2021年1月5日火曜日

アサシンズプライド

アサシンズプライド 1 [Blu-ray]

☆☆☆☆
~第一話は見てみて良いのでは~


 「天城ケイ」氏の小説を原作としたアニメーションシリーズ。2019年、全12話。
 

 瓶詰めの都市国家が大きな枝に連なったような世界。瓶の外側は暗闇の危険領域。人類の世界は瓶の中だけ。(なんかもう捨て鉢に感じる設定)
 暗殺を生業とするクーファは任務としてとある淑女の家庭教師を依頼される。もちろんただの教師ではなく、彼女がその家の跡取りにふさわしくないと判断すれば暗殺を行う事を含めての依頼である。
 織女メリダは能力の欠如から公爵家の血を引いていないのでは無いかと噂され、それを覆すために日夜鍛錬するものの、芽は出そうにない。
 クーファは彼女の決意にあてられ、その努力を実らせてあげたいと強く思うようになる――。


 第一話は見るべきところがある。

 映像作品というものは、時間と空間を自在につぎはぎすることを許されている。誰しもに覚えがあるように、時間の早さというものは至極主観的な尺度であるから、映像作品はそれを自在にして良いのだ。物理的に、理屈としてそれが正しいからという理由で映像を作成するのは基本的に間違っていると僕は思う。
 本作の第一話は非常に時間をかけて主人公とヒロインの関係を描こうと(描けているかといえば厳しいが)しており、名匠「出崎統」監督のような雰囲気を多少なり感じる事ができる。自分の良いと思うテンポで映像をつむぐ傲慢さ(良い意味で)。心象風景が現実を侵食するような脈絡のなさ(良い意味で)。一話全体としての出来は決して良好とは言えないが、演出の意気込みを強く感じるアニメ作品を見るのは久しぶりだ。

 また、一話冒頭にあるアクションシーンは全編通して最もクオリティが高く、フックとして充分に機能している。というか、このアクションシーンだけまるで別物。またあのクオリティ来るかな? という期待感だけで視聴を続けてしまう者もいるだろう。まあ、僕もだ。
 これはすわ良作かとときめいたが、それ以降は全く良いところなし
 
 演出の意気込みは主にカットの長さの緩急に現れているが、ツボを外したぼけぼけの時間感覚を押しつけてくるだけに。原作由来なのだろうが、あやふやな世界観が映像化されることでそのあやふやさを際立たせてしまっており、説得力皆無のままごと世界になっている。エピソードの混線具合も厳しく、シリアスなつもりなのかそうではないのかが常に分からない状態に。キャラクターの心情も筋が通っておらず、シチュエーションをつまみ食いするだけなので、物語を追うのもきつい。

 自分は声優の演技についてそれほど気にしない方だと思うのだが、ベテラン「大塚芳忠」氏が演じる「ブロサム=プリケット」というキャラの演出が明らかにおかしい。自分に酔いしれたいけ好かないキャラクターといった感じなのだが、セリフ量とカット尺が合っておらず、変な間があったり慌ただしかったりの異常事態。何らかの事故があったのか、意図した演出ではないと思うのだが……。

 エンディング曲は母に恋心を問うメリダの独白といった歌詞で作品と良く合っている。こういう雰囲気のエンディングが合ったなあ……、と考えてみると、ああ、一休さんのエンディングだ。母上様、お元気ですか?


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