★★★☆☆
~最高クオリティのゲーム映画化~
ゲームが原作となったアラビアンファンタジー。
一定のルールに従って、時間を逆回しに出来るというゲームのギミックを中心にすえて、壮大な物語を展開する。
時間逆回しのアイデアはゲームにおいても実に刺激的なアイデアだった。死んではやり直す、というアクションゲームの基本スタイルを踏襲しながら、やり直す部分自体もゲーム性として取り込んだのだ。
映画でも見所となる逆回し部分は映像的にも実に楽しい。時間を操るナイフを発動させたとたん、発動者は時間の流れを傍観する立場となり、過去の自分が行動する様を逆再生で眺めるのだ。決定的な瞬間に立ち戻り、最適の判断を行うのだから無敵である。
ただ、この力を無制限に使用することは出来ない。そのために必要なのが「時間の砂」。敵味方ともナイフと砂を求め、あらゆる手段を投入していく……。
もう一つ、ゲームの要素をうまく取り込んでいるのが、主人公の移動アクション。ゲームの主人公は杭にぶら下がって体を揺らし、その反動で高いところへ、遠いところへ飛翔する。また、その場にあるもの全てを手がかり、足がかりに、サーカスのような体術を駆使してステージを移動していく。
映画でもまさにこのようなアクションを展開し、フィールドを立体的に活用して目新しいアクションを展開している。これはテイストとしてジャッキー・チェンのカンフー映画に近いが、その場にとどまらない疾走感という点で異なる。
逆回しと立体アクション、二つのゲーム要素を見事に映像に取り込んだ今作は、ゲームが原作となった映画の中で白眉のクオリティである。それを抜きにしても、一本の映画とは思えないエピソードの多さ、それをまとめ上げた物語。気を吐く映像美などここがまずいという点を思いつけない。
反対に言うと、ここだけは観ておくべきという突出点もない。完成度の高さに反してあまり話題にならなかったのはこういった所が理由なのかも知れない。
地上波で放送されるなどで視聴機会が増えれば、安定した人気を得ていくだろうと思う。