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~人生はお化け煙突~
同じ物事も、視点が違えば、全く違った物に見える。
このテーマを様々な被写体に託し、全編に塗り込めた、漆塗りのような映画。
けっして雄弁にテーマを語るわけではないのに、見終わった後には素直にテーマが心に残っている。
「一見関係のない物を連続して映すことで、それぞれの印象の連結を操作、新たな意味を持つシーンとする」
これをモンタージュ手法とすれば、この映画はまさにモンタージュ手法の積層だが、小難しい言葉で理解するより、「良くできた隠喩の集まり」などとした方がふさわしい気がする。
話の展開としては結構悲惨で、物語のどの段階からでも単なる悲劇につなげることが出来そうだが、見ていて笑いがあふれ、ほっとする瞬間が多いのは、小津監督のサイレント「生まれてきては見たけれど」に近い感触。
男と女の人生での役割、という視点で見ても、一貫性があり興味深い考察が得られる。
曰く、男は理屈で人生を整理しようとして身動きが取れなくなり、女は感情で回りを散らかしながら、それでも前進していく。
二つの性が、ぴったりと重なるものではなくとも、お互いに掛け替えのない物として機能している姿が、ラストシーン。
一本の煙突なのだろうと、納得した。
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