2020年11月12日木曜日

クリフハンガー

クリフハンガー [DVD]

★★★☆☆
~破格の導入~


 1993年。意外にも日米仏の合作。制作資金を出せば合作となるのかな。
 シルベスター・スタローン主演の高山脳筋アクション。
 

 ロッキー山脈の山岳救助隊で働くゲイブは仲間とともに充実した毎日を送っていた。
 一方財務省の輸送飛行機をハイジャックして高額紙幣の強奪を狙うグループが犯行を開始。機上で首尾良く計画を進め、味方の飛行機で脱出しようというところでFBIの内偵がこれを阻止。三つのトランクケースはロッキー山脈の冠雪に埋もれる事となった。
 犯人達はその回収のため遭難者を装って救助隊を呼び寄せる。そうとは知らぬゲイブ達は急ぎ現場に駆けつけようとするが――。


 導入が素晴らしい。
 急峻な岩山の天辺でケガを負った要救助者の元に颯爽と現れ、テキパキと救助活動を展開するゲイブの姿はまずこの映画の舞台を見せつけてくれる。垂直どころかオーバーハングの壁面を這い上がり、高度1200メートルの崖をつなぐワイヤーを移動する。高所恐怖症ではないはずの自分でも腰がむずむずとしてくる。さらにそこから腕一本で人をぶら下げるシーンなど手のひらで顔をかくして指の隙間から見てしまう緊迫感。
 ハイジャックの映像もすごい。現金輸送の飛行機を別の飛行機で近接飛行。二機をワイヤーでつないでトランクや人員を移送するシーンなど他では見られないスリリングな映像で、その後の不時着シーン含めて冒頭からたたみかけてくる。
 
 これはすごいと胸が躍るが以降の展開はこの序盤を超えることなく尻すぼみになっていく印象。
 ゲイブが装備を剥がされてシャツ一枚で雪山に登っていく姿は、スタローンの顔芸含めるとコメディーに偏ってしまう。大胆な計画で度肝を抜いてくれた敵も、どんどん鍍金が剥がれてただの愚連隊に堕していく。終盤になるほどどちらも知性を失ったような状態でぶつかり合っていくのだ。面白いといえば面白い。

 ともかく序盤だけでも実写映像の威力を強烈に感じる事ができ、視聴の価値は十分にある。映画全体の元は取れるのでお勧めしたい。
 
 ところで――。(今作とは直接関係の無い話です)
 1993年当時、CGはまだまだ発展途上でクロマキー合成や特殊撮影(特撮)、そしてカット割りで様々なイメージを作り上げるしかなかった。描きたいイメージに対してあらゆる角度、職種からアイデアを出し、実現可能な方法を組み合わして映像化していく。合成のなじみを良くするのは困難だったし、特撮の痕跡を消すのも大変だった。しかし上手くつくられた新規なイメージはもうそれだけで観客の感動を誘ったものだ。それはまさに新しい「魔術」「魔法」を生み出す行為だった。もちろん種があるのだから「手品」である。
 現在はそういう意味では非常におもしろみのない時代だ。どんなにがんばって豊かな映像をつくり出しても、見る者はただ一つの種で理解してしまう。CGでしょ、で終わりなのだ。
 実写の方が、CGの方が、という優劣の話しではない。それぞれに利点と欠点があり、欠点を補うように両者が組み合っていくのが良いのだろうと思う。

 ただ、世の中の全ての手品の種が明らかになってしまったような、ストリップ劇場を明るく照らしてしまうような、ひどいネタばらしを食らってしまったな、という喪失感を感じる。


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