2021年1月27日水曜日

プリデスティネーション

プリデスティネーション [DVD]

★★★★
~壮絶壮大なタイムパラドックス~


 2014年(日本公開は2015年)。SF小説の巨匠ロバート・A・ハインラインの小説『輪廻の蛇』を原作としたオーストラリア映画。
 タイムマシンによる壮大なパラドックスを描ききった作品。
 

 町の片隅のバーに男が訪れる。バーテンダーは男の「女心はお手の物」という言葉に興味を覚え、ぜひその理由を知りたいとせがむみ、ボトルを1本賭けることで男は今に至る境遇を話し始める。それは冒頭から壮絶だった。
 「私が女だった頃――」

 
 ネタバレを気にしない前提のこのブログだが、今作についてはネタバレを避けて記述している。未見の方も安心して読んで頂けるが、本作は前情報を仕入れる前に鑑賞してもらいたい作品だ。その方が作品上でコロコロ転がされる自分の認識を楽しむことが出来る。
 以下、感じた内容を五月雨に列記。
 

2021年1月26日火曜日

オール・ユー・ニード・イズ・キル

オール・ユー・ニード・イズ・キル [Blu-ray]
★★★★
~未来の端を切り開いていく~

 2014年アメリカ。日本のライトノベル『All You Need Is Kill』を原作とした「エイリアン侵略」×「タイムリピート」SFアクション映画。
 何をもってライトノベルとするのかは様々な議論があろうが、ともかくハリウッド全力で実写化された日本のSF小説である。その本気具合は主演がトム・クルーズである事からも明白。映像や演出のクオリティも高く、どこに出しても恥ずかしくない大作映画となっている。
 

 ギタイと呼ばれる異形の侵略勢力は瞬く間にヨーロッパの人類を駆逐。人類も決死の反抗をくり返すがいつも裏をかかれて敗北を重ねるばかり。
 残存兵力をつぎ込んだ最大で最後の反撃作戦を間近に控え、広報官を務めるウィリアム(トム・クルーズ)は将軍から最前線での活動を命じられる。命を賭けて戦ったことも無い口だけ勇敢なウィリアムにとってこれは死刑宣告であり、これまた口八丁で切り抜けようとするが将軍の反感を買い、脱走兵として逮捕。将校身分を剥奪され一介の歩兵として配属される。
 作戦が開始され、何の戦闘技能も持たないウィリアムは役に立たぬままギタイに殺されるが、偶然か最後の意地か、地雷を炸裂させて相打ちとなる。
 目が覚めると、歩兵に配属された場面に時がさかのぼっていた――。

2021年1月19日火曜日

移動都市/モータル・エンジン

移動都市/モータル・エンジン [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]

★★★★
~実写版ラピュタ!~


 英国の作家「フィリップ・リーヴ」の小説「移動都市」を原作とした移動捕食都市SFアクション。2018年。ニュージーランド/米映画。
 映画「指輪物語」のピーター・ジャクソン監督が脚本に参加しており、本作の監督であるクリスチャン・リヴァース自身、ピーター・ジャクソンの多くの作品でイメージボード(世界観を絵として作成する)作成に関わった盟友。
 

 世界を60分で崩壊させた戦争から数百年、人々は荒廃した土地に資源を求め都市を移動させながら生活していた。 そんな移動都市の頂点である巨大都市ロンドンで、史学士見習いのトムはある日ロンドンに「喰われた」小さな採掘都市から紛れ込んだ1人の女性と出会う。 (WIKIPEDIAより)

スーサイド・スクワッド

スーサイド・スクワッド [Blu-ray] 

☆☆☆☆
~微妙な悪役大集合~

 2016年の米映画。アメコミを原作とした複数のヴィラン(悪役)を結集させたアクション映画。
 DCコミックス(アメコミの出版社)が抱えるヒーローコミックに登場する様々な悪役達を一つの部隊にして、強大な悪に対抗しようとする物語だが立て付けからしてなかなか厳しい。
 

◇悪役の知名度が低い

 スーパーマン、バットマン、フラッシュといったヒーローの名前は聞いた事があるだろう(フラッシュは厳しいかも)がその悪役となるとどうだろうか。今作には「デッドショット」「キャプテン・ブーメラン」「エル・ディアブロ」「エンチャントレス」など多数のキャラクターが登場するが、知っている人がどれだけいるだろうか。自分は一人も分からない。最も有名な「ジョーカー」も出てくるが関わり方が特殊。ジョーカーがらみのキャラクターである「ハーレイ・クイン」は冠映画が存在するので最も知名度が高いだろうが、マニアックなことに変わりはない。
 海外での人気は知らないが、このような知名度ポンコツのキャラクターを寄せ集めたところで、微妙な印象しか持てないというのが正直なところだ。

2021年1月18日月曜日

100万の命の上に俺は立っている

【Amazon.co.jp限定】100万の命の上に俺は立っているBlu-ray BOX(初回仕様版)(2枚組)(アニメイラスト描き下ろしB2布ポスター付き)

☆☆☆☆
~狂人が作り狂人が支えた敵性作品~


 別冊少年マガジンに連載中(2021年1月現在)の漫画を原作としたテレビアニメーション。第一期12話。
 異世界転生とデス・ゲームを組み合わせた作品で、「奥浩哉」氏の漫画「GANTZ」の影響が強いだろう。
  

 人間嫌いの中学生四谷友助はある日の放課後、唐突に異世界に3人目のプレイヤーとして召喚される。ゲームマスターを名乗る未来人から完全攻略まで残り8周のクエストをクリアするように一方的に告げられた四谷は、クラスメイトの新堂衣宇と箱崎紅末とともにクエストに挑む。単独行動しつつも自分より強い2人を死なせないと奮闘しクエストをクリアする四谷だったが、周回ごとのクリア報酬で最終的に東京でドラゴンと戦わされることを知り、自分が頑張らなければ大嫌いな東京を滅ぼせる可能性に気づく。<WIKIPEDIAより>


 見ると時間を損するどころか、世界認識に対して不信を付加することになるので、避けるべき作品。無人島で一人、見られる作品がこれだけという状況でも、見ないで良い。視聴者を馬鹿にしていると思う。この作品のために「☆ゼロ」の評価を新設しようかと考えさせられたほど。
 
 1カット目で「この作品はだめだろう」と強い確信を得たのは初めて。本当に、こんなこと、ありえない。
 誰がどんな判断に基づいたって、新シリーズのワンカット目は重要だ。ファーストインプレッション。初めに感じた印象はその後に長く影響を及ぼすのは自明だ。どんなに台所事情の厳しい作品でも、作品冒頭には細心の注意を払い、なけなしの労力を費やしてクオリティを確保する。ゲーム開発でも序盤には細心の注意を払う。その世界への入口なのだから、無理なく素直に入ってもらえるように丁寧に組み上げる。

 今作はその視点において、本当に失敗している。

 暗闇の中にずらりと並んだ怪物の目が光るのをパン(カメラの水平移動)するファーストカット。いったいどのような物語が始まるのかと期待する視聴者に、不細工なモンスターをただただ見せつけてどうするのだろう。どうしたかったのだろう。しかも見えてくるモンスターのデザインがおかしい。強いのか弱いのかよく分からない微妙なデザイン。色と体躯的にRPG世界観でよく使用される「ゴブリン」なのかと推察されるが、はっきりしないので非常にモヤモヤする。
 他のRPGと同様に既存のモンスターを登場させるのは、説明を省いたり、作品世界に入りやすくする利点を持つが、微妙なデザイン変更を行って共通感を無くすることで、逆に不信と不安を高めている。ここまででこれは相当に厳しい作品だろうと確信する訳だが、さらに畳みかけてくる。
 
 OPが終わったあと本編に入ってみると、映像が全て「いらすとや」のキャラを切り貼りしたフラッシュアニメになっているのだ。
 
 「いやすとや」は商用まで含めて使用料無料のイラスト配信サイトで、どのような用途にでも使いやすいアクのない絵柄ながらきちんと個性的なイラストが豊富に取りそろえられており、町やネットで見かけない日がないほど定番となっている。このサイトのイラストを使用して第一話丸ごとを作っており、「ワケあり版」などと銘打っている。どうやら原作漫画で以前漫画自体のいらすとや版が無料公開されたなどの経緯から、今回のアニメーション化に際しても同じプロモーションを行った模様だが、僕はそんなの知らないんですよ! 普通のアニメーション版も違うチャンネルで公開されたようだが、なぜそういった情報を前提に見てくれると思ったのか……。その自信はどこから……。原作ファンで情報を追っていた人だけを対象にしており、自分などの野良視聴者は無視なのだろうか。
 腹が立つのが、この訳あり版、そりゃそうなのだがただのネタで全然おもしろくない。そもそも漫画での訳ありプロモーションは漫画の5巻として行われたようで、いきなり5巻を見る人はそうそういないだろう。4巻までの前置きがあれば、いつものあのキャラがこんな表現に――、といった楽しみ方が可能なのだろうが、アニメの一話目でこれをやったところで、初見の人がどのような感情を抱くのか、全く想像しなかったの?

 さらに腹が立つのが、二話~十二話の出来も非常に悪いこと。絵はいらすとやでなくなるが、レイアウトも演出もへたくそで、変なプロモーションを行う労力を、少しでも本来のクオリティアップに割り振った方が良かったのではないか。
 ゴブリンに続いて「トロール」「ガーゴイル」などの定番モンスターも、センスを見せようとして滑ったデザイン。常に不協和音を響かせる。
 主人公が5分くらいしか記憶が残らない思い込みの激しいヤンキーといった風情で、その場その場で勝手な思いを御大層に掲げる。一貫性など無い。噴飯物なのが何度も口にされる彼のポリシー。
 
 「いのちは皆平等だ。だから俺は俺より上等ないのちを守るためになら何でもする」
 
 ???。
 平等直後に優劣をつける発言。
 このような自分に酔った近視眼の幼稚性がキャラクターの台詞から、物語の運びから、もう全編からにじみ出ている。
 
 本当に! 頭が! おかしい!
 狂っている! 狂人が原作を書き、漫画化し、編集し、出版し――。
 またさらに狂人が今作をプロデュースしてアニメ化したとしか思えない!
 
 全員狂人!

 なにより絶望的なのはこの漫画を購入し、人気のあるものとして連載を継続させ、アニメ化につなげた読者諸兄の存在。
 きちんと鳴かず飛ばずで1巻に満たず終わらせてあげるのが、読者の良心では無いのか!

 作品の欠点をあげつらい、けなし落とすのは間違ったことだと思うが、筆が止まらない。自分はまだ未熟です。
 自分が大切にしているものと、全く逆方向のベクトルで作られたように感じてしまっている。これは、自分の持つ価値観に対しての敵性作品だ。
 第二期がすでに決まっているとのことだが、自分は決して見ないだろう。



2021年1月5日火曜日

アサシンズプライド

アサシンズプライド 1 [Blu-ray]

☆☆☆☆
~第一話は見てみて良いのでは~


 「天城ケイ」氏の小説を原作としたアニメーションシリーズ。2019年、全12話。
 

 瓶詰めの都市国家が大きな枝に連なったような世界。瓶の外側は暗闇の危険領域。人類の世界は瓶の中だけ。(なんかもう捨て鉢に感じる設定)
 暗殺を生業とするクーファは任務としてとある淑女の家庭教師を依頼される。もちろんただの教師ではなく、彼女がその家の跡取りにふさわしくないと判断すれば暗殺を行う事を含めての依頼である。
 織女メリダは能力の欠如から公爵家の血を引いていないのでは無いかと噂され、それを覆すために日夜鍛錬するものの、芽は出そうにない。
 クーファは彼女の決意にあてられ、その努力を実らせてあげたいと強く思うようになる――。


 第一話は見るべきところがある。

 映像作品というものは、時間と空間を自在につぎはぎすることを許されている。誰しもに覚えがあるように、時間の早さというものは至極主観的な尺度であるから、映像作品はそれを自在にして良いのだ。物理的に、理屈としてそれが正しいからという理由で映像を作成するのは基本的に間違っていると僕は思う。
 本作の第一話は非常に時間をかけて主人公とヒロインの関係を描こうと(描けているかといえば厳しいが)しており、名匠「出崎統」監督のような雰囲気を多少なり感じる事ができる。自分の良いと思うテンポで映像をつむぐ傲慢さ(良い意味で)。心象風景が現実を侵食するような脈絡のなさ(良い意味で)。一話全体としての出来は決して良好とは言えないが、演出の意気込みを強く感じるアニメ作品を見るのは久しぶりだ。

 また、一話冒頭にあるアクションシーンは全編通して最もクオリティが高く、フックとして充分に機能している。というか、このアクションシーンだけまるで別物。またあのクオリティ来るかな? という期待感だけで視聴を続けてしまう者もいるだろう。まあ、僕もだ。
 これはすわ良作かとときめいたが、それ以降は全く良いところなし
 
 演出の意気込みは主にカットの長さの緩急に現れているが、ツボを外したぼけぼけの時間感覚を押しつけてくるだけに。原作由来なのだろうが、あやふやな世界観が映像化されることでそのあやふやさを際立たせてしまっており、説得力皆無のままごと世界になっている。エピソードの混線具合も厳しく、シリアスなつもりなのかそうではないのかが常に分からない状態に。キャラクターの心情も筋が通っておらず、シチュエーションをつまみ食いするだけなので、物語を追うのもきつい。

 自分は声優の演技についてそれほど気にしない方だと思うのだが、ベテラン「大塚芳忠」氏が演じる「ブロサム=プリケット」というキャラの演出が明らかにおかしい。自分に酔いしれたいけ好かないキャラクターといった感じなのだが、セリフ量とカット尺が合っておらず、変な間があったり慌ただしかったりの異常事態。何らかの事故があったのか、意図した演出ではないと思うのだが……。

 エンディング曲は母に恋心を問うメリダの独白といった歌詞で作品と良く合っている。こういう雰囲気のエンディングが合ったなあ……、と考えてみると、ああ、一休さんのエンディングだ。母上様、お元気ですか?


宝石の国

 

★★★☆☆
~とても幸せな3DCGアニメーション化~


 「市川春子」氏の漫画を原作としたアニメーションシリーズ。2017年、全12話。
 

 あまりに変転した世界で、鉱物から進化した者たちが一つの島に集って暮らしていた。
 それぞれが異なる鉱物の体を持ち、色、硬度、性質なども鉱物を反映させている。
 少年でもなく、少女でもない、若々しい姿だが、鉱物らしい悠久を敵との戦いに費やして生きていた。
 敵は月人。一見仏様のような姿で雲に乗って現れ、宝石達を砕いて持ち去ろうとする。
 宝石の一人フォスフォフィライトは戦闘力が低く、その他の雑務も苦手だが、持ち前の楽観と人なつこさでそれなりに暮らしを楽しんでいた。
 宝石のリーダーである金剛先生からとある仕事を任されたことで、フォスの生活に劇的な変化が生じていく――。

 
 何とも説明しにくい物語で、世界観を理解するのに苦労しそうだが、3DCGで描かれる美麗なキャラクターがスルリとその壁を取り払ってくれる。
 宝石の輝きが圧倒的に美しい。
 生きて動いているが、硬質さを感じさせる。3DCGのぎこちなさ(故意半分限界半分?)が設定と見事にかみ合っているのだ。キラキラと輝くエフェクトも美しく、生きた宝石という存在を見事に映像化させている。原作は未読だが、宝石感の表現は確実にこちらに軍配が上がるだろう。
 戦いの表現も素晴らしい。3DCGが許す自由なカメラワークを活かし、流麗な宝石達の戦いぶりを迫力満点で描き出している。カメラの自由さにおぼれて分かりにくかったり、無駄だったりすることなく、利点をきっちり活かしてクオリティの向上にベクトルを伝えている。
 
 さらに幸せな邂逅といえるのが、物語と3DCGとの出会い。実際何を主題にし、何を伝えようとしているのか正解は知り得ないが、自分は「はかなさから来る切なさ」だと思う。宝石達が思春期の少年少女の姿を持ち、自分の存在意義を探し求めて傷つき、砕けていく様子はまさに汚れを知る前の純粋な魂の映像化である。3DCGの表現力によって、宝石達がはかない存在である事が常に明示され続ける。どんなに華麗に飛翔して、力強く剣戟を振るっても、砕けてしまう存在である事も同時に表現され続けるので、常にはらはらさせられる。一瞬後には死んでしまうのではないかというはかなさを内包した美しさ。コントラストに胸が締め付けられるほどだ。

 原作は今(2021/01)も連載中で、当然アニメも尻切れトンボ。続きが気になって薄目で見るように情報を漁ってみたが、どうやら宝石達には過酷な運命が待ち受けるようで、ちょっともう見たくないな、というのが正直な感想。そういう意味では尻切れトンボで良かったのかも。
 美しい存在がただただ無残に傷ついていき、いびつに変貌していくのを、僕はもう見たくない。

 

 

かつて神だった獣たちへ

 かつて神だった獣たちへ 第1巻(初回限定版) [Blu-ray]
☆☆☆☆
~かつてコミックコンプを読んだオタク達へ~


 「めいびい」氏の漫画を原作としたアニメーションシリーズ。2019年、全12話。
 原作漫画は未読だが、試し読みの折り込みチラシで、達者な絵だな、と思った覚えがある。題名にも何か惹かれるところがあり、哲学的な内容を含むのだろうかと興味を感じていた。間違いだった。
 

 第一次大戦くらいの科学技術の架空世界で繰り広げられる大陸戦争。そこで投入された怪物化した人間兵『擬神兵』は圧倒的破壊力で戦争を終結に向かわせるが、戦争が終わってしまえば危険な化け物。またその技術は不安定であり、英雄だった擬神兵達はもどった故郷でそれぞれに問題を起こしていた。
 擬神兵部隊の隊長であったケインは獣に墜ちた各地の部下達を葬るための遍歴を開始する――。

 
 世界設定やキャラクターの行動、セリフに至るまで、一言でいうと、拙い。見た目においても動きにおいても演出においても、総じてレベルが低く、非常に厳しい出来になっている。原作漫画がどういった内容なのか分からないが、おそらく基本は同じで、画力で説得力を持たす系の作品だったのでは無いかと思う。そうで無ければアニメ化まで至る内容とは思えない。
 
 漫画には漫画の説得力や魅力があり、アニメーションにはアニメーションのそれがある。例えば台詞回しにしても、読んで理解しやすいものと聞いて理解しやすいものは異なる。画面構成も、静止した画像と動く画像では必要とされる要素が異なるだろう。つまり、漫画原作をアニメーションにするにあたっては、きちんと内容を咀嚼して媒体に合わせた再構成を行う事が必要なのだ。
 今作がどの程度原作漫画と同様なのかは不明だが、アニメーション化という作業に失敗していることは間違いない。背負ったバックパックのジェット噴射で高速移動する装置や、謎の無反動連射機関銃など、動かすと冗談にしか見えない描写が噴飯物の映像になってしまっている。
 
 ただ、みているととても懐かしかった。かつて「コミック・コンプティーク」と呼ばれる漫画雑誌があった。最近の漫画雑誌は読者の趣味嗜好に合わせて細分化が進んでいるが、昔はもっと単純で、少年向け、青年向け、少女向けくらいしか無かった。そこに「オタク向け」の内容として投入されたのがコミックコンプであり、エロ分野までカバーしたゲーム雑誌から派生したものだった。題材がゲーム、もしくはゲーム的な内容だったので、今から思い返してもものすごくオタクぽい内容だったと思う。その雑誌で連載されていた漫画のような雰囲気が、今作には満ち満ちているのだ。
 共通点は、「背伸びしてがんばったけど、子供だまし。薄い内容の雰囲気だけをたのしむ作品」
 でも、中学生の自分には楽しかったし、今のそのくらいの年齢の子達にとっても、ぴったりくる作品なのかもしれない。
 
 年齢に関係なくたのしめる作品は確かに存在すると信じるが、年齢に見合ったその時楽しい作品が大半であり、それをそれぞれの時点で楽しむのが正しい姿勢なのだろう。
 今作は、自分に合う作品ではなかった。いうても漫画でアニメで、若い子向けだ。合わない作品の方がどんどん多くなっていくのだろうな――。

 原作は現在(2021-01)時点で連載継続中で、当然アニメは尻切れトンボである。