
※Amazonの商品リンクです。
★★★☆☆
~実写で良かったのではないだろうか論~
2017年。1クールのテレビアニメ。原作の存在しないオリジナル作品。
高校卒業間近の男女関係に焦点を絞っており、タイムリープや暴走したオタクといった突拍子もない設定の登場しない、純粋な高校生たちの恋愛物語。
高校三年生の泉瑛太は親の転勤の都合で中学まで暮らしていた神奈川に再び戻ってくる。すでに高校生活も終わり間近となっており、瑛太はクラスには所属しない自習登校的な立場となっていた。
そこで再会したのは中学時代の野球部仲間だった相馬陽斗と元同級生である夏目美緒。
陽斗とは親友だったが、転向後自然と没交渉になっていた。美緒には中学の頃に思いを寄せていたが、彼女は陽斗のことが好きだと分かって身動きの取れないまま離れることになった。
そんな微妙な三人の再会だったが、陽斗は別の同級生に片想いをしており、卒業までに告白するという。卒業まであとわずか。これまでの総決算となるような色濃い時期が訪れ、全ての人間関係が動き始める。
江ノ島辺りの風景がロケーションとして使用されており、再現度が非常に高い。お店の看板などもタイアップを組んで再現しており、ビッグカメラがそのままの看板で出てきていることがなかなか新鮮だった。現実感を持たせるために、とても有効かもしれない。
現実的な風景で、現実的な恋愛劇を描く。
どうしても浮かんでくる疑問は、アニメーションにする意味はあるのだろうか、ということ。実写で構わないのではないだろうか。
これについて正直あまり強く擁護できない。
演出や表現が実写では難しいものならばアニメならではと言いやすいのだが、一見するに実直なカメラアングル、演出で構成されており、そういう訳でもない。終盤の雪のシーンは実写では難しいロケーションだろうが、ここをとってアニメの理由とするのは製作者の都合に感じる。
それならば、実写ならどうかと想像すると、ああ、このクオリティでの映像化はないだろうとも自然に思える。
魅力的な役者、風景を好き勝手に生み出せるのは、やはりアニメならではである。結局昨今の実写もCGCGでアニメーションに近づいているではないか。
――ね、あまり擁護できない。
ただ僕は、特に理由なくともアニメで良いじゃんと言いたい。
アニメを作ってきた人が、自分たちが最も上手に映像表現できる手法としてアニメーションを選ぶ事の何がおかしいのか。
表現したいことと手法が――いやいや、良いじゃない。好きな手法で。
アニメと実写論はこれで片付けるとして、今作で特に「実写で良いのでは」と感じてしまうのは、アニメの表現が実写を越えていないからである。
現実的な表現に徹して確かにそれを達成しているが、ならば満を持してそこから飛び出ることで、アニメならではのプラスアルファを作品に付加することが出来たんじゃないのだろうか。それが雪景色なら、それは弱すぎだ。
現実感において、実写は初めから優位である。アニメは、絵だもの。
だから、アニメーションは動きを、表現を誇張する。誇張してようやく現実感を持つのである。
今作はアニメーションの優位点であるはずの誇張の程度と方向性を見誤ったのかもしれない。現実感ある表現にはなっているが、現実に勝てない印象ばかりが残ってしまった。
0 件のコメント:
コメントを投稿