2009年8月5日水曜日

ハッピーフィート

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 測定不能(見ていて気持ちが悪くなった)
~素直に気持ち悪い~


今やハリウッドの一翼、CGアニメーション映画。
歌で愛を語る皇帝ペンギン。それなのに歌が歌えない主人公は、タップダンスだけが得意だった……。

……と聞いてもピンと来ない事と思う。そしてその気分は終劇まで続く。
何が致命的なのだろうと考えると、売りであるべきCGアニメーションが厳しいのだと言わざるをえない。
今やCG技術は成熟し、どのようなイメージでも描き出すことが出来る。その中でアニメーションの場合は得に、どの程度デフォルメし、擬人化するのかを決断しなければならない。
この作品は、その着地点を見誤った。

ペンギンの子供のフワフワ柔らかそうな体毛。氷ばかりなのに見飽きることのない様々な表情の世界。歌に合わせて踊る大量のペンギン達……。
それぞれについては素晴らしいCGクオリティだ。それなのに気持ち悪いのは、ペンギンのリアルとデフォルメのバランスが良くないからだろう。

「不気味の谷」という言葉がある。
CGグラフィック技術の進歩に合わせて生まれた言葉で、中途半端なリアリスティックが、見た人に嫌悪感を生むというものである。
つまり、見た目は完全に人間であるのに、動きがぎこちなかったり、瞳に感情や魂がこもっていなかったり……。蝋人形館の人形達が動き出した感じだろうか。
この映画はまさにそれで、不気味の谷の大行進になってしまっている

特に気になるのがキャラクターの動き。半端にペンギンらしすぎるのだ。
ヨチヨチと不器用に歩くペンギンの姿は特徴的でかわいいが、ミュージカルシーンの地味さにつながっている。可動範囲の少ない、ペンギン的な動きのまま、踊っているのだから、どうにも見栄えが悪い。アラジンのジーニー並とは言わないが、もっとアニメーションらしく動かせば良かったのではないだろうか。

ここまで来ると、視覚から来る先入観も手伝って、人物像や物語まで気味悪く感じられてしまう。
主人公は子供心(夢?)を捨てない象徴として、最後まで産毛に覆われたままだ。体格良く、色気づいているのに子供の姿。これはもう薄気味悪い怪物だ。冒険を果たして毛が生え変わり、大人になりましたというなら分かるがエンディングもそのままとはどういう事か
主人公が人間に捕獲され、動物園で壁を向いてぶつぶつしゃべるシーンは、絶望の表現としも病的過ぎるのではないか。(なお、このシーンでは人間が実写映像で扱われており、これまた気持ち悪い。)

結局各種問題は主人公のタップダンスで解決してしまうが、正直うまいのかどうかさえ分からない。足元をセコセコ動かして、外れたようなリズムを演じられても、直感的にすごさは伝わらない。絵としても、これまた地味に過ぎる。
一般常識や、伝統文化になじもうとしない視野の狭い若者が、自分ではすごいと思っているタップダンスを周囲に振り撒きながら、人間との意志疎通を果たして成長もないまま故郷に帰る。思い人は何故か彼を待ち、一族は彼を英雄に祭り上げ、大団円……。
夢落ちで、目覚めたら一族のつまはじきでした、というならまだしも、一貫して気分の悪くなる作品だった。
嫌悪の一念を込めて、測定不能とさせて頂く。

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