2020年6月8日月曜日

封神伝奇 バトル・オブ・ゴッド

封神伝奇 バトル・オブ・ゴッド [Blu-ray]
 ※Amazonの商品リンクです。

☆☆☆☆
~尻切れトンボの見なくて良い作品~

 2016年の絢爛豪華な中国アクション映画。日本では2017年に公開。
 中国明代に成立したと言われる古代小説「封神演義」を下敷きとした物語と言うことだが、いったいどれだけの要素が反映されているのか……。

 時は古代中国、殷の時代末期。第三十代の王、紂王(レオン・カーファイ)は九尾の狐が化けた美女、妲己(ファン・ビンビン)に魅了されている。彼は操られるままに暴政を行い、周辺への侵略を開始。人間界では魑魅魍魎が跋扈し、乱世が始まろうとしていた。事態を重く見た仙界最強の道士にして周の軍師、姜子牙(きょうしが)(ジェット・リー)はそれを阻止しようと楊戩(ようせん)(ホァン・シャオミン)、哪吒(なた)(ウェン・ジャン)、姫雷(きらい)(ジャッキー・ヒョン)らを遣わす。一方、妲己もすでに謀略を張り巡らしていて神と魔の戦いが始まる。(Wikipediaより)

 始めに明言しておくと、この物語非常に中途半端なところでぷっつりと途切れて終劇している。続編を大前提として制作し、その予定がぽしゃったのか、まさか物語の余韻とか考えてここまでとしたのか。どちらにせよ確実に言えるのは、非常に不誠実な映画であり、見るに値しない作品になったと言うこと。

 またさらに、自分の分類としてこれは「映画ではない」と思う。
 
 映画の定義は人それぞれにあるだろうが、「映像でなにがしかを伝えようと目指し、そのために様々な要素をより合わせたもの」だと自分は考えている。この線引きで今作を位置づけると、まずこの作品は何も伝えようとしていない。その場その場の映像的快感を担当がばらばらに追い求め、つなぎ合わせたものである。

 映像単体でみると、かなり頑張っている。衣装デザイン、舞台となる建築物のデザイン、ダイナミックなアクション、そつなく画面を統一しているCG技術。正直に言って、(かかっている予算が違うのだろうが)邦画のクオリティを軽く上回っている。

 しかし、それぞれの映像がつながって形にしたものは、価値においてマイナス、ゴミである。
 このような言い方は大人げなく、関わった人に失礼とも思うが、この作品を認めることの方が関わった人たちへの侮蔑になると思う。
 各スタッフが才能と時間を費やした努力を認めるからこそ、きちんと評価しておくべきだ。
 
 各シーンはどこかで見た映像の焼き直しである。
 指輪物語、スターウォーズ、アベンジャーズ、インモータルズ、ヒューゴの不思議な発明――。
 見ているとたくさんの作品が想起される。映画以外にも日本の漫画からの影響も大きそうだ。
 これだけの技術があるのなら、新たな映像美を描くことが出来たのではないだろうか。
 
 センスが厳しい。
 センスについてとやかく言うのは言う方にとっても怖いものだが、今作は中国独特ののりがきつすぎる。
 かわいいはずのちびキャラは完全に気持ちの悪い存在であり、見ていて不快感しかない。
  ※パクられた中華ドラえもんの気持ちの悪さを想起してほしい。
 ジェット・リー始めとする大御所の演技のバタ臭さも本当に厳しく、レッドクリフのような寒さである。
 お寒い会話のやりとりにやたら尺を取るのもやめてほしい。
 いくら見た目を良くしても中国の映画のよくある感じがそのままだ。
 
 話が無意味。
 ご都合主義というのもはばかられるほど、物語に意味がない。
 なんらつじつまに頓着せず、好きな場面だけ作っている。
 このような姿勢だから、ラストを中途半端にしても平気なのだろうか――。
 
 カメラ割りがひどい。
 半分以上のレイアウトで水平線を斜めにしているのではないだろうか。
 エロゲームのイベント絵かと言いたい!
 カメラは虫のようにぶんぶん動かして定まらないし、高速アクションのカットつなぎももうワンテンポ待てば気持ちよいだろうに、といったずれが常につきまとって不快。
 
 特に自分がきつかったのは、全編ににじみ出るモラルや連帯感の低さ。
 各人好き勝手にやっているだけで、協力とは他者の力を利用することと言う認識。これは敵も味方も同様。
 シナリオとしておもしろいからそうなっているのではなく、息を吸うように自然に前提になっているのである。
 ――古い映画を見るとき、今ではあり得ない他人種や異性への扱いを見ることがある。時代が違うのだから前提となる文化基準が異なるのも当然。これを糾弾するつもりはないが、あまりにかけ離れていると見ていて気分が悪くなるのも確かである。
 この作品を見ていると、中国の文化と我々の文化は相容れないのだろうと強く感じる。
 時代の違いのせいでないのなら、これは何による差異なのだろう。
 中国の民度がまだ発達途上である所以だろうか。国の制度の違いだろうか。
 ともかく大きな違いを突きつけられて、人類皆兄弟なんて遠いよなと素直に思えた。
 
 最後にも改めて書くが、中途半端なところで終わる映画なので、見ない方がいい。
 
 

0 件のコメント:

コメントを投稿