2020年7月17日金曜日

ミッシングID

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★★☆☆☆
~まるで角川のアイドル青春映画~

 2011年の米映画。彼女と青春逃亡劇。
 

 高校生のネイサンは悪友と悪さをしながらも、裕福な家庭で不自由なく暮らしている。しかし繰り返し見る謎の女性の夢、抑えきれない怒りの衝動など、彼自身はティーン特有の悩みを抱えているようである。
 好意を寄せながら疎遠になってしまっていた向かいに住む同級生のカレンとの共同課題に楽しく取り組んでいた折、インターネット上で行方不明となった子供の情報を呼びかけるサイトを見つける。子供の写真と成長した予測CGが掲載されていたが、その一人がネイサンと非常に似ている。サイトへ連絡を取ってみるが、つながった先はハイテクを操る武装集団だった――。

 主人公を演じるテイラー・ロートナーの顔が気になって仕方がない。冒頭に三人の若者が出てきて、がたいの良い厳ついゴリラ顔は脳筋友情キャラかなーと思ったらまさかの主人公でびっくり。会話の中で自分の子供時代の写真を見て、あごが一緒だ! という下りがあり、突っ込み可能のチャームポイントなのか。テイラーは映画『トワイライト』シリーズの主要キャラとして人気があり、狼男役だというのだが、確かにイメージとしてぴったりである。今作の企画自体が彼の人気を中心に据えたもののようなので彼が主演であることはいかんともしがたい。角川のアイドル青春活劇といったところか。

 主人公の出自を巡る冒険となるが、序盤~中盤にかけては誰が味方で誰が敵なのかが分からないスリリングな展開を楽しむことができる。友人の小遣い稼ぎや主人公の受けるフィジカルトレーニングなど、後に続く伏線も丁寧にちりばめられる。主人公も年相応の不良程度で常識外れに強いわけでなく、ヒロインも足手まといにならない快活さ。細かい点かも知れないがこういったバランスが、何か実際の高校生の身の上に降りかかったことであるような雰囲気を漂わせている。
 終盤状況が見えてくると張りぼての仕掛けが霧から出てきたように、設定の無茶具合が目についていたたまれなくなる。本当の父親の立ち回りには腹が立つというより呆れてしまう。それに全てが振り回されていた構図なので作品自体がどんどん安っぽくなっていき、凡百の映画の一つとして終幕する。

 映画の中でアメリカの高校生の様子というのを見る機会が多々あるのだが、実際はどんな感じなのだろうか。
 今作でも親が留守の生徒が家を開放しそこで大パーティーが開かれるという導入から始まる。そこには大学生なども訪れお酒を飲んでプールに飛び込み大騒ぎであるが、本当にこんなパーティーが普通の高校生の体験に含まれるのだろうか? 反対に鬱々としたオタク高校生の様子を描いた映画も多い。一体普通とはどのくらいのラインなのだろう。勝手にこの辺りかなと思うのはサム・ライミの『スパイダーマン』シリーズのピーターの感じ。自分の居場所を守って、その中で好きなことを楽しんでいる感じ。学校カーストの上にあこがれはあるが、それほど重要とも思っていない。良く描かれるダンスパーティなどには無縁。
 邦画の中で普通の高校生の姿が描かれているかというと、確かにそうではない。文化祭の後夜祭なんてイベントもなかったし、本当の姿は洋の東西を問わず基本的にひどく地味なのだろう。それでは映画になりにくいので両極端によるのだと思われ、確かにそうならざるを得ない。
 なんだか寂しい気分になってきたが、自分の高校時代を思い起こせば、一人称で見る全ては圧倒的な臨場感でなかなかドラマチックだったと思うし、同じクラスで間近に見る女子はこの世でもっとも魅力的な存在達だったよ。

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