★☆☆☆☆
~恐怖の8ミリ映像~
2012年の米映画でイーサン・ホーク主演の引っ越しホラー。ホラーって引っ越し契機のものが多いよね。
未解決事件を再調査して真実を見つけ出す、というコンセプトで10年前に大ヒット作を書いたエリソン(イーサン・ホーク)だったが、その後二作は鳴かず飛ばず。妻と二人の子供をつれてペンシルヴァニアのとある家に引っ越してくる。そこは四人の家族が惨殺され、幼い娘一人が失踪という事件の発生した家であり、エリソンはこの事件の真相書籍化による起死回生を狙っていた。
引っ越し作業中に屋根裏で謎の映写機と数本の8ミリフィルムを見つける。そこに映っていたのはこの家で行われた殺人の様子であり、他のフォルムにも同様の殺人風景が記録されていた。その隅に映り込む奇怪な仮面(?)の人影……。エリソンはその資料を警察に届けず、ベストセラー作家返り咲きを夢見て調査を開始する――。
こういったオカルト事件を題材にした映画は現実か超自然かに大きく別れると思うが、あまり早期にどちらなのかが分かってしまうと興醒めの部分があると思う。本作は割りとバランスを取ったまま進行し興味を継続させるが、どちらなのか決まった段階でそれまでの現象にきちんと説明が付かない状態になっているので、なんだかフェアでなく、後半はただのビックリ屋敷、オバケ屋敷映画になっていく。驚かせ方は映像の加速減速巻き戻しを組み入れた編集による盛り上げのあと、血みどろ残虐の開陳といった手順。精神的というより反射的恐怖。
自分は本作が現実にしても超自然にしても、作家ならではの切り口から謎解きが展開されるものと期待していたが、エリソンは基本的に驚き役で、事件を解きほぐすためにほとんど働いていない。まわりから来る変化に対しておっかなびっくりしているだけなので、そりゃ本売れんわ――とへっぽこ作家のイメージばかりが強くなる。
110分とそこそこの長さの映画だが回りくどい描写による水増しが多い。といってもホラー映画の「タメ」は恐怖の階段であり、ジェットコーストーの長い巻き上げ時間と同義である。無くてはダメなのは分かるが、それにしてももう少しテンポ良くまとめる事ができたように思う。
8ミリ映像は画面の揺れや劣化が違和感として残り、家族動画が映ってもどこか異様な雰囲気になる。ホラーにはぴったりなメディアだが、フィルム自体見た事の無い人の方が多くなっていくだろうから、小道具として使われる機会は減っていくのだろうか。あ、映画館の特典で生フィルム(デジタル上映で何が生なのかとは思うが)は最近も存在しているので、そっち方面から知名度は残っていくのかな。