★★★☆☆
~序盤のスピード感と展開にワクワク~
ジョージ・クルーニーとジュリア・ロバーツ主演のテレビ局立てこもり事件顛末記。
監督が女優としても名をなしているジョディ・フォスター。彼女はキャリアの早いうちからプロデュースや監督業に乗り出しており、はじめは珍しいなと見ていたが、トム・クルーズやレオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピットが同じように主体的な映画制作に乗り出しているのを見ると、俳優として発言力を増した状態でプロデュース側に回るのは適切な立ち回りなのかも知れない。日本でいう「映画監督になるなら歌手になってヒット曲を出すのが手っ取り早い」なのか。
俳優をすることで映画の作り方を理解し、自分ならこうするのに! が高まっていくこともあるだろう。日本でその手の代表格といえば北野武が筆頭となりそうだ。
おすすめ株などの経済情報を派手な演出のショー形式で見せる人気テレビ番組「マネーモンスター」。
その司会者ゲイツは自動株取引を行うアイビス社を強く推奨したが、数日後急落。その原因を問い詰めるためCEOウォルト出演のはずだったがすっぽかされる。
番組の情報を鵜呑みにして壊滅的な損失を出した個人投資家リーが乱入して番組をハイジャック。
ゲイツとウォルトに真相を正すためだったが、ウォルトはおらず、ゲイツが爆弾で脅されながら事情を解き明かしていくことになる。
設定だけ聞くとこれは出落ち、人情話に持って行っておしまいかと思いきや、無謀な犯罪の向こうに別の大きな犯罪が見えてくる。また、人情話どころか人間関係の裏側まで見せつけられてどんどん盛り上がるのだが、中盤以降は今ひとつの印象。つながらい単発エピソードがまだるっこしく差し挟まれて失速していく。
最後も停滞した雰囲気のまま終劇となってしまい、中盤の盛り上がりが素晴らしかった分だけに惜しまれる。
舞台となる株式取引とその扇動番組であるが、株式取引をしたことのあるものなら犯人に共感せずにはいられないだろう。どう考えても株式取引はインチキの世界である。なんだか急に値上がりしているな~と思った次の日に業績に関わる重大発表があるとか、もう当たり前すぎて何とも思わなくなる。インサイダーなど当然といった風情で背広を着た悪人達がお金を生み出す悪の世界であり、個人投資家はいかにそのおこぼれを拾うかに注力するしかない。
何となくの気分で上がったり下がったり、名前が似ている企業が勘違いで上がったり下がったり……。何か、立派な人がきっちり検討、討議を経て動かしているのが経済なのだと想像していたが、それは御伽話を信じる子供のような思い込みだった。実際はびっくりするくらい適当に動いている。
証券会社も大概ひどい。自分の使っている証券会社など、便利になったとか手数料がやすくなったと大々的にうたっているが、よくよく調べてみると他の部分でプラスよりもマイナスが大きい仕組みになっていたり、前もってこっそり値上げしておいて、それを基準に安くなったとか、結局高くなっているのにぬけぬけとのたもうて、こちらは怒気がおさまらない。
別の会社の傘下になった途端このような欺瞞を連発しだしたので親会社の意向なのかと思うが、いかにだますかに身命を賭している姿勢は、こりゃ他の証券会社に移ろうと思わせるのに十分。
こういった気分をエンターテイメントの枠組みで糾弾しようというのが今作のコンセプトの一つなのではないか。
「お金をなくしても自己責任でしょ?」で片付けるだけでなく、自分たちだけは儲かる仕組みを構築して知らんぷりしている悪漢どもがいるのだと問題提起している。メディアの責任も、それに乗る一般市民の責任も、よく分からない言葉で煙に巻いていく会社の責任も。唯一の答えを出せる問題ではないが、自省しながら、少なくとも家族に言えない悪事を行っていないのかを自省する姿勢が必要だろう。
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