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~CG合成が実写の魅力さえ打ち消す~
2017年の中国とインド合同制作のアクションコメディ。題名の表すとおり、二つの文化の折衷をしようとしたような内容でそれぞれの文化がカンフーと全員ダンスの形でフィーチャーされているが、非常に表層的。
中国の歴史研究者ジャックのもとにインドの大学教授アスミタが訪れる。貴重な地図を持参し、それが指し示す遺跡を一緒に探して欲しいと言うが――。
話しはおまけにもなっていない添え物であり、きちんと理解しようとしない方が良い。シチュエーションだけを追い求めるコメディなのだ。貴重な地図を乱雑にカバンに押し込めていることからも、きちんと世界観を表現としようという気はまるでないことがよく分かる。
冒頭10分ほどがフルCGの大乱戦シーンとなっており、出来はともかく派手。ゲームの無双シリーズみたいな映像が展開される。その後も全編にCGによる背景、合成が行われ、ビビッドな色調に統一された画風は美しいが、アクションもどこからどこまでがCGなのか分からない状況なのでジャッキー・チェンのよって立つところである実写実演の力を大きくそいでしまっている。実写と思えるところもテンポ良くするために容赦なくコマ落としされており、それがまた粗雑なコマ落としでカクカク跳んで見える始末。実写とCGの合成技術レベルは高く、違和感を感じるシーンは少ないが、結果それなりのアクションシーンが展開されるだけですごみがまったく感じられない。逆説的ではあるが、実演による緊張感や迫力というものは確実にフィルムに焼き付くものなのだという証明になっている。
ジャッキー以外の出演者はミュージシャンやモデルあがりのきれいどころが並び、一見華やかだがこれまた個別の魅力に欠け、ごっこ遊びの域を出られていないように感じる。さらに、どうも全ての登場人物を平等に扱う縛りがあるのかエピソードが分散してキャラクター全員が薄味に。脇役は脇役であるからこそ主役が引き立つのだなと、これも逆説的に明示されている。
国同士の関係が非常に悪い中国とインドが合同で映画を撮るということはそれだけで価値があることだと思うが、描きたい内容ではなく制作上の条件ばかりが積み重なって全てを満たすために作り上げられた作品という印象。誰もこの作品を本当につくりたくはなかったのではないだろうか。そんな疑念が湧いてくるほど無くても良いシーケンスに満ちあふれている。こういった根本的なコメディをまじめなアクションで進めていくというスタンスはそれこそジャッキーの初期カンフー映画を思い出させるが、実写実演の魅力がバランスをとっていたのだ。その魅力がない本作は底抜けでとりつく島もない脱線コメディになっており、虚無を感じさせる。
昔からジャッキー・チェンの映画を楽しんできた身としては、さしもの彼でももうアクション映画はきついなあと感じつつ、他の若手と比べても一番魅力的な動きを未だ保持している点が嬉しかった。