2009年2月4日水曜日

緋牡丹博徒 花札勝負

 

★★★★★ ~躍動する静止画~

ローアングル。
フィックスショットのみ。
パンフォーカスではない縦構図。
長回し。
中心を外した画面構成。
フェードイン、アウトを使用しない編集。

ざっと書き出してもこれだけの強い特徴がある、あくの強い映画。
それぞれの効果が組み合わさって、格調の高さと圧迫感を保ちながら、小気味よいテンポの良さを実現している。
この相反する要素を同居させて成り立っていることが、すでに、希有。
フィックスショットのみなのに、画面の狭さや、不自然な印象が無い。ワイド画面を活かした、もはや絵画的なレベルの画面構成。それを動的につなげてみせる各種技巧の積み重ね。
強引なつなぎを堂々と行うことで、そのショックを映画的な効果につなげている。カットの不自然さがその場の臨場感を打ち出している。
緻密と大胆が、見事なバランスで画面に定着された、絵画のような美しい映画。
以下分析メモ。

○画面の品位と美しさのために
・低いカメラ視点
 自然あおりが多いことになり、画面に圧迫感、安定感が生じる。
・フィックスショットのみ
 パンや移動カメラがない。
・絵としての縦構図
 手前、奥にぼけた事物を配置することで画面の広がりを出す。
・ぼけたままの演技
 ぼけたままで事物に演技や意味を持たせる。
 意識の集中点は維持したまま、回りの状況をまろやかに説明する。
・画面左右への要素ずらし
 画面中央に主要素を配置せず、意図的に左右に大きく崩して配置。
 絵としての美しさが際だつ。

○フィックスショットの静的な印象の中でテンポ、緩急をつけるために
・アクションカットの多用
・マルチカメラ
・正面アングルの多用
・イマジナリーラインの無視多用

○独特のテンポを生み出すために
・全てカットつなぎ
 フェードイン、フェードアウトが存在しない。
・唐突なつなぎ
 本来フェードイン、フェードアウトを使う部分を逆に突然の会話でつなげる。
 これでもつながるから不思議。
・相手場所時間で即飛び
 情況が整えば一気に場面を飛ばす。
・時に情緒的
 他の部分をばさばさ端折っているので、丁寧に描く部分が際だつ。
 細切れにならず情緒的な部分がバランス良く入り交じる。

0 件のコメント:

コメントを投稿