2020年11月5日木曜日

バトルランナー


★★★☆☆
~深くも浅くも楽しめる~


 1987年の米映画。出演すれば(基本)ヒット時代のアーノルド・シュワルツェネッガー主演。殺戮テレビ番組脱出バトル。

 2017年アメリカ。経済的没落により貧困層が増大したアメリカではそのガス抜きとしてテレビ番組がどんどん過激化。人気タレント、デーモンが司会をする一番の超人気番組「ランニングマン」は本物の犯罪者を重武装のヒーローが追い詰めて処刑するという内容。
 一方、警察官のベンは市民を虐殺しろとの命令に反したため捕まり、あろう事かフェイクムービーによって虐殺の犯人として刑務所に収監。世間からも悪逆非道の犯罪者として認識されていた。仲間と共謀して脱獄に成功するが国外脱出に失敗して再び捕らえられる。その話題性に目をつけたデーモンが無理を通してベンをランニングマンに招聘。仲間とともに殺人ヒーロー達の待つステージへと送り込まれる。デスゲームを生き抜き、己の無実を証明できるのか――。

 
 今見ると特撮の粗が目につくし、すでに過去となった(現在2020年なり)未来描写はかなりずれている。カセットテープがまだまだ現役など懐かしい未来であるが、肝の部分である『番組とそれを見る視聴者』の関係は今も昔も変わりがない。つくる側は受けるように、番組運営に都合の良いように虚実を好き勝手に編集し、見る視聴者は面白ければ良いとしてそれ以上深く考えることはない。テレビの存在感が薄れた現在でもインターネットを飛び交う動画や画像として構図は変わらない。むしろつくる側と視聴者が入り交じり区分け出来なくなった現状の方が重傷である。まさに時代を超える作品だ。

 一時期はTVで良くかかっていたので何度も見たことがあり、いくつかのシーンが強烈に焼き付いている。
 戦場に送り込まれるシューターの慌ただしい映像。
 ホッケーの防具に身を包んだサブゼロ。チェーンソーを振り回すバズソー(こいつが1番記憶にのこってる)。オペラを歌ってキラキラしたダイナモ。
 映像の記憶が残るということは、基本的にその作品に価値があるということだと思う。

 改めて見てみると卑怯な戦いを嫌って役を降りる「キャプテン・フリーダム」など、当時はスルーしていた含蓄あるキャラクターにも気がつく。各所の風刺的要素など、バーホーベン監督(ロボコップ/スターシップ・トゥルーパーズ)の作品っぽい印象だが今作の監督はポール・マイケル・グレイザー(アフリカン・ダンク)。

 リチャード・バックマン(スティーブン・キングの別名義)の原作は人間狩りのテレビ番組「ランニングマン」を舞台とした逃亡劇であることは同じだが、街全体が逃亡の舞台となっており、ベンの素性や結末も異なる。原作をよりエンターテインメントに仕立て上げたのが映画版であり、実にテレビ番組的な誇張と脚色である。……とすると、この映画作品自体が「映像による都合の良い現実歪曲」と「それを疑うこともなく賞賛して人生を浪費する視聴者」という原作のテーマを相似拡大したものになるとも言える。興味深い。




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