2018年12月20日木曜日

ダーティハリー

ダーティハリー [WB COLLECTION][AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]
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 ★★★★
~これ単体で完全に完結~

1971年のアクション映画。クリント・イーストウッド演じるハリー・キャラハン刑事がサンフランシスコを舞台に活躍する。
自分の信じる正義を貫くためには、法律的な手順を無視し、暴力も辞さぬ頑固な姿勢と凶悪な武力44マグナム。雑多な危機をそれぞれにずばずばとクリアしていく小気味よさ。映画のアウトロー刑事像に一つの定型をもたらした記念碑的作品。
その後シリーズ化され1988年の「5」まで続いていくが、この度1~5をまとめてみる機会に恵まれたので、「1」をメインとして2~5もまとめて記しておく。

映画をそこそこ見るものなら、シリーズのどれか一作は目にしていると思われるが、1とそれ以外はかなり異なる。各ナンバリングはそれぞれに監督が異なっており、一作目の監督はドン・シーゲル。西部劇などアクション映画でその後の多くの監督に影響を与えている。「ワイルドバンチ」「ゲッタウェイ」のサム・ペキンパーは弟子。クリントイーストウッドもアカデミー作品賞に輝いた自身の監督作「許されざる者」をセルジオ・レオーネ(「荒野の用心棒」の監督)とともにドン・シーゲルに献辞している。
派手なアクション映画をイメージさせるこのシリーズだが、一作目は凶暴さと同じくらい知的な雰囲気に満ちている。ハリーと仲間や犯人のやりとりには機知があふれており、特に有名なのがさんざん銃撃戦をした後、リボルバーに残弾があるかどうかを余力の残る敵に応えさせるシーン。序盤と終盤で同じやりとりを見せるのも秀逸。
ベトナム帰還兵の狂気、動機無き快楽殺人者、劇場型犯罪、犯罪者の権利の保護など、当時の世情を反映しつつ、それらをハリーにぶち壊させることで爽快感を与えるとともに問題提議している。
記憶に残る映像も数多い。望遠レンズ越しに延々見せつけられる敵の視点。巨大な十字架モニュメントの真下を舞台とした銃撃戦。空撮の夜の街の灯り。それに絡めて緩急がしっかりついた演出で、例えば夜のスタジアムの真ん中(カクテルライトで照らし出されている!)で敵を追い詰めた挙げ句、ツーショットから街の夜景まで一気に引いていくシーンは焼き付いている。
残酷描写という点では銃器とナイフの裂傷程度で昨今の過剰なグロテスクに見慣れていれば、映像自体は他愛ない。が、物語展開自体が中々残酷。誘拐された少女を無事救うために、犯人の言いなりに街をかけずり回った挙げ句の結末であるとか、理解と信頼をつなぎ始めていた新しい相棒の戦線離脱によるハリーの孤独。ともかくハリーは仲間が少なく、評価されず、厄介者扱いされて行く。そんな中でも己の矜持だけを武器に普通では裁ききれない悪を打ち倒していく姿は、今でも輝きを失っていない。
犯人「スコルピオン」の演技も見事で凶器が綺麗にフィルムに焼き付いている。演じたアンディ・ロビンソンはあまりに印象が強かったため、同様の役柄オファーしか来ず、流れを立ちきるため一時スクリーンから姿を消さざるをえないほどだったらしい。
もともとシリーズを考えられていない作品であり、最後はハリーがバッジを投げ捨てて終わっている。
これは作品の締めとして非常に重要であり、身分を失っても、失う覚悟の上で、最後の戦いに挑んでいたという証明である。
続編はそれを無かったことにしてぬけぬけと描かれているので、すでに作品間の接続としては致命的な傷を負ってしまっている
とすると、やはりダーティハリーシリーズは1とそれ以外に分けて見るのがもっとも落ち着きが良いと言える。

今作の相棒は負傷の後、あまりの危険さから退職。
以降ナンバリングについてのメモ。

<ダーティハリー2>

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★★★☆☆
~ヒーローVSアーミー~

1973年。法で裁ききれない悪人どもが続々と射殺されていく。
操作を進めていくと警察内に処刑組織が存在する可能性が浮かび上がり――。
大まかな展開は読めるものの、二転三転する状況は中々に楽しい。ハリーと並び立つほどの射撃の名手が敵となり、どのような打ち合いで結末を迎えるのだろう……と期待しているととんでもない方法で決着。意外すぎてこれもありかと思ってしまう。
処刑組織とハリー、同じ独善正義のどこが違うのか、それをテーマにしていたのかも知れないが、それぞれの「正義」の定義がどの程度緩いか厳しいかといった程度の印象。つまり組織は個人の判断では無く組織の判断で処刑を行っており、つまり責任は別の所に置いて殺人している。ハリーは自分の判断だけで、自分の責任において行っている。
これはつまり軍隊と正義のヒーローの違いであり、アベンジャーズにもつながる根深い問いかけであろう。
今作相棒は敵の仕掛けた爆弾によって爆死した。

<ダーティハリー3>

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★★☆☆☆
~女性の相棒~

市長、市警の警部補などににらまれて人事課に配属されたりと、上司との確執、押しつけで苦労するハリー。
女性警察官とのコンビを命じられて呆れながらも彼女の奮闘に心を通わせていく。
終盤のアルカトラズ島での銃撃戦ではロケット砲まで飛び出して印象的。

1作目から登場してきた気心の知れた同僚、相棒であるフランクはナイフで刺されて死亡。
今作の相棒で奮戦しハリーも一目置き始めていたケイトは銃撃戦で死亡。

<ダーティハリー4>

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  ★★★☆☆
~色恋有り~

 シリーズの中でこれだけがクリント・イーストウッド自身の監督作品。
被害者を置いて加害者の人権が守られる事への不信という、1作目と同様の問題提議が見られる。
立ち寄ったコーヒーショップでたまたま遭遇した強盗犯罪。終盤の遊園地での銃撃戦など記憶に残るシーンが多い。
何よりシリーズを通して唯一のベッドシーンなど、ハリーの人物像に厚みが加わった。

相棒は設定されていない。

<ダーティハリー5>

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☆☆☆☆
~ラジコンカーチェイス~
   

映画、マスコミ業界を舞台に有名人が亡くなっていく。
爆弾を搭載したラジコンカーとのカーチェイスはスケールが大きいのか小さいのか不思議な感触。

相棒は中華系。クンフーで活躍。実現しなかったが、ジャッキー・チェンへのオファーがあったとか。
死亡したかと思われたが、ハリーの忠告に従っていたため一命を取り留めた。