★☆☆☆☆
~青春の主張~
2019年の邦画。サスペンスとミステリー。
原作は「天地明察」「マルドゥック・スクランブル」を手がけた冲方丁初の長編ミステリー小説。
監督は一時代の無理矢理おもしろくするフォーマットを確立して見せた堤幸彦。
携帯でメールを見ながら廃病院に続々集まる少年少女たち。
自殺を決した12名がネットでの呼びかけに応じて死ぬために集合していた。
全員がそろってみると12のベッドが据えられた自殺決行の部屋で、あり得ない13人目がベッドに横たわっていた。誰がそれを行ったのか、どうして行ったのか。
自殺の決行は全員の合意がなされるまで行われない。参加者でもある主催者のルールにより、12人は事件の真相を求めて行動を開始する――。
廃病院に舞台を限定していることで、上手く映像のクオリティを安定させていると感じる。冒頭の空撮から廃病院入り口へ至り、その後病院内の各所を移していく流れなど、非常に期待感をあおるなめらかなつなぎとなっている。少し現実とずらしたイメージカットを挿入したり、象徴的なデザイン(母胎像)を各所に廃したり、雰囲気を上手く盛り上げている。
12名(13名?)にも及ぶ登場人物に上手く自殺にいたった経緯などを披瀝させ、同時にキャラクター性も視聴者に刻み込んでいく。これなど服装、話し方、キャストなど多くの要素をくみ上げた事による成果であろう。
ただ、話が進んでいくほどに印象は厳しくなる。
まず一見して「子ども」という言葉に引っかかるだろう。設定では15~18歳の子どもたちとなっているが見た目がとてもその年齢には見えない。実際役者は17~23歳で、全般に苦しい。確かに言葉や思考の浅さには子どもらしさがにじみ出て、中二らしさがあふれているので、これは映画特有のキツさなのかもしれない。あえて大人の外見で中身との剥離を示しているのだろうか。いくら見た目が立派でも、中身が子どもでは仕方がないよ、と。
次に閉鎖空間で12名がひしめき合う状況で組み上げられたトリックが苦しすぎる。行き当たりばったりの行動が、ただ偶然で事件になっただけなのだ。その偶然は信じてみても良いと思えるようなロマンチックな物ではなく、作者の都合だけの落胆するような物だ。それが映像になることによって、おそらく増幅されている。見るからに嘘っぽく、ご都合主義なのだ。
最終的には12人の子どもっぽい主張を聞くだけの事を、無理矢理ミステリーに仕立て上げた作品という位置づけ。
同調圧力に負けるだけに見える最後の展開も、いささかうんざりでエンディングを迎える。