作も期待が高かったが、残念ながら興行成績は低いものとなった。といってもけた外れの前二作と比べてというだけで、弩級のヒット作となったことに変わりはない。

前作から7年を経て、久しぶりに登板したこの映画にどのようなものを期待して見に行くかによって、評価は大きく変わるだろう。

思うに、前作公開時もう大人(映画の審美眼的に)だった人にとって、今作はああ懐かしいと感じるノスタルジックな映画だろう。これこれ、このノリ。この馬鹿馬鹿しさ! といった具合だ。
前作公開時にまだ幼かった(映画の審美眼的に)人にとっては、前作よりはるかにランクの落ちる、擁護しようのない駄作と映るだろう。

この作品は、前作と何も変わっていないのだ。

質も、テイストも、時間経過を無視してまるで同じ。7年前に作られたものが凍結保存されていて、それが解凍されて出てきたような。
だから観る者は7年前の自分の感性がどのように変化しているかを知る手がかりとして、今作を鑑賞してみるのもおもしろいだろう。

占い程度に、判定を書きつづれば以下となる。

前作より退屈だと感じるなら、それはあなたが幾多の経験により大人になったという事だ。単純な物語や、内側を向いたネタの数々に、子供っぽい完成度の低さを感じ取ったのだろう。これまでは食指を動かさなかったような、多少ヘビーな映画にも目を向けてみるといい。

前作ままだと感じるなら、あなたは自分の感性を保つことに成功した。時間でたやすく変わらない、きちんと重石のついた判断基準を持っていたということだ。その感性に沿って今後も映画を楽しむことはもちろん、範囲外に目を向けて感性をさらに強固なものに鍛え上げてはどうだろう。

前作よりも楽しめたのなら、あなたは解放されたのかも知れない。映画の価値は映画の内容だけで決まるものではないと、複数の判断軸を得たのだろう。ネームバリューの高い作品を。きちんと盛り上げて公開することは、産業としての映画を守ることだ。その困難や、努力を思いやれる余裕ができたのかも知れない。
今後もこだわりなく多くの作品と接することで、これまで見てきた作品達が異なる意味合いをもって蘇るだろう。

さて

作品に対する絶対評価を心がけるなら、少しお金のかかったテレビドラマ、程度の出来だ。
ファンアイテムの域を出ず、これまでの作品群を見ていない人に勧めることは出来ない。もしくは織田裕二を筆頭とした出演陣いずれかのファンであるなど、前提をクリアしないと楽しむことは難しいだろう。

署内に出てくる動物。
打ち壊し一揆のように扉をゴンゴンとたたく姿。

知らない人が観たらどこまでも寒く、もしくは一周してシュールな笑いを生み出す極寒の北極映画だ。