★☆☆☆☆
~本当に泣ける映画~
名前はとにかく有名でしたがこれまで縁無く、原作も、ドラマも見ず、この映画で初めて内容を知ることになりました。
TVのスペシャルドラマといったクオリティです。
予算や、期間や、クライアントの要望や、そういう制限が全編ににじみ出ていて、それを逆手にとってプラスに変える手腕が、制作者になかった。
そういう、良くある凡百の映画なのだと思います。
手を抜いているわけでないのは感じますが、その分、スタッフの力量のなさだけが目について、みていて寂しくなってきました。
台詞回しや語彙に一瞬惹かれるものを感じたので、原作の方が楽しめるのかも知れません。が、今更読もうと思う意欲も、この映画を見ただけでは特に湧いてきません。
ノスタルジックな雰囲気はよいと思いますが、だからこそ、細部の乱暴さが目について、素直に楽しむことが出来ませんでした。
具体的にいくつかあげるなら。
なぜ二人が恋に落ちたのかが描かれていない。
「なぜ忘れてしまうんだろう……」なんて言っていた主人公が、ぬけぬけと「忘れることが出来ない」とほざく。←ここで殺意を覚えるとともに、大笑いしました。
大切なテープを、まだ人が沢山通るであろう学校の玄関に座り込んで聞く。←自分だけの集中できる場所で聞くでしょ。時間が惜しいなら、せめて立ったままにしてよ。
想い出の場所、体育館に、土足で上がり込んで雨で水浸しにする。←元バスケ部としては激昂もの。誰かこいつを捕まえろ。
致命的なのは、恋人の名前の漢字を、知らない。←これだけは片恋マニアとして許すことが出来ません。よほどのモテ人間でなければ、相手の名前の漢字位、好意のかけ始めに調査必須ですよ!!
こういった、人となりがにじみ出る所に留意せず、補填するように台詞ばかり重ねて。
しかも台詞は、文章で読むのには良いのかも知れないが、語って聞かされるとどうにも陳腐。
二人のやりとりはその時その時のシチュエーションだけを楽しむ、現代的な恋のゲームに過ぎないと感じてしまう。そんな二人に、感情移入は出来ません。
セックスやキス抜きなら純愛?
ひたむきな、継続的な想いが、純愛でしょ?
結局ポケーッとなんもかんも忘れて、別の女と婚約。会社の同僚にも好意を受けているらしい。
ついには今の女連れで旅行。目的地かどうかも分からん、車がエンコして止まった場所で、遺灰をまいてさあ片づけ終わり。←遺灰持ってるのも、納得させるためにはもうちょっと伏線が必要でしょう。
そんな場当たり的な彼は、ただの気持ちの悪いハッピーマニアです。
電車の中で所かまわずべたつくカップルと同じで、はっきりと殺意を覚えます。
空港でわめく彼は、台風の接近を知っていながら、飛行機の欠航を予測することも出来ない、きちがいです。
彼女のことだけ考えていたから頭が回らなかった?
それは、ただ自分が、好意に逃げ込んでいただけの、怠惰だよ。そうやって気持ちよくなってるだけのナルシスト。しかも回りに八つ当たり。それもきっとポーズに過ぎない
あんなん見かけても、誰が助けようって思うもんか。さっさと後を追って死ね、ぼけ。
かように、荒涼と心の荒れる映画鑑賞となってしまいました。
これまで「Armageddon」で泣いた人間は敵だと思ってきましたが、原作を読んで、感情移入が出来ている状態で観たのならともかく、この映画だけで涙を流すような人間も、はっきりと敵視する必要があります。
そして、そういう人が大量にいるのだろうと。
その意味で、本当に泣きたくなる映画でした。
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