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2021年8月15日日曜日

クライムダウン

クライムダウン[レンタル落ち][DVD] 

★★☆☆☆
~出落ちで終わると思う無かれ~


 2011年イギリス制作のサスペンス映画。日本未公開だが各種ネット配信に載っていたので割と見た人がいる印象。自分は午後ローで。
 原題「A Lonely Place to Die」で「死ぬための孤独な場所」といったところ。
 邦題はクライムが山登りの「climb」なら「手足を使ってよじり降りる」と言う感じだが、犯罪である「crime」ともかけてるのかな。

 スコットランドの登山を楽しみに来た5人の男女。広がる山岳高地をトレッキング移動中に異様な「声」が聞こえてくる。
 元をたどると林の中の一角にパイプが突き出ており、まるで空気穴のよう。声はそこから響いていた。
 状況が分からぬままあたりを掘り起こすと木の箱。その中には幼い少女が――。

 
 山登りの5人は二つのカップルとあぶれた男一人。カップルのうち一つは付き合いだしたばかりのようす。その女性とあぶれ男とは山登りのコンビとしてのつきあいは長いようで――。
 上記のような配置が割と丁寧に説明されるので、男女の恋愛駆け引きも要素に入ってくるのかなとのんきに構えていたら、少なくともそういった方向をシャットダウンする展開の続出。え~! そうなっていくの?
 
 といっても落胆するというより流れに乗ったまま楽しむことが出来る。少女が埋められていたというのは今作のフックとして最も強いが、それにまつわる謎(どうしてあのような場所に埋められていたのか)は早々に回収。これは出落ちのがっかり映画かと心配するが、逃走劇の形態がどんどん変化、その規模もどんどん膨らんでいき、これはこれで楽しめる。最後には祭りに沸く町になだれ込み、警察官を巻き込んだ大量殺人&火事と予算内で行けるとこまで行ったる感じが気持ちよいほど。

 少女埋没をきっちりフックとして設置、これは宣伝活動でネタバレになることを前提にした上で全体を組み立てているように感じる。
 
 なるほど、見終わった後にどうしても思いやってしまう大きな、もしも――。
 ――もしも、あのとき彼女を掘り出さなければ――。
 
 誰が一番の犯罪者なのか。事の発端の犯罪者はもちろんだが、命を至上としたとき、最も被害が少なかったのはどういう選択だったのか。
 いろんな食い違いと偶然……。大きな流れの中では悪人の選択も、善人の選択も、等しく意味が乏しい物なのだろうか。
 
 映像的にはスコットランドの高地の森や川が美しいが、あまり予算が無かったのか撮れるだけ撮っておいてつなげると行った雰囲気。テンポを生み出すためのスローモーションは上手に使ってあると思うがいささか頻繁すぎてだれ気味なのが残念。

 

 


 

2021年5月31日月曜日

96時間/レクイエム

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~もはや「96時間」関係ない~
★★☆☆☆


 2014年のアクション映画。米仏制作。2008年の『96時間』。2012年の『96時間/リベンジ』に続く三作目で、おそらく最終作。
 邦題の「96時間」は誘拐事件被害者の生存可能性が高いといわれる制限時間のことで、一作目はどんぴしゃだが、二作目三作目は誘拐主体では無いので苦しい。そもそもシリーズの原題は「taken」であり、捉えられたとか奪取された、という意味だろう。
 制作リュック・ベッソン、監督オリヴィエ・メガトンで二作目と同じ布陣。ということは……。
 

96時間/リベンジ

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~失われた「なまはげ」感~
★★☆☆☆


 2012年のアクション映画。米仏による制作で2008年の『96時間』の続編。
 制作にリュック・ベッソンが関わっているのは同じだが監督は替わっている。
 前作は娘を誘拐された主人公が元CIA工作員の能力を120%発揮して猪突猛進。法から解き放たれた獣が悪漢を容赦なく排除していく様はまさに爽快。分かりやすい構成で落ちも小気味よく、魅力あふれる一作だった。こちらに自分の感想があるので合わせて読んでいただくと通りが良い。
 
 この「娘を救うため」という強力な目的を続編ではどう処理するのかという点が興味深かったが、どうもパッとしない。
 

2020年10月16日金曜日

ケープ・フィアー

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☆☆☆☆
~ロバート・デ・ニーロ48才の肉体美~


 1991年アメリカ。ロバート・デ・ニーロ主演のマッチョおっさんの嫌がらせ復讐劇。
 1962年の「恐怖の岬」のリメイクということで、オリジナルの役者が何名もカメオ出演。犯罪者が警察官になったり、なかなかしゃれた配役となっておるらしい。
 

 マックス・ケイディは16才の少女に対する暴行障害による14年の服役を終えて出所。刑務所での日々は非常に辛いものであり、それに耐えるために文盲を覆して読書家になり、体を鍛えて筋骨隆々になっていた。
 マックスは当時の担当弁護人サム・ボーデンが弁護業務に手を抜いたために長期服役になったと思い込んでおり、14年の間に復讐の念が凝り固まった危険な人間としてサムの前に現れた。
 犯罪すれすれ、もしくは露見しない犯罪による嫌がらせをくり返して、サムに迫っていく。やがてサムの娘の存在を知ったマックスは演劇授業の講師を偽って娘に近づき、15才の少女の好奇心につけ込んでその心の中にまで忍び寄っていた――。

 ぎっちり張り詰めた全身の筋肉。体中に彫り込んだまがまがしい入れ墨。当時48才のロバート・デ・ニーロが演じるマックスの必要に応じて知性と粗野を切り替える犯罪者の存在感がすごい。こんなのが側に現れたら百戦錬磨の弁護士も狂気に染まっていくだろう。さすがだなと見ほれてしまう演技。
 
 しかし、作品全体としてみると感情移入できる登場人物が誰もいないのが辛い。弁護士サムはマックスに恨まれても仕様がないような状況だし、インテリらしい他力本願の卑怯な手段ばかり使ってとても応援できない。娘はこまっしゃくれた生意気さで、うかうかと危険に入り込んでは無自覚に周囲を危険におとしめていく。えらい目に遭うと嬉しくなるほどのヘイト稼ぎキャラ。他に弁護士仲間や警官、私立探偵まで出てくるが、応援したくなる人物は居ない。彼らに比べれば適役であるマックスの方がまだ応援できる。
 サムの妻リーが娘を想う気持ちからけなげに体を張るシーンがあり、そこだけがまともな人間に感じた。
 誰にも肩入れできない映画という物は、本当に視聴者が孤立して寂しくなる。どんなに名演技をされてもこれでは楽しむことは出来ない。
 
 マーティン・スコセッシ監督による演出もどうもいまひとつ。高速ズームインによるカッティングが多用されているが、まあ、今見るとコメディっぽく感じてしまう。最近インドドラマのズームインをくり返すこてこての演出(「インドドラマ くどい演出」とかで検索すると引っかかるよ)が一部で話題になっているが、その源流はここなのではないかと思うほど多様されている。
 
 知的な犯罪者が弁護士を合法的に追い込んでいく様が見事だったので、暴力路線に切り替えずにそのまま復讐完遂して欲しかった――。
 

 

2020年9月4日金曜日

タイトロープ

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★★★☆☆
~性と愛と罪~


 1984年の米映画。クリント・イーストウッド主演のセクシャル刑事ドラマ。 
 
 

 ニューオリンズ 市警殺人課のウェス・ブロック刑事は離婚後、アマンダとペニーという2人の娘と暮らしていた。歓楽街フレンチ・クォーターで働く赤毛の娼婦が殺された。娼婦は手錠をはめられ、前後から犯された上、赤いリボンで首を絞められていた。美女殺人の2人目の犠牲者だった。<WIKIPEDIAより>
 

 暴力機械としての警察、その最前線に立つ男が狂気じみた暴力にさらされる女性と子供を保護するために奔走する。犯人は性風俗に関わる女性ばかりを惨殺。それを追うブロックも次第にその狂気にあてられていく。お金を払うことで女性をものとして扱う権利を得る様々な性産業を目の当たりにしながら、同時に彼女たちを守らなければならないという社会的な要請、つまりは本能と理性に挟まれて主人公は懊悩する。離婚して男やもめになった女ひでりという設定もなかなか熱い。まさに張り詰めたロープの綱渡り。


 女性を性犯罪から守る啓蒙活動を仕事とするベリルというヒロイン役が出てくるが、本作における真のヒロイン(達)はブロックの幼い二人の娘だろう。性的欲求と切り離された愛情。守りたいと願う純粋な気持ち。まだ幼い次女とローティーンほどに見える長女(家事全般をこなしているので言動が大人びている)、そして成熟した女性としてのベリル。年齢を埋めるようにして配置された女性陣、それを襲おうとする男(犯人)と守ろうとする男。子供を息子にせず二人とも娘にしたあたり、男と女の立ち位置の違い、隔絶と理解をテーマにしているのだろう。


 犯人を特定して徐々に追い詰めていくわけだが、特にミステリー要素はない。最初の現場から「怪しい足下」として犯人は登場しており、各所でも同じように示される。「近くにいてブロックの様子をうかがっている」ということをねっちり積み上げていく手法で、得体の知れない者が具体的に近くにいるという緊迫感を盛り上げている。細かなミスリードというか、気の利いた演出を各所に盛り込んでおり映画演出の才能を感じさせる。
 特に記憶に残るのは犯人が扮したピエロがブロックの次女に風船を手渡すシーン。風船を持ったままブロックの元に戻っていく娘。それを凝視するピエロ。なにかの弾みで手を放してしまい風船は屋根の上へと舞い上がっていく。視線で追う登場人物達――。そうは見えないのだが、爆発物など何か仕掛けがあるのではと勘ぐってしまうカメラワークで、結局何も起こらず風船は舞い上がっていく。物語としては進展のない緊迫感を積み上げるシーンなのだが、それだけではないロマンを感じる。犯人としては自分の獲物を近くからじっくり見定めようとしたのかも知れないが、舞い上がった風船を目で追う間、犯人も狂気から解放された普通の人間だったのかも知れない。本来子供らしさを象徴するふわふわとした風船。そのとなりに猟奇的、性的な存在を配置して奇跡的なバランスをとっている、これぞセンス・オブ・ワンダー、名シーンだと思う。


 午後ロー枠での放送を見たのでひょっとすると性的描写はもっと激しいものだったのかも知れないが、作品としては過不足ない分量だと思う。
 全体に重々しく陰鬱でデビット・フィンチャー監督の『セブン』と同じ空気を纏っているが、着地点はこちらが遙かに人道的でむやみに傷つけられることもないので薦めやすい。セブンは気になっている女性と見に行って最悪の雰囲気でそのあとお茶した記憶があるが、こちらはこちらで性的な描写も多いので気まずさは同じくらいだったかもしれない。
 
 

2020年7月17日金曜日

ミッシングID

ミッシングID コレクターズ・エディション [Blu-ray]
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★★☆☆☆
~まるで角川のアイドル青春映画~

 2011年の米映画。彼女と青春逃亡劇。
 

 高校生のネイサンは悪友と悪さをしながらも、裕福な家庭で不自由なく暮らしている。しかし繰り返し見る謎の女性の夢、抑えきれない怒りの衝動など、彼自身はティーン特有の悩みを抱えているようである。
 好意を寄せながら疎遠になってしまっていた向かいに住む同級生のカレンとの共同課題に楽しく取り組んでいた折、インターネット上で行方不明となった子供の情報を呼びかけるサイトを見つける。子供の写真と成長した予測CGが掲載されていたが、その一人がネイサンと非常に似ている。サイトへ連絡を取ってみるが、つながった先はハイテクを操る武装集団だった――。

 主人公を演じるテイラー・ロートナーの顔が気になって仕方がない。冒頭に三人の若者が出てきて、がたいの良い厳ついゴリラ顔は脳筋友情キャラかなーと思ったらまさかの主人公でびっくり。会話の中で自分の子供時代の写真を見て、あごが一緒だ! という下りがあり、突っ込み可能のチャームポイントなのか。テイラーは映画『トワイライト』シリーズの主要キャラとして人気があり、狼男役だというのだが、確かにイメージとしてぴったりである。今作の企画自体が彼の人気を中心に据えたもののようなので彼が主演であることはいかんともしがたい。角川のアイドル青春活劇といったところか。

 主人公の出自を巡る冒険となるが、序盤~中盤にかけては誰が味方で誰が敵なのかが分からないスリリングな展開を楽しむことができる。友人の小遣い稼ぎや主人公の受けるフィジカルトレーニングなど、後に続く伏線も丁寧にちりばめられる。主人公も年相応の不良程度で常識外れに強いわけでなく、ヒロインも足手まといにならない快活さ。細かい点かも知れないがこういったバランスが、何か実際の高校生の身の上に降りかかったことであるような雰囲気を漂わせている。
 終盤状況が見えてくると張りぼての仕掛けが霧から出てきたように、設定の無茶具合が目についていたたまれなくなる。本当の父親の立ち回りには腹が立つというより呆れてしまう。それに全てが振り回されていた構図なので作品自体がどんどん安っぽくなっていき、凡百の映画の一つとして終幕する。

 映画の中でアメリカの高校生の様子というのを見る機会が多々あるのだが、実際はどんな感じなのだろうか。
 今作でも親が留守の生徒が家を開放しそこで大パーティーが開かれるという導入から始まる。そこには大学生なども訪れお酒を飲んでプールに飛び込み大騒ぎであるが、本当にこんなパーティーが普通の高校生の体験に含まれるのだろうか? 反対に鬱々としたオタク高校生の様子を描いた映画も多い。一体普通とはどのくらいのラインなのだろう。勝手にこの辺りかなと思うのはサム・ライミの『スパイダーマン』シリーズのピーターの感じ。自分の居場所を守って、その中で好きなことを楽しんでいる感じ。学校カーストの上にあこがれはあるが、それほど重要とも思っていない。良く描かれるダンスパーティなどには無縁。
 邦画の中で普通の高校生の姿が描かれているかというと、確かにそうではない。文化祭の後夜祭なんてイベントもなかったし、本当の姿は洋の東西を問わず基本的にひどく地味なのだろう。それでは映画になりにくいので両極端によるのだと思われ、確かにそうならざるを得ない。
 なんだか寂しい気分になってきたが、自分の高校時代を思い起こせば、一人称で見る全ては圧倒的な臨場感でなかなかドラマチックだったと思うし、同じクラスで間近に見る女子はこの世でもっとも魅力的な存在達だったよ。

2020年7月15日水曜日

その女諜報員 アレックス

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★★☆☆☆
~最悪の邦題~

 2015年の米映画。凄腕美人犯罪者(けっこうドジ)の逃亡劇。

 南アフリカ、ケープタウンの銀行を襲った四人組の犯罪者。
 最先端セキュリティを力業で突破し、貸金庫からダイヤなどの奪取に成功するもリーダーであるアレックスの顔が人質達に見られてしまった。
 国外脱出のための準備を進めるが、貸金庫に入っていたUSBメモリに重要情報が入っているらしく、素性の知れない武装集団に襲われる。どうも今回の犯罪、様々な裏がありそうである。
 アレックスの生き残りをかけた戦いが始まる――。

 ともかく冒頭のつかみが悪すぎる。世界に引き込んだり、作品の雰囲気やフィクションレベルの提示として非常に重要な部分なのだが今作についてはここが一番ひどい。
 銀行襲撃のシーンなのだが犯人達は全身同じ防具に身を包んで顔もまったく見えない。声もボイスチェンジャーで判別不能。謎のLED正面が全身についておりその色が違うためそこで判別しろということなのかも知れないがいやいやそれでは分からん。何人組かも分からん。仲違いの緊迫するシーンもカット割りが良くないので誰がどうしてどうなったかが壊滅的に分からん。
 劇的にアレックスが登場するシーンを演出しようとしているのだろうが、端的にいって失敗しており、それどころか冒頭の横柄な態度が初印象になってしまいネガティブスタートの始末。

 実はこれ以降の展開やテンポはなかなか良い。その判断はないだろうという展開ばかりだがアクションシーンが五月雨に続いて退屈させない。アレックスの素性について判明することで解けていく伏線もあるし、キャラクターそれぞれがきちんと自分のポリシーを持って動いているので生きている感じがする。

 アクション映画としてみると主演のオルガ・キュリレンコがアクション映画の主役としては厳しい。動き自体はそれなりだが、格闘のプロフェッショナルには見えないし、がんばっている一般ヒロインというのがやっとだ。

 最も腹が立つのが邦題。原題は「Momentum」。
 実は2014年に日本で『その女アレックス』というミステリーが日本で発売されてヒットを飛ばしている。この作品と本映画はまるっきり関係がないが、見ての通り見事に紛らわしい題名となっており、2016年に日本で公開されたタイミングと考え合わせても誤認視聴を狙ったものであろう。あまりに糞であるが、弱小配給会社の必死の一手というところか。――にしても本家は映画化もされていないので受けた被害はかなり大きいのではないだろうか。別物だと理解していない人も多いだろう。
 さらに余分に足した「諜報員」がきっちりネタバレで、作品中盤までひっぱている謎をすでに開陳している始末。
 自分の知る限りひどい邦題トップスリーに入りそうである。
 
 結末は続編に続くような雰囲気で「戦いはこれからだ!」となっているが2020年現在では動きがないようで、まあ今後もないだろう。

2020年6月30日火曜日

フェア・ゲーム

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★★☆☆☆
~ちょっと豪華な海苔弁映画~

 1995年の米映画。美人弁護士守護アクション。
 

 マイアミで活躍する女弁護士のケイトは、ある日突然ジョギング中に命を狙われる。事情聴取にあたったマックス刑事とはそりが合わず署を出るが、その夜、マックス刑事の目の前でケイトの家が爆破される。そのまま二人は暗殺集団から逃げるが、途中、護衛にかけつけた仲間の刑事が、次々と殺されていく。<WIKIPEDIAより

 今となってはそりゃないだろうというハイテク描写が多く登場。
 屋外から煉瓦造りの家や列車をのぞき込み人間の位置を確実に表示する温度センサーカメラであるとか、ありとあらゆる所(警察署や民間の警備会社も余裕)にハッキング出来るスーパーハッカーとか――。

 登場人物の行動もよく分からない。スーパーハッカーがいるのになぜか海底ケーブルに結線して銀行のATM回線に入り込む。銀行のお金を勝手に盗むのかと思いきや、自分で預けたお金を引き出すだけ。わざわざ海底にATMを開店させるのはなぜなのか。

 敵組織はロシアの諜報部隊崩れなのだが、「海底ケーブル作業をしている船が離婚裁判の資産として請求されそう」⇒「弁護士を殺そう」という原始人かよという短絡さでわざわざ上陸して襲ってくる。とった手段がプロしか使わない高性能爆薬による家屋丸ごと爆破。なぜいちいち足がつく目立つ方法ばかりとるのか。しかもたまたまベランダに出ていたターゲットには逃げられる始末。
 警察内部に協力者(主人公側から見ると裏切り者)もいるし、FBIになりすますし、ヘリコプターまで繰り出す始末。もう町中で戦車を乗り出しても驚かないくらいのはちゃめちゃ具合だが、ロケットランチャーをぶっ放したりしているし同じようなものか……。
 
 このような荒唐無稽だが映画としては何があってもおかしくないという意味で先が読めない楽しさがある。舞台がどんどん変わっていくのもいい。最もすごいのが爆破シーン。冒頭の家の爆破から最後の船の爆破まで規模が半端ない。CGで補正しているのかも知れないが、1995年の映画であるし、基本実写だと思われる。これは相当気合いが入っている。
 もちろんご期待通りの美人弁護士と辣腕刑事のロマンスもあるしきっちりまとまった海苔弁当という感じ。乗ってる白身魚のフライがとても大きいので満足感もあるよ。

 1986年のスタローン主演映画『コブラ』と今作は同じ原作『逃げるアヒル』を元にした兄弟作品となるらしいが、話はまるで違っておりどういうこっちゃ。

2020年1月21日火曜日

氷の微笑

氷の微笑 [Blu-ray]

評価不能
~そのシーンを削るか!!~
 
 1992年の米映画。「ロボコップ」「スターシップトルーパー」でおなじみポール・バーホーベン監督の劣情サスペンス。
 午後のロードショーで見たが、体感出来る範囲でカットによる欠落が多いので評価できないとした。

 
 ナイトクラブ経営者が自宅ベッドで殺害。情事のあとの殺人のようで、真っ先にその恋人だったキャサリン(シャロン・ストーン)に容疑がかかる。
 担当となった刑事ニック(マイケル・ダグラス)は相棒と共に捜査を開始するが、キャサリンの奔放な言動とその美貌にベテランならではの判断力も影響を受けていく――。

 魅力的な悪女に巻き込まれて自分のスタイルさえの見込まれていく恐怖と快感。
 その必然性に圧倒的な説得力を与えたのがシャロン・ストーンの画面からほとばしるエロさ。
 特に有名なのは尋問にかけられ、男たちの前で質問を受けるキャサリンがゆっくりと、見せつけるように足を組み替えるシーン。男どもは鼻薬ならぬピンクのカーテンを目前に貼られてどぎまぎ状態。
 さすがの午後ローはなんとこのシーンをトリミング! 足を組み替える膝辺りしか見えずに全然エロくない。R-15指定なので該当部分が処理されたのだと思われるが、それならこの映画を放送しなければ良いのにと思わずにいられない。
 
 それを差し引いてもこの映画自体、時流の先端に乗った勢いで見るべきものなので、今見るとキャサリンの時代に合わせた風俗的な魅力は薄まっている。その目隠しが効いていない分、設定や展開のぞんざいさが目についてしまい、バーホーベン監督の野暮ったい演出も気になる。
 昔見た当時は誰が犯人なのか考えたりしたが、今見ると適当な演出の結果良い感じで眩惑が生じていたのだなと感じる。
 これは要素のバランス、その駆け引きによって成立した均衡ではなく、どちらかの推論はもう一方の推論を完全に否定できない情報しか出ていないことと、最後に後先考えないイメージシーンが挿入されているから生まれた眩惑だということ。
 このポール・バーホーベン監督、作品の最後に監督なりの見解(どんでん返し)を入れるのが大好きなのだが、脈絡がないのでどうも一般に理解されがたいという特性を持っている。
 「スターシップトルーパー」では、映画全体が戦意昂揚のためのプロパガンダだったという事になっている。
 「トータル・リコール」では、最後のホワイトアウトが夢からの目覚めを示唆し、冒険すべてが夢だったことになっている。
 本作ではそれがベッド下のピックで、ならばこのあとどうするねん、という当然の疑問は無視した雰囲気シーンだと言える。
 
 ついでに書き上げると、午後ローはともかくシーンカットの量と大胆さがすごい。
 この映画でいうと通常版で123分。このうちスタッフロールが5分とみても118分。2時間のうち7回CMがあるとして、1回に2分とすると正味の放送時間は106分。12分はカットされている計算になる。10%程度。少なく見積もってもこれだ。
 このような放送で★をつけられるのは実に製作者としては不本意だろうと思うが、見る人にとってはそこまで意識は回らず判断するだろう。
 地上波の無料放送で見る映画など、基本無料ゲームの無課金プレイヤーと同じで、本来の楽しみの枠外にあるということなのだろうか。
 
 自分は誰かのチョイスによってかってに放送される映画を見るのが好きだ。
 能動的な選択は自分の趣味に偏ってしまう、それをある程度紛らわしてくれるのがテレビ放送だと捉えている。
 かつてテレビで見てきた放送も、カットされて当たり前の状態だったと思うが、ビデオなりでノーカットを見てシーンが増えていた事に喜ぶことの方が多かったと思う。作品の成り立ちに関わるようなシーンのカットは行わず、意味を通しつつ時間は削るという職人芸が行われていたのだろうか。
 
 今、こういった放送は誰が、どのような覚悟でカッティングしているのか、その辺りの事情をぜひ聞いてみたい物である。
 

2019年12月18日水曜日

ランボー

ランボー [Blu-ray] 

 ★★★☆☆
~まさかのサイコサスペンス~

 1982年の米アクション映画。当時社会的な問題となっていた「ベトナム帰還兵」を主人公とした物語で、その後のシリーズにはない強い問題意識がある。
 

 ベトナム帰還兵であるジョン・ランボー(シルヴェスター・スタローン)はかつての戦友を訪ねてアメリカの片田舎を訪れるが、戦友は枯れ葉剤の影響とされるガンですでにこの世を去っていた。うちひしがれたジョンは食事をしようと街に立ち寄るが、それを見かけた保安官ティールズに不審者だと目をつけられる。街から追い出そうとするティールズに反発したジョンは保安官事務所に連行され他の保安官達に無体な扱いを受け、そのショックでベトナム時代のトラウマが蘇り、ジョンの破格の戦闘能力が解き放たれてしまった――。

 なんだか「ランボー」といえば敵地に単身乗り込んで無敵の大活躍を見せるヒーローアクションと思い込んでいたが、シリーズ第一作である本作にはそのような要素はまるで無い。ジョンは一方的に迫害されるいじめられっ子で、ひどい仕打ちを受け続けたあげく大爆発、とんでもない破壊を町にもたらすという内容。同情できるが、とばっちりの被害を受けた住民が多数いただろうという点でどっちかというと悪役
 
 保安官がジョンを追い払おうとするのが事件の発端となっているが、その気持ちも分かる。ジョンは(当然だが)スタローンの醸し出す何を考えているのか分からない危険性をびんびん放射しており、保安官としてはむしろ正しいとさえ感じる。町外れに車で送られてどっか行けと言われたところでジョンがそのまま立ち去れば良かったのだが、ここに至るまでのあれこれに堪忍袋の緒が切れたのであろう、いじめられっ子が少し意地をはって町に戻ってこようとしたのがまずかった。あとはお互いが不幸の連鎖であっという間に意味の無い戦闘に突入していくのである。

 戦闘描写は切れや迫力に欠けあまり良い出来とは映らない。爆発や炎上はここぞとばかりに派手だが、潔くドッカンドッカンするのみで溜めや爽快感はさほど無い。肝心のジョンの活躍も、相手が大して鍛練を積んでいない州兵や警察官なので一方的すぎて凄さが分からず、サバイバルゲームに興じるなりきり中年の印象。途中で拾った何かの袋から頭と手を出して腰紐でくくった姿で戦っているのも、ちょっと気を抜くとコメディーに見える。

 これは星一つにするしか無いかなあと見ていると、ラスト数分で一気に評価が切り替わった
 
 ジョンが昔の上官に心情を吐露するのだが、それが言ってみれば「いじめられた内容」の告白なのだ。ベトナム帰還兵であるジョンは帰国後も頭がおかしくなるほど社会に追い詰められていたのだ。
 これまでの鑑賞中ジョンに対して「なんだか頭のおかしい人に見えるなあ」「怪しいなあ」と感じていた自分の印象それこそが、実にこれまでジョンの味わってきた社会からの冷たい視線だったのである。一気にここまでのおかしな行動が「本当に頭をやられていたから」という裏付けを得て、そうすると何とリアルな演出と演技だったろう。
 
 そこらの中途半端な「どんでん返し」を標榜する作品などより、はるかに凄まじい回天であった。
 
 物語は何が解決するわけで無くこの主張を持って潔く終わり、最後の訴えが心に残る。
 この1作目は、以降のヒーローものとなったシリーズとは確実に異なる。気がつけば懐に入られていた恐怖と驚き。侮っていた相手に至近距離から一撃を食わされる感覚。まさにジョンが相手に対して行った反撃を視聴者も直撃されることになるのだ。
 
 この感想は、当時から感じ得るものなのか、色々拙く見える今だから感じる事なのか分からない。
 だが、茶化したり、バカにしたりする気持ちで無く、現在この作品はとんでもないどんでん返しを秘めたサスペンスになっている。



2019年11月29日金曜日

スペシャリスト

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☆☆☆☆
~質に関わらない価値~


 1994年の米映画。爆破アクションと言おうか、ラブロマンスと言おうか……。さまざま要素が絡み合うと言うより好き勝手に各要素をぶち込んだ闇鍋爆弾ロマンスと言ったところか……。

 元CIAの工作員で爆破による暗殺のプロフェッショナルであるレイ(シルベスター・スタローン)の元にメイ(シャロン・ストーン)から暗殺の依頼が入る。幼い頃両親を殺し、今や町の有力者然としている三人を殺して欲しい、と。レイは固辞するがメイに懇願され、まずは素性を確認するため監視を開始する。メイのあまりの美しさにに引きつけられてしまい結局依頼を受けることになってしまうが、暗殺対象の警護人ネッドはレイがCIAをやめる契機となった事情のある人物だった――。

 まず出てくる感想は「ぜんぜんスペシャリストちゃうやん!」という事になる。寡黙な戦士の雰囲気で描かれるレイだが、メイの声に惚れてのぞき見で姿に惚れて、ころころ転がされる童貞くさいおっさんといわざるを得ない。ライバルのはずのネッドも中二病っぽい「僕イカレテますよ」演技がきついだけでその戦闘力は未知数のまま終わる始末。巧みに自分の立場を切り替えてでっち上げの話で周囲を煙に巻きつつ、ありえない機転と実行力を発揮するメイこそが御都合主義の申し子としての「スペシャリスト」だろう。

 しかし、このような映画が生まれた背景も、これが正しいのだという主張も分かる。
 スタローンは前年1993年に「クリフハンガー」「デモリションマン」で再び注目を集めており、シャロンは1992年に「氷の微笑」でセックスシンボルとなっていた。この二人が主演し、それぞれの持ち味を活かした映画が作れれば内容はどんな物でも良いというタイミングだったのだろう。レイは筋肉トレーニングを怠らないマッチョな爆弾専門家という筋肉が邪魔では無いかという設定だし、メイはいかにも男を籠絡するミステリアスな女。この二人のベッドシーンがあるとなればもう勝ちゲームの様相だったのだろう。
 時流を捕らえて売れる映画を出すというのは非常に難しい事だと思う。確実で簡単な事のように思われがちだが、実現するには幾つものハードルが存在したことだろう。その代償として質が損なわれたとしても納得である。
 分かりやすくいうと、これは旬のアイドル映画で、両スターの共演という内容はノスタルジックな視線において、今も何らかの価値を持っている。

2019年11月4日月曜日

15ミニッツ

 15ミニッツ [Blu-ray]

★★★☆☆
~デ・ニーロがキュート~

 2001年の米国映画。常軌を逸した犯罪者がテレビメディアを巻き込んで起こす犯罪の一部始終が描かれるアクションサスペンス。
 
 ニューヨーク市警の顔としてメディアに頻繁に登場する有名刑事エディ。消防署員の犯罪調査係であるジョーディ。かつての犯罪仲間から分け前を回収するために現れたエミルとウルグ。
 三者三様のメディアに対するスタンス。それら全てを飲みこんでいくメディア、つまりは情報を希求する民衆。結局のところ「有名でさえあれば犯罪者だろうが刑事だろうが構わない」というルールに支配され、恣意的な情報に操られる社会に問題提議する内容となっている。
 
 刑事エディを演じるロバート・デ・ニーロがやはり魅力的。メディアを疎ましく思いながらも上手く利用するという老獪な刑事役にピタリである。取材で見知ったであろう女性キャスターとねんごろだが、いざプロポーズしようとしてなかなかうまくタイミングを取れない純情な側面もキュート。
 彼に比べると若手の調査員ジョーディはどうしてみ魅力が薄く感じられる。理想を掲げるものの、様々な状況に揺り動かされ、一貫性に欠ける行動をくり返してしまう。
 サイコ犯罪者エミルとウルグは行き当たりばったりながら、運なのか能力なのか、社会の隙というか痛いところを上手く突いて犯罪を繰り返していく。感情移入しようもないが、何をするのか分からない不気味さ、理解できないこだわりが生み出す悪の一貫性が吸引力を持つ。特にウルグが最初からずっと回しているビデオカメラの映像は、本人のサイコっぷりを遺憾なく表現しているし、シナリオ的にも重要な役割を担っている。暴力的映像が価値を持つテレビの事情を映画で見るという入れ子構造は、意味の有無はともかくめまいがしそうだ。

 作品としてはまさかの主要キャラ途中退場という意外な展開、この話この後どうまとめるんだよ、というとっ散らかり具合からの力業で何となくまとまったように終了。オチはともかく驚きは大きく、それだけで観る価値はあるかも。

2019年10月21日月曜日

ホワイトアウト

 ※Amazonの商品リンクです。
 
 ★★☆☆☆
~南極舞台の気楽なサスペンス~

 2009年の米国映画。クライム・サスペンス。

 米国の女性連邦捜査官キャシーは過去の事件のトラウマから一線を退き、僻地中の僻地、大事など起こるはずのない南極基地での勤務を続けていた。
 基地は冬期の訪れを目前に、帰国するメンバーの準備に追われている。慌ただしい雰囲気の中、雪原で軽装備の隊員の死体が発見される。それは南極で初めての殺人事件だった。残り時間が短い中、キャシーの捜査が開始される――。

 三十路も半ばで色気にあふれるケイト・ベッキンセイル(「アンダーワールド」シリーズ)が主役で、冒頭からシャワーシーンが入る。気取らない雰囲気の気楽なクライム・サスペンスである。
 南極が舞台だが屋外をさまようようなシーンはほぼ無く、主なやり取りは基地内。屋外はそれを取り囲む危険地帯として描かれ、宇宙船を舞台としたSFと構成が似ているかもしれない。
 
 最初に驚くのが米国南極基地の環境の良さ。南極基地などというものはプライベートな空間も限られ、それもビジネスホテルのような無味乾燥さというイメージを何となく持っていたが、キャシーの私室の豪華さはまるでホテルの一室である。捜査官だから特別なのかもしれないが、部屋に花(造花?)が飾られ浴室はガラス張りで自室内に存在。米国基準ならこのくらいありえるなとも感じるが、カルチャーショックだった。
 それなのに屋外はイメージ通りの苛烈さで、ギャップの表現という点では十分な効果を発揮している。
 基地の施設間移動でさえ、荒天だと遭難の危険性があるため道代わりにロープが渡され、そこにフックをかけて移動する。この感じは過去の名作「遊星からの物体X(ジョン・カーペンター版)」を思い出さずにはいられないだろう。
 
 そういった特殊な環境を舞台とした殺人事件! とワクワクするが、どうにもちぐはぐな印象。
 ・誰が犯人なのか
 ・何のために殺したのか
 ・トリックは何なのか
 物語を支えてくれるはずのこれら要素がどうにも軽々しく、ぞんざいに順次開示されていく。その代わりとばかりに小粒なアクションシーンが差しはさまれるが、どれも微妙で事故で決着がついていくような……。最後もまあ、分からなくはないが微妙な幕引き。
 アクションならアクション、サスペンスならサスペンスに特化した方がすっきりしたかもしれない。
 
 やはり最初の印象通り、美女のお色気シーンを楽しむような映画、として見るのが推奨される。残念ながら、そこ以外のお色気シーンはないが。
 
 

2019年10月17日木曜日

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★★★☆☆
~ヒッチコックを彷彿させる良作~

 2000年。サム・ライミ監督によるホラーサスペンス映画。
 サム・ライミ監督はこの後に取ったスパイダーマン三部作で有名だが、それ以上に一躍名を馳せたのがスプラッターホラーの名作「死霊のはらわた」。行きすぎた恐怖表現が笑いにつながることを示した記念碑的作品だった。
 今作は目新しさや奇抜さではなく、こぢんまりした内容をきっちりした映画技法でそつなくまとめたなという印象。
 

 アメリカ南東部ジョージアの田舎町に住むアニーは夫を事故で失い三人の幼い子供を抱え、カード占いで生計を立てていた。アニーには生まれついての特別の力があり、様々な見えるはずのないもの、知るはずのないことを知覚することが出来た。
 偏見の多い町での扱いは怪しい占い師であり、実際相談者の事情を聞いてあげるカウンセラーとしての役目も大きかった。相談に来るのは当然問題を抱えた者ばかりで、夫の暴力に苦しむヴァレリー、精神病を患うバディーなど巻き込まれて大変な目にあってばかり。
 そんな中、結婚を控えた有力者の一人娘が行方不明となり、藁にもすがる気持ちでアニーの元を尋ねてきた――。

 登場人物の紹介から事件の発生、二転三転する展開。そしてそこに挟まれる挿話。各シーンは全て作品内で意味を持ち、他の要素を補強、誘導する役割を担っている。贅肉を落としきった作品という印象。

 一見普通のサスペンスだが、その下には表に現れない上手さがぎっしりと詰まっており、ヒッチコックのような雰囲気が漂う。「バック・トゥー・ザ・フューチャー」のロバート・ゼメキス監督がヒッチコックをリスペクトして作ったサスペンス、「ホワット・ライズ・ビニース」に似た感触と言っても良い。

 ともかくしっかりとした技術に裏付けられた良作であり、認知度や普通の感想よりも見るべき所の多い作品だと思う。とくに細かな伏線、パーツがつながり合っていく終盤は映画の教科書としても相応しいのではないだろうか。