★★★★☆
~切り口次第でここまでも~
1クールのテレビシリーズ。
原作は完結して居らず、当然このアニメも途中で終了しているが、割と区切りは良いかもしれない。(人気的に第二期は作られるでしょう)
変わっているのが、ネット掲示板に書き込まれた物語が大元になっているということ。それもあって登場人物に一切固有名詞が出てこず、肩書きだけで呼ばれている。
異世界転生ものでも無ければ、努力皆無のハーレムものでも無い。
『ゴブリンだけを狙う一匹狼、ゴブリンスレイヤー』
このポリシーを中心に見飽きたRPGを再構築。いわゆる西洋風ファンタジー世界を舞台とした冒険小説として、他とは一線を画した存在となっている。
ゴブリンはRPG世界ではもっとも弱いモンスターとして知られているが、現実的に考えてみると恐ろしい存在である。繁殖力に富み、最低限の知恵が働き、それなりの連携行動を行う。数の暴力で攻め込んでくるのである。例えるなら、強力なネズミであろう。普通の村人になすすべがないのも当然だし、駆け出しの冒険者が返り討ちに遭うのも何の不自然もない。
しかもゴブリンは人間と生殖可能で、性的な意味でも人間を略奪するのである。これはどの程度世界で一般的なのかは分からないが、エロを許容する界隈ではよく使われている設定である。人間の男がゴブリンの女に陵辱されるという設定はあまりに少ないので、基本的には男性向けに便利に使われている。
今作でもゴブリンスレイヤーがゴブリンにあまりにも執着する理由が、これがらみである。
基本単独でゴブリンの集団を相手するために、ゴブリンスレイヤーは火攻め水攻めあらゆる手段を厭わない。積み重ねられた実績は彼を高ランク冒険者に押し上げたが、高ランクなのにゴブリンばかりを狙う変人として周りには距離をもたれている。あまつさえ卑怯とも言える手段を多用する姿勢に、どうにも周囲には侮られていた。
しかし実際ゴブリンに襲われる村の人々にとっては紛れもなく英雄であり、それを知っている冒険者ギルドの窓口係や、きちんと力量を推し量れる高位の冒険者からは一目を置かれていた。
この辺りも上手いところをついていると思う。
我が身をかけて普通の人々のために尽くす、まるで宮沢賢治ではないか……。と言うのとも実は違う。彼の行動原理はトラウマによる強迫観念であり、周りは関係なく自分自身のためにゴブリンを狩っている。つまり、変わり者で変人と言う評価は正鵠を射ているのだ。
あまりの異常に見かねた周囲による働きかけで、ゴブリンスレイヤーは人間味を取り戻すリハビリを行っていくのである。
仲間が出来、守るべき物をきちんと自覚して、ゴブリンスレイヤーは徐々にトラウマから解き放たれていく。
複数の異性から思いを寄せられる展開もあるが、ハーレム状態ではなく人数は比較的絞られていて、なんだかほっとしてしまう。しかもその好意にきちんと裏付けがあるので嫌味はまるでない。
アニメーションとしての出来も水準以上をキープしており、物語を魅力的に伝えてくれる。キャラクターデザインなどは漫画化された作品を土台にしており、この漫画版の出来も良いのでクオリティを踏み上げることが出来たのだろう。
残酷シーン陵辱シーンが割と容赦なく展開されるので見る人を選んでしまうが、その分強い魅力を感じる人もいるだろう。
世界観、人間関係、冒険のスリル。様々な楽しみ方がある魅力的な作品である。
2019年10月23日水曜日
ゴブリンスレイヤー
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿