★★★☆☆
~ヒッチコックを彷彿させる良作~
2000年。サム・ライミ監督によるホラーサスペンス映画。
サム・ライミ監督はこの後に取ったスパイダーマン三部作で有名だが、それ以上に一躍名を馳せたのがスプラッターホラーの名作「死霊のはらわた」。行きすぎた恐怖表現が笑いにつながることを示した記念碑的作品だった。
今作は目新しさや奇抜さではなく、こぢんまりした内容をきっちりした映画技法でそつなくまとめたなという印象。
アメリカ南東部ジョージアの田舎町に住むアニーは夫を事故で失い三人の幼い子供を抱え、カード占いで生計を立てていた。アニーには生まれついての特別の力があり、様々な見えるはずのないもの、知るはずのないことを知覚することが出来た。
偏見の多い町での扱いは怪しい占い師であり、実際相談者の事情を聞いてあげるカウンセラーとしての役目も大きかった。相談に来るのは当然問題を抱えた者ばかりで、夫の暴力に苦しむヴァレリー、精神病を患うバディーなど巻き込まれて大変な目にあってばかり。
そんな中、結婚を控えた有力者の一人娘が行方不明となり、藁にもすがる気持ちでアニーの元を尋ねてきた――。
登場人物の紹介から事件の発生、二転三転する展開。そしてそこに挟まれる挿話。各シーンは全て作品内で意味を持ち、他の要素を補強、誘導する役割を担っている。贅肉を落としきった作品という印象。
一見普通のサスペンスだが、その下には表に現れない上手さがぎっしりと詰まっており、ヒッチコックのような雰囲気が漂う。「バック・トゥー・ザ・フューチャー」のロバート・ゼメキス監督がヒッチコックをリスペクトして作ったサスペンス、「ホワット・ライズ・ビニース」に似た感触と言っても良い。
ともかくしっかりとした技術に裏付けられた良作であり、認知度や普通の感想よりも見るべき所の多い作品だと思う。とくに細かな伏線、パーツがつながり合っていく終盤は映画の教科書としても相応しいのではないだろうか。
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