★☆☆☆☆
~熱情は感じる~
2018年に放送された1クールのテレビアニメシリーズ。
特に原作のないオリジナルの模様。放送にタイミングを合わせて小説版が発売されている。
まずは題名が読みにくく、なんでこんな表記なのだろうと引っかかる。
読みは「リライデッド」で正しいようだが、大文字と小文字の区別は何なのだろうか。
区切りを色々に変えてグーグル翻訳にかけてみると興味深い。
『reride』⇒「再乗車」
『rerided』⇒「乗り換え」
『ride』⇒「乗る」
『rided』⇒「乗った」
上記の訳語は視聴した後ならなるほどと感じる内容となっている。
本作は副題でも示されているとおり、主人公デリダが時間を越えて運命に立ち向かって行く物語で、時間移動のことを「タイムライド」と呼称している。
つまりタイトルは時間転移についてのことであり、それにまつわる状況を多角的に示したものなのだろう。
暴走する危険のある重篤なバグを発見し、同僚ネイサンと共に社長と直談判するが聞き入れられず、対策を講じることとなる。
その日はクリスマス。ネイサンの娘マージュの誕生日でもあるため、その友人ユーリィと共に慎ましいパーティーで時を過ごした。
翌日バグ対策のために動き始める二人だが、突然社長の配下に襲われネイサンは死亡。デリダは逃走のあげく謎の施設で冷凍睡眠装置に身をゆだねる。
次に目覚めたときには既に10年が経過しており、世界はDZの暴走によって荒廃していた。
なぜ襲われたのか、DZの暴走を止めるための修正プログラムはどこへ行ったのか。デリダの逆襲が始まる――。
全般に粗雑。
これは作画にも、演出にも、シナリオにも共通して言えることで、かなりまずい出来だと言える。
例えば冷凍睡眠装置に入ることになる展開が「滑って転んでマシンスタート」であったり、御都合主義とさえ言えないような大雑把さ。
このような突っ込むのをためらうほどの無茶は最終話まで続き、そうなると一つのテイストとさえ感じるほど。
面白いと感じた点に「時間跳躍の位置づけ」がある。
巨大なマシンと莫大なエネルギーが必要なのだが、どうやら非常に観念的な存在として扱われている。
強い思い込みが過去に意識を戻させる。
全体としてはやはりつじつまの合わない謎の仕組みなのだが、スイッチを押しもせず、超常現象としてかってに現れる物でも無く、本人の強い意志が魂だけを転移させる。
これはまるでゲームのセーブポイントのようなものだ、と思うと腑に落ちる。記憶に残る「時点」に、意識だけが移動。同じ人間が同時に存在というパラドックスもない。
また同様に藤子・F・不二雄の短編「あいつのタイムマシン」を想起する。
この作品におけるタイムマシンの作り方が、「時間の堂々巡りに入り込むほどの思い込み」を成し遂げて「Aがタイムマシンを使って過去のAにタイムマシンの設計図を届ける」というもの。タイムパラドックスに思い込みで無理矢理入り込むのだ。
他にはメカの設定がしっかりしていたのかもしれない。
自信がなさげなのは、それらが実際に作品の中で描かれるに当たっては、微妙というか、へっぽこな状態なのだ。
3DCGのモデルはきっちり出来て格好良いはずなのに、画面内で走る車の挙動は異常で、狙っていないコミカルに落ちてしまっている。
同様にDZを壊すとそこから血のような液体が飛び散り、翼のような形でそのまま硬化していくのも格好良いはずなのだが、本体が案山子のような動き。
やはり見所にはなっていない。
残念ながら、どう見ても駄作であり、人に勧められるクオリティではない。
だが、これだけは強く言っておきたいが、正体の分からない熱意を僕は感じた。
「時間転移をテーマにした切ない話をやりたいんじゃあ!」
この想いを感じる。それを表現するための全ての段階において失敗してしまっているが、気持ちは伝わるのである。
まるで、子供の絵を見ているようだ。
拙くて意味不明で道理が通っていない。
だけど、どこか愛しいのである。
売れるための過剰なお色気、暴力。奇抜な設定――。
練られた企画と職人芸は、ある程度には売れるアニメを生み出すだろう。
そうして作られたものでも、誰かの心を揺さぶるだろう。
今作にはそういった売るための仕掛けがない。
ただただ伝えたい想いが、稚拙な技法でこのような形になったのではないだろうか。
僕は「時間転移をテーマにした切ない話をやりたいんじゃあ!」の気持ちをまんまと形にした、誰かをうらやましく思う。
結果はどうあれ、形にしたもの。
世界には、こういった作品が生まれるだけの隙間があったことが、嬉しいくらいだ。
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