★★★☆☆
~淡々と悲惨~
1984年の英米合作映画。1970年代のカンボジア内戦時現地で取材をおこなった欧米ジャーナリスト達と案内人として働いた現地人通訳の数奇な運命を描く。原作はピューリッツァー賞を受賞したノンフィクション作品。
アメリカ人ジャーナリストのシドニー・シャンバーグ(Sydney Schanberg)と、現地の新聞記者であり通訳でもあるディス・プラン(カンボジア人)はカンボジア内戦を取材している。しかし、カンボジア内戦はポル・ポト率いるクメール・ルージュが優勢となり、アメリカ軍が撤退を開始する。この時、シャンバーグはプランの一家をアメリカに亡命させようとするが、プランは仕事への使命感から妻子のみをアメリカに逃がし、自分はカンボジアに残ることを決意する。そして、シャンバーグとプランは取材活動を続けていく。<Wikipediaより>
一応主役はシドニーと言うことだが、物語の後半全てはプランの物語。過酷な労役の中で死と隣り合わせに生き抜いていくプランと、無事米国に帰りなんとかプランの救出を目指して活動するシドニー。物語全体で観れば、プランが主人公だというのが素直な感想だろう。
戦争のまっただ中にある戦闘だけではない風景というものは、兵士を追うだけの物語ではなかなか描きにくいものだ。今作は無力なジャーナリストの行動を追う映画なので、波のように押し寄せる軍隊を間近に感じながらも奇妙に落ち着いた日常生活が展開される。彼らは基本的に、危険すぎるラインは超えないよう、ギリギリのところで取材を繰り広げるわけである。
自ら望んでこの場に訪れ、機動的に動ける「外様」である欧米の彼らはまだ良いだろうが、戦火に自分の住む街が包まれる住民達の悲惨さが際立つ。半分ジャーナリスト、半分現地人であるプランはこの意味でも最も重要な存在であり主役である。
プランを演じたハイン・S・ニョールは俳優経験などないカンボジア出身の元医師ということだが、実際に内戦に巻き込まれて強制労働をさせられていた実体験のすごみなのだろうか、苦難の中に陥るほど演技に輝きが増す。結果アカデミー助演男優賞を獲得となり、異論があるとすればなぜ主演男優賞ではないのかという点であろう。
戦場の風景を描くにあたって、センチになり過ぎることなく、また強烈ではあるが露悪趣味にも走り過ぎない絶妙のバランス。淡々と描かれる、という言葉がしっくりくる。作り話ではなく現実にこの風景があり、それは見る者の現実と地つなぎなのだと感じさせてくれる。
ただ、一つだけ腑に落ちないのが音楽。
オーケストラはもとよりテクノや民族楽器まで総動員で構成されているようだが、自己主張が過ぎて鼻につくのだ。
映画の要素として常に悪目立ち。音声が混線したのかと疑うくらい場にそぐわない音の連発だ。
残酷なシーンで明るい曲、またその逆など、これは別段おかしくない。ミスマッチが生む絶妙な感触という物がある。
だがこの映画の場合残念だがそうではないように思える。違和感が強すぎて思わず笑いそうになるくらいだ。アニメ「寄生獣 セイの格率」もこんな感じだった……。
映画に関わったことのないミュージシャンを呼んでしまって、妙に張り切ってトンチンカンなBGMをつけまくってしまったという感じ。
これは頂けない。
最後にジョン・レノンの「イマジン」でまとめてしまっているが、ここだけベタなのもなんだかな~~。
※音楽担当は「マイク・オールドフィールド」で中には今作の劇伴を絶賛する人もいるが、自分は上記が正直な感想。
色々な意見が合って当たり前だと思います。
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