ラベル ラ行 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル ラ行 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2021年8月15日日曜日

リオ・グランデの砦

リオ・グランデの砦 HDリマスター [Blu-ray] 

★★☆☆☆
~丁寧な脚本のウエスタン~


 1951年制作の米映画。日本公開は1952年。
 名匠ジョン・フォード監督の騎兵隊三部作の一つで、後の二つは『アパッチ砦』『黄色いリボン』。
 南北戦争後インディアン討伐を任務とした騎兵隊を舞台として家族のつながりを描いた映画。
 
 西部劇とくればともかく戦闘に明け暮れるアクション映画かと思いがちだが、ジョン・フォード監督の映画は異なる。映画を作るための方便として西部劇の形をとっているが、真実描きたいのは土地に根付く人々の生活の有様であるように感じる。脚本は丁寧に丁寧に作られていて、小さな言葉の端々に含蓄や意味が垣間見える。
 

 リオ・グランデはアメリカ南部、メキシコとの国境付近であり、国境を侵犯できない両軍の合間を行き来するようにしてインディアン達の攻撃が頻発していた。部隊を指揮するカービー・ヨーク中佐(ジョン・ウェイン)は国の命令に従って国境内側での作戦を行うが被害は続くばかり。補充兵として新兵が到着するが、その中にカービーの一人息子ジェフが居た。ジェフはカービーと妻キャサリン(モーリン・オハラ)の紛れもない実子であるが、過去の事件でキャサリンがジェフを連れて別居して以来もう10年以上会っていない。親として、子として上官と部下としてぎこちないやりとりが始まるが、なんとキャサリンも乗り込んできて――。


 偶然(?)配属された息子はともかく戦場に奥さん連れ込むの? と驚くが、シチュエーションとしてはこの上なくおもしろい。実際当時の戦場がどうだったのかは分からないが、映画の中では洗濯を受け持つような婦人団が結構な人数随伴しており、それが部隊員誰かの妻や恋仲という感じ。子ども達も1ダースほど。ラッパ兵や進軍のための歌唱隊(これは要人歓迎の儀式に活躍。今作では出番がめちゃんこ多い)も賑やかで、ともかく世界大戦のイメージとは隔絶している。言うなれば貴族的趣味や様式美が色濃く残っている印象。ロマンが残った戦争。
 真実かどうかはともかく舞台背景としてとてもおもしろい。
 
 映画を観ただけでは分かりにくい部分があり、以下ははっきり理解しておいた方が楽しめる。

 
 ・南北戦争時、北軍に従軍していたカービーは命令に従って妻キャサリンの親族の農場を焼き払った
  ※このとき実際に火をつける作業に当たったのが……。
 ・それに怒ったキャサリンはジェフを連れてカービーの元から離れた
 ・離れてはいるもののカービーは二人を気にかけそれ以降の動向を把握していた


 馬の疾駆するシーンの迫力は近年の映画に負けない。というか、別次元の生々しさ。ジョン・フォードは黒澤明との会話で乗馬シーンのこつは「コマ落とし」と「土煙」だと語ったと聞いたことがあるが、まさにそれ。不自然ぎりぎりの馬の走りは、あっという間に小さくなり、また近づいてくる。ある意味特撮なのかも知れない。土煙の効果もすさまじく、画面が賑やかで変化に富む。
 白眉のローマ乗りシーン(二頭の馬を軽装させ、それぞれに片足ずつ乗せて仁王立ちの状態で疾駆)はこれはもういろんな危険性排除から今では再現不可能なのでは……。CGやVFXで似たようなシーンは作れるだろうが、さらっと長回し気味に追いかけていくようなカットは採用されずばたばたと慌ただしい物になりそうだ。

 白黒映画だが観ていると色を感じることがある。
 これは他の白黒映画でもままあることだが、明らかにそうであるという材質について色味を感じるのである。今作の場合は荒れ地とそこに生える下草。土の色と草の緑がうっすらと感じられて、あれ、古くて色あせたカラー映画だっけ? とまで混乱した。
 映像は、脳が見ているのだなあ。 

 

 

2021年4月28日水曜日

LOOP/ループ-時に囚われた男-

LOOP ループ 時に囚われた男 [レンタル落ち] 

~だまし絵のようなタイムリープ~
★★☆☆☆


 2016年のハンガリー映画。日本では劇場未公開なので情報が少ないが、ネット配信されているので視聴者はそこそこ居る模様。
 

 病院からの薬品横流し運搬役のアダム。ボスを裏切って薬品を横取り、高飛びして大金を稼ごうと画策するが、恋人アンナはそれを拒む。
 動き出した計画とアンナとの狭間で懊悩するアダムは1本のビデオを手に入れる。そこにはボスに銃殺される自分の姿が映っていた――。

2021年4月22日木曜日

リグレッション

リグレッション[Blu-ray]

~アメナーバル監督の真骨頂~
★★★★


 2015年。アメリカ・カナダ・スペインの映画。スペインは珍しいなと思うがそれは監督がスペインが誇るアレハンドロ・アメナーバルなのだからしかり。
 
 自分はアメナーバル監督の作品が好きである。初めて出会ったのが長編デビューの『テシス』。続く『オープン・ユア・アイズ』と『アザーズ』まではサスペンス映画であり自分にとっては打率10割。続く『地獄からの手紙』では文芸調になり、『アレクサンドリア』は歴史スペクタクル。どんなジャンルでもかっちりと高いクオリティを維持するその手腕に感嘆するが、自分はサスペンスのアメナーバル監督が一番好きだ。
 
 そして『リグレッション』。久々のサスペンスである。ちらちらと前評判を見るとあまり好意的な意見が無いようだったので見るのが怖く、なんだかんだと後回しにしていたのだが、とうとう機会を得て鑑賞した。

 1990年。アメリカでは悪魔崇拝者による儀式的虐待や殺人の暴露が社会秩序を揺るがす大きな問題となっていた。
 ミネソタ州の刑事ケナー(イーサン・ホーク)は17才の少女アンジェラ(エマ・ワトソン)による父親の虐待告発を担当。その陰惨な内容はまさに悪魔的な儀式の様相を呈していたが告発された父親にはその記憶が残っていない。優秀な心理学者レインズによる退行催眠によって引き出された証言には、同僚の警察官ジョージの関与が示唆されていた――。

2020年7月14日火曜日

レディ・プレイヤー1

 ※Amazonの商品リンクです。

★★★★
~オタクのアベンジャーズ~

 2018年のアメリカ映画。ネットワークの仮想空間上での宝探しとそれを巡る陰謀。
 

 2045年の世界はVRで参加する仮想空間体験がメインの娯楽となっていた。
 スポーツも恋愛も戦闘も、全てその中で体験することが出来るゲーム空間『オアシス』。
 感覚や歩行もフィードバックできるシステムを用いて体験する仮想世界は、もう一つの現実となってさえない毎日を忘れるための逃避場所にもなっていた。
 主人公ウェイドは叔母の家に居候する窮屈な生活。スクラップ置き場に作ったオアシスプレイ環境からネットネーム『パーシヴァル』としてアクセスし、友人エイチなどとともにオアシスに隠された宝――三つの鍵を手にい入れればオアシス全ての権利を得ることが出来る――を追い求める毎日だった。
 いつものように鍵の1つが隠されているというレースゲームで、有名プレイヤー『アルテミス』と出会い、その会話からヒントを得てとうとう一つ目の鍵を全プレイヤーで初めて手に入れることに成功。企業として宝を狙う『シクサーズ』はネットの内外でパーシヴァルへの接触を開始した――。

 監督は冒険活劇お手の物のスティーブン・ストラスバーグ。ネットの内外で同時進行する物語を映画的なデフォルメによって分かりやすく見せることに成功している。

 仮想世界に入って活躍する物語は今作以外にも様々な物があるが、人間との接続についての手段は大きく電気的な物と物理的な物に分かれる。夢を見るような形で直接脳に情報を送り込む手段と、現在でも可能となっているヘッドセットをつけて視覚的に仮想空間を見る手段である。
 
 今作は後者で、高レベルな没入感を得るためには環境を整える必要がある。
 最低限はグラスによる視覚とグローブによる両手の触覚だが、全身専用タイツによって体中の触覚を再現したり、足元に全方向に動くベルトコンベアーを設置してその場での歩行を可能にするなどかなり大仕掛けである。どこまでの環境を整えられるかはプレイヤーの財力にかかっており、その点平等ではない。
 グラスをかぶって虚空に向かって手を伸ばしたりしゃべったりしているのは異様な光景だが、作品世界では道ばたでプレイしている人も多く、我々でいえばワイヤレスイヤホンで携帯通話しているようなものなのかも知れない。耳からうどん(エアーポッズ)を垂らしてしゃべっている様子は延々独り言をしているようでどん引きだったが、最近少し慣れてきた……かな。

 電気的接続の場合、本体は寝たような状態で脳に直接感覚情報を送って仮想現実を体感する仕組みになっており、夢と同様現実とは区別がつかないリアルな体験となる。本人はカプセルに入ったり、頭部にケーブルをつなげたり、ベッドで安静状態になっていたりと絵面的には病的といって良いだろう。
 日本のアニメでこの手の代表格はSAO(ソードアート・オンライン)だろう。ライトノベルを原作としており、頭部にヘルメット状の装置をかぶって眠りに落ちる格好。この作品ではゲームをクリアするまで現実世界に戻れなくなるという騒動になっているが、ゲーム世界で主人公は他のプレイヤーと友好をはぐくみ、一人の女性と肉体(?)関係を結ぶまでになる。これはこれで楽しいのだが、常に心配なのが本体の有様なのである。ベッドで寝たきりとなり筋肉はやせ細る。栄養補給のための点滴も必須だろう。そんな末期患者のような本体を差し置いて架空世界で楽しい日々を送っているという状況に自分は違和感を感じすぎて入り込めなかった。作品では現実世界に戻っても大して人相変わらずすぐに動けるようなごまかし方をしていた。
 このように、電気接続は現実との剥離が多すぎて世捨て人のようなイメージになってしまうのだ。

 両者を比べてみると、スマートではないが物理接続の方がまだ好感が持てる。現実世界でグラスかぶってドタバタしている姿が映画の中でも頻繁に描かれるが、仮想空間に没入している人を現実世界から見たおかしさ、異様さをきちんと描く事によって、何でもありの夢のような仮想現実に適度な違和感、ばかばかしさを与えるのに成功している。

 結局今作の肝は、これは原作から同じのようだが、『仮想現実は楽しいけどほどほどに、やっぱり現実は大切だよ』というメッセージなのだ。したがって仮想と現実のバランス、結びつきをきちんと描こうとしており、上記のばかばかしさもその一環なのである。
 この結びつきを重視した演出は他にもあり、仮想世界での大軍同士のぶつかり合いが顕著だ。企業がゲーム要員を雇って大きな体育館のようなところで整列させて戦いに参加しているという状況なのだが、強力な兵器で戦場における一直線のプレイヤーがなぎ倒されると現実世界のプレイヤーも一直線にばたばた倒れる(ゲーム中の死亡なのでログアウトということ)。現実世界の場所と戦場の場所は関連がないので明らかにおかしいが、ともかくつながりが分かりやすい。この「範囲が同じ演出」は都合3回以上は使用されておりまったく念の入ったことだ。
 このような描写は下手をすると興をそぐことになるが、最大と言える見せ場でさくっと折り挟むことで分かりやすさによる気持ちよさが上回る使い方となっており、見事だ。

 最後になったが、本作の見所の一つはアニメやゲーム、映画といったいわゆるオタク趣味のネタが大量に詰め込まれていることである。細かく見ていけば枚挙にいとまがないようだが、主要なものを挙げても「ガンダム」「ゴジラ」「ヘイロー」「オーバーウォッチ」「ストリートファイター」「サタデーナイトフィーバー」「シャイニング」「バックトゥーザフューチャー」といった有名作がゴロゴロしている。これが鍵の謎に絡んでいたり、ちょっとした背景で出てきたり、強力な武器として大暴れしたり……。これはもうオタクのアベンジャーズといったところで、歓喜歓喜である。
 原作小説とは出てくる作品群が異なるようだが、これだけの使用を許可してもらえたのはなんといってもスピルバーグのネームバリューの成せる技であろう。スピルバーグがつくるなら大丈夫だろう、スピルバーグに頼まれれば仕方がないな、というノリに違いない。ヒットメーカーであり、つくる作品は前向きで人を傷つけない安心感。スピルバーグだからこそ完成なしえた作品である。

 小説では続編である『レディプレイヤー2』が執筆中ということであるが、またこの世界を映画で見られるとしたら、とても幸せなことだろうと思う。

2020年6月29日月曜日

レミーのおいしいレストラン

レミーのおいしいレストラン MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー(クラウド対応)+MovieNEXワールド] [Blu-ray]
※Amazonの商品リンクです。

 ※古い感想に追記をしたものです。
★★☆☆☆
~全編に不潔さを感じる~


2007年。ピクサーのCGアニメ映画。
料理の才能があるネズミと、才能のない見習コックのコンビが繰り広げるどたばた喜劇。

レミーは今は亡き天才シェフのグストーに憧れて、フランス料理のシェフになることを夢見る“ネズミ”。ある嵐の日、レミーは家族と離ればなれになり、独り華の都パリにたどり着く。レミーはグストーの幽霊に導かれ、レストラン《グストー》へと向かう。<WIKIPEDIAより

演出とアイデアはさすがの完成度だが、何か喉に引っ掛かったように楽しみきれない。キャラクターに感情移入しきれないのが原因だろう。
やはり、どんなに腕が立とうと、四つん這いで走った直後に食材をいじられると、不潔な印象が拭いきれないのだ。
料理人の基本としてあるべき衛生観念がこの映画世界では欠如している。そういったモラルの低下が問題となっている昨今だからこそ、気になってしまうのだ。
それ以外のキャラクターも、どこかリアルに腹黒い。見習コックは結局自分で努力することがないし、伝説の名シェフも金勘定に惑った凡人だった。老婆は殺人鬼のようにショットガンを振り回し、ヒロインも打算的に見えてくる。

結局、各エピソードがアメリカンテイスト過ぎて、日本的価値観では素直に楽しめないのだろう。全体に奇をてらい過ぎた印象で、インパクトを重視し過ぎたために製作者の視野が狭くなっているように感じる。

このような「ずれ」はこの映画がというよりもピクサーの作品のもはや特徴の一つでもあると思う。宣伝に釣られてみてみると、思っていたのと違うかったという内容が多い。

「カールじいさんの空飛ぶ家」はハートウォーミングなノスタルジー物かと思いきやハッスルじじいの大冒険。
「ウォーリー」は置き去られた切なさを復興する物語と思いきや地球よさらば宇宙大冒険。
「ベイマックス」は兄の忘れ形見のロボットとの優しい暮らしと思いきやバリバリのアベンジャーズ。あ、これはディズニーでピクサーじゃない。

ともかく幅広い観客を掴むため、なんでもかんでもアクション大作に持ち込む精神。確かにおもしろいが、なんだか一辺倒だ。
 

2019年12月18日水曜日

ランボー

ランボー [Blu-ray] 

 ★★★☆☆
~まさかのサイコサスペンス~

 1982年の米アクション映画。当時社会的な問題となっていた「ベトナム帰還兵」を主人公とした物語で、その後のシリーズにはない強い問題意識がある。
 

 ベトナム帰還兵であるジョン・ランボー(シルヴェスター・スタローン)はかつての戦友を訪ねてアメリカの片田舎を訪れるが、戦友は枯れ葉剤の影響とされるガンですでにこの世を去っていた。うちひしがれたジョンは食事をしようと街に立ち寄るが、それを見かけた保安官ティールズに不審者だと目をつけられる。街から追い出そうとするティールズに反発したジョンは保安官事務所に連行され他の保安官達に無体な扱いを受け、そのショックでベトナム時代のトラウマが蘇り、ジョンの破格の戦闘能力が解き放たれてしまった――。

 なんだか「ランボー」といえば敵地に単身乗り込んで無敵の大活躍を見せるヒーローアクションと思い込んでいたが、シリーズ第一作である本作にはそのような要素はまるで無い。ジョンは一方的に迫害されるいじめられっ子で、ひどい仕打ちを受け続けたあげく大爆発、とんでもない破壊を町にもたらすという内容。同情できるが、とばっちりの被害を受けた住民が多数いただろうという点でどっちかというと悪役
 
 保安官がジョンを追い払おうとするのが事件の発端となっているが、その気持ちも分かる。ジョンは(当然だが)スタローンの醸し出す何を考えているのか分からない危険性をびんびん放射しており、保安官としてはむしろ正しいとさえ感じる。町外れに車で送られてどっか行けと言われたところでジョンがそのまま立ち去れば良かったのだが、ここに至るまでのあれこれに堪忍袋の緒が切れたのであろう、いじめられっ子が少し意地をはって町に戻ってこようとしたのがまずかった。あとはお互いが不幸の連鎖であっという間に意味の無い戦闘に突入していくのである。

 戦闘描写は切れや迫力に欠けあまり良い出来とは映らない。爆発や炎上はここぞとばかりに派手だが、潔くドッカンドッカンするのみで溜めや爽快感はさほど無い。肝心のジョンの活躍も、相手が大して鍛練を積んでいない州兵や警察官なので一方的すぎて凄さが分からず、サバイバルゲームに興じるなりきり中年の印象。途中で拾った何かの袋から頭と手を出して腰紐でくくった姿で戦っているのも、ちょっと気を抜くとコメディーに見える。

 これは星一つにするしか無いかなあと見ていると、ラスト数分で一気に評価が切り替わった
 
 ジョンが昔の上官に心情を吐露するのだが、それが言ってみれば「いじめられた内容」の告白なのだ。ベトナム帰還兵であるジョンは帰国後も頭がおかしくなるほど社会に追い詰められていたのだ。
 これまでの鑑賞中ジョンに対して「なんだか頭のおかしい人に見えるなあ」「怪しいなあ」と感じていた自分の印象それこそが、実にこれまでジョンの味わってきた社会からの冷たい視線だったのである。一気にここまでのおかしな行動が「本当に頭をやられていたから」という裏付けを得て、そうすると何とリアルな演出と演技だったろう。
 
 そこらの中途半端な「どんでん返し」を標榜する作品などより、はるかに凄まじい回天であった。
 
 物語は何が解決するわけで無くこの主張を持って潔く終わり、最後の訴えが心に残る。
 この1作目は、以降のヒーローものとなったシリーズとは確実に異なる。気がつけば懐に入られていた恐怖と驚き。侮っていた相手に至近距離から一撃を食わされる感覚。まさにジョンが相手に対して行った反撃を視聴者も直撃されることになるのだ。
 
 この感想は、当時から感じ得るものなのか、色々拙く見える今だから感じる事なのか分からない。
 だが、茶化したり、バカにしたりする気持ちで無く、現在この作品はとんでもないどんでん返しを秘めたサスペンスになっている。



2019年12月5日木曜日

LOST SONG

LOST SONG  Blu-ray BOX  ~Full Orchestra~

 途中で見るのをあきらめた作品
 ※最後まで見てから評価すべきなので評価なし。
 ※あきらめた理由を書きます。

 二話まで視聴してやめる。


 2018年のテレビアニメシリーズ。
 歌う事が魔法的な効果を発揮する世界。歌い手の少女の故郷がその力のせいで滅ぼされて――。
 示したい内容を各パーツそのまま並べている印象で、繋がりも納得性も無い。
 主人公がやんちゃである事を示すための表現が、二階の窓から飛び出して、屋根をすべって屋外に、といった具合。
 短絡的で粗雑。素直に拙い。
 それがずっとつづくのでこれは見なくて良いかと判断。


2019年11月21日木曜日

レポゼッション・メン

レポゼッション・メン 【Blu-ray ベスト・ライブラリー100】

★★★☆☆
~一途な愛情~

 2010年の米映画。SFアクション、サスペンス、いろんなとらえ方があると思うが、あえて「ゆがんだラブロマンス映画」と言ってみたい。
 

 近未来、人類は人工臓器を埋め込むことで壮健長寿を得たが、高価な人工臓器を使用するために長大なローンを組み、その返済に追われる人生を余儀なくされていた。返済が滞ると否応なく臓器は回収され部位によるとそのまま死亡となる。その回収人(レポゼッション・メン)の一人であるレミー(ジュード・ロウ)は相棒ジェイクと共に冷酷な回収作業にいそしんでいたが、危険な仕事をいやがる妻のたっての希望で安全な部署に異動することにする。惜しんで引き留めるジェイクを振り切って最後の回収業務に挑むが、相手を感電させようとした武器が爆発。ベッドで目覚めたレミーにジェイクが聞かせたのは、レミーの心臓が致命傷を受けたため人工臓器と取り替えたという事実だった。回収する側から回収される側に転げ落ちたレミーを待つ運命とは――。

 ☆以下多少のネタバレを含みます☆
 
 ローンが払えなくなったレミーは同じく多重債務者である女と出会い共に逃避行に挑むわけだが、立ちはだかるのは凄腕のジェイク。どんどんアクション映画になっていくのかと思いきやどうも様子がおかしい。そこまで積み上げたリアリティをぶちこわすような展開が続き、クライマックスは血まみれの体と体内をまさぐり合う異様なラブシーンとなる。急転直下万事がうまくいって良かった良かったとなるのだが、見ている方にとってはなんだこりゃと開いた口がふさがらない。
 ――のであるが、ここからがこの映画の真骨頂。突っ込んだ部分が別の意味を持って再構築されていく。好き嫌いはともかく、なるほど確かにそういう演出だったと納得せざるを得ない展開。
 
 冒頭にラブロマンスだと書いたが、誰の誰に対するロマンスだったか、これも最後にぴったりと判明するのでお楽しみに。

2019年11月18日月曜日

ラストスタンド

ラストスタンド Blu-ray

★★★☆☆
~激突までの見事な構成~

 2013年の米アクション映画。
 世の中にはさまざまな料理がある。気楽に食べる日常的料理から、特別な日に食べる高級料理。映画にも色々な立ち位置があり、立ち位置で優劣がつくことは無い。卵かけ御飯と懐石料理のどちらが旨いかについて、絶対的回答はないのである。
 この映画は大衆居酒屋で食べるうまい焼き鳥だと思う。決してコース料理のような高尚さは無いが、手間をかけてさまざまな部位が仕込まれており、炭火できちんと焼き上げられている。これに代替する食い物は見あたらない独自の魅力を持っている。

 メキシコ国境近くのへんぴな町で保安官をつとめるレイ(アーノルド・シュワルツェネッガー)はロサンゼルス市警で麻薬犯罪に立ち向かった経歴を持つが、いまは大きな犯罪も起こらないこの町で静かに過ごしていた。そんな町でおかしな事が続けざまに起こる。ダイナーで見かけた不審な男達。町外れの頑固じじいが朝牛乳配達を無断で休む。とどめはFBIを名乗る者からの電話――。
 麻薬王が脱獄して国外逃亡を図るために最後にここを通る……。強制された最後の砦(ラストスタンド)の保安官として、レイは数少ない仲間とともに決死の最終防衛戦を展開する――。

 カルフォルニア州知事を2004~2011年の2期7年つとめたシュワルツェネッガーが復帰後初主演した映画なので、それを前提にしたような台詞が散見される。「もうお前は未来のない老人だ」的な揶揄に「まだまだこれからだ」と答えてみたり、町の人から最近太ったね、と声をかけられたり。確かに往年の肉体の張りはなく、特徴的だったぎこちない身のこなしはただ堅くなった老人の体としか感じられなくなっている。ただし無骨で融通の利かない雰囲気、それを主張する眼光の鋭さは決して衰えては居らず、7年間の政治家としての生活が精神的な鋭さを増大させたような気がしないでもない。

 序盤、ラスベガスで進行する脱獄とメキシコ国境の町の様子が交互に描かれ、それが徐々に結びついていくという演出。それぞれの中心は麻薬王ガブリエルと保安官レイであり、まだ関連のない二人を混在させて描いていくことで、まるでボクシングのタイトルマッチを迎えるような期待感を積み上げていく手法が見事。ガブリエルの卑劣さが描かれるほど、レイの剛健さが描かれるほど、激突の瞬間が待ち遠しくなるのである。
 果たして二人の衝突は文字通りすさまじいもので、田舎のトウモロコシ畑で演じられるカーチェイスだったり、メキシコにつながる一本橋で繰り広げられるプロレス的格闘だったり、シチュエーション含めて満足たり得るものだ。
 
 その二人の周囲を固める人間達の立ちっぷりも見事で、幼なじみとのほんのりした三角関係、ボスに無理難題を積まれるマフィア組織員、短絡的だが強力な裏切り、のんきで図太い町の面々――。枚挙にいとまがない一癖二癖あるキャラクターが全編バランス良くちりばめられている。作品自体、脱獄のスリル、武装集団との大銃撃戦、超スピードのカーチェイスなど、盛りに盛ったゴージャスな内容となっており、串焼き各種の豪華盛りである。

 決して緻密な映画ではないが、豪快で外連味の効いた魅力あふれる良作だと思うが、興行的にはかなりの失敗だったらしくシュワルツェネッガーにとっても俳優業復活の痛い船出となっただろう。比べるのはおかしいが、例えば森田健作が再度俳優業に復帰したところで何の感慨も起こらないわけであるし、天下のシュワちゃんといえどもそのネームバリューは当時を知るものにとって信じられないほど低下しているということだろうか。

2019年9月18日水曜日

ライフ


★★★☆☆
〜競り負ける絶望〜

もったいない印象が残るSFスリラー。
火星の衛星で生命体を見つけた宇宙飛行士たちは、地球に帰還する前にその安全性を確かめようとする。
クリオネのような幼生はヒラヒラと美しく、危険性などないように思われたが、強烈な成長速度でクルーの想像を超えた危険生物に。

危険生物をなんとかしようと自身の命を顧みず奮戦。自己犠牲作戦を連発するが、これがことごとく失敗。
自己犠牲のおかげで何とかその場を切り抜ける、というのが良くある展開だが、今作では自己犠牲でどんどん事態が悪化する。
しかも失敗の原因が「好奇心」「精神力」「仲間意識」「家族愛」など、本来人類を救いそうな概念。(好奇心は違うかな)
さらに人類の代表者は(当然だが)全員が宇宙飛行士で、皆エリート。
結構うかつで、ミスも多いが、ホラーのモブ役のばかばかしさとは違い、皆自律的にきちんと動く。
なので馬鹿には見えないが、もうひと踏ん張りが効かない、頼りない印象。
最後の最後もケアレスミスというか、強烈な運の悪さというか……。

今作は人間が人間らしさゆえに招いた事態を人間の力でなんとかしようとしたあげく、失敗するという内容。
どんな宇宙生物の戦いよりも、本質的に競り負けている感じで、絶望感は深い。

映像も美しくキャストも豪華。日本人にとっては真田宏之 が嬉しい。
アニメファンには吹き替えの坂本真綾が素敵。
クリーチャーの表現も素晴らしく、閉鎖空間なのに画面持ちも良い演出。

それなのに物足りない感じが残るのは、結末があまりに断ち切る感じだからか。

2019年9月13日金曜日

リベンジトラップ ー美しすぎる罠ー

★★☆☆☆
〜邦題ひどすぎ〜

「ゴーン・ガール」でミステリアスな美女を演じたロザムンド・パイク主演のサスペンス映画で、翌年に公開されている。
ちょっとした隙を突かれ、自宅でレイプ被害にあった女性が、収監された犯人にとった行動とは……。

本来物語の進行に沿って一体どうなるのかとハラハラするのがサスペンス映画だと思う。
それなのに今作は副題に「美しすぎる罠」とついているものだからどうしようもない
「リベンジトラップ」という邦題自体も厳しいが、横文字な分だけましかな……。
ともかく推理小説の表紙にオチが書いてあるようなもので、なんちゅう最短距離のネタバレ。ギネス級なのでは。
ちなみに原題は「Return to Sender」で、ちょっとミステリアス。

好意的に解釈するとタイタニックの副題に「巨大客船南氷洋に沈む」とついている感じなのかも知れない。
沈むことは分かっている前提で、そこまでの経緯、ドラマを楽しむというスタンス……じゃないよなあ。
「Return to Sender」では内容が想像できないので、キャッチーにしようとしたのだろう。

主人公は独立独歩のキャリアウーマン。気の強い狂気じみた雰囲気はゴーン・ガールの役どころとも同じで、はまり役だと思う。
奇をてらわない地道な演出とカメラアングル。きっちりと撮影された画面。
そこそこ出来が良い雰囲気なので、ひょっとして題名がミスリードなのか! 頼むそうあってくれ! とも思ったが、特に波乱は無し。
彼女の異質性も当初から感じられる演出だったので、彼女の過去含め最後の展開も自然に感じられるが、意外性が無いのは良いのか悪いのか。

きちんと作られた凡作。

2015年11月24日火曜日

龍ヶ嬢七々々の埋蔵金


☆☆☆☆
~アニメーターの努力が切なく迫る~

ライトノベルを原作とした11話からなるアニメーション
洋上に浮かぶ学生のための学園都市ならぬ学園島。
それを作った龍ヶ嬢七々々が島の各地各施設に隠した超常的な能力を持つお宝を巡る物語。
課外活動としての宝探し、名探偵の女の子、助手の男の娘、古い殺人事件の謎、立ち去らぬ幽霊――。
酒乱の美人大家、年上の幼なじみ、戦闘狂の対立者、主人公の生い立、お宝の能力を使った頂上的戦闘――。
およそこれでもかと受けそうな要素を詰め込んだ結果、11話の中ではまったく収まりがついていない。
謎は謎のまま、いわゆる「俺たちの戦いはこれからだ!」で終わる。
ラノベ原作とは知らずに見ていたので、あまりにも投げっぱなしな最後にこれはこれで潔いと感心してしまった。
状況設定やキャラクターに実は意味が無く、「現代の宝探し冒険譚」を行うためだけの設定なのかと深読み。それにしては悠長で必要なさそうなエピソードに終始するなあ、と。
しかしそういうことではなく、二期期待の原作そのままタイプだったことが(自分としては)判明。してみると一体このアニメーションは何だったんだろうという感慨が湧き起こる。
映像のクオリティは高いと思う。キャラ、背景、エフェクト共に安定しており、総合的に見て美しい。
特に格闘シーンはキャラクターがアクロバットな動きを小気味よく展開。非常に高い技術力を感じる職人芸。
しかしそれらすべてを空虚とし、切なくさえ感じさせてくれる、物語と演出。
原作特有のものなのだろうが、まず主人公に感情移入しがたい
最初は主人公の素性が隠されており、それをトリックとした展開が序盤のクライマックスなのだが、何とも陳腐な印象。主人公のちぐはぐさ、コロコロ意見の変わる節操のなさだけが印象に残り、嫌悪感を植え込まれる。
この悪い印象は最後まで覆されることなく、それどころか他の登場人物も同様、控えめに言っても腹が立つ人物ばかり。キャラクター付けのために無理矢理演技させられている感じなのだもの……。
会話もこう言えばそう答えるのだろう、という推測をなぞるだけの印象。説明的なセリフが積み重なり、早く先に進んで欲しくてイライラする。演出もあれこれ頑張っている印象だが、小手先の範囲。脚本を越えることは出来ず、なのだろう。
この作品は原作小説の宣伝のために存在しているのだと結論するしかない。ただ、宣伝としてもあまり有用ではない。これを見て原作を読みたくなるかと言えば、それは希な反応だと思うから。

2015年11月22日日曜日

LUCY

LUCY/ルーシー [Blu-ray]

★★★★
~短いのを感じない密度~

「レオン」「ニキータ」で名を馳せたリュック・ベッソン監督のバイオレンスSF。
脳はその能力の10%しか使われていないという「よくある」設定のもと、超人的能力を身につけたヒロインが為すこととは。

ルーシーとはエチオピアで発見されたアウストラロピテクスの骨格化石。
この映画では現在の人類への進化の突端となった存在として描かれている。つまり、主人公も次の進化への突端。
このように、超能力を個人的な性質と限定せず、やがて訪れる人類の姿として提示してある点が面白い。
脳力解放の設定は様々な作品に使用されているが、20%でこの能力が発現、30%ではこの能力……と、見ていて唖然とする設定が当たり前に提示されるのがすがすがしい。その力もむちゃくちゃ。
その説明をしているのがモーガン・フリーマン。異様な説得力にひとまず煙に巻かれてしまいたくなる。

そんなルーシーを付け狙うのが韓国系犯罪組織のボス。演じるチェ・ミンシクは「オールドボーイ」の主演でとんでもないインパクトを残したが、今回も負けず劣らずキレッキレ。超人に怨恨のみで挑む破滅的な姿はそれはそれで魅力的。
物語のスケールは最後まで加速度的に大きくなり、下手をすると置いてけぼりになって映画終了となるが、地に足のついた(?)犯罪組織のがんばりのおかげでかろうじて現実に片足をのせている感じ。

リュック・ベッソンはレオンのようなバイオレンス物と「フィフスエレメント」のようなSF物を撮っているが、今作はこの二つがお互いに悪影響を与えない形でうまく同居しており、氏の総集編のような印象を受る。編集の引き出しが多いというか、モンタージュ技法などイメージカットの多様が印象的。短い時間にしっかり満足のいく密度で映像を詰め込んでいる。

監督の遊び心と内容のいい加減具合がちょうどマッチした快作。

2014年5月30日金曜日

ロボコップ(2014)

 
☆☆☆☆
~魂の惨殺~


ポール・バーホーベン監督の金字塔をリメイク。
ミニチュアアニメーションなど旧式特撮技術を多用したオリジナル版と比してCGによる画像完成度は高いのに、どうにも魅力の薄い駄作。
主人公の喪失したものの量が違いすぎる。
前作マーフィが失ったのは、記憶、家族、アイデンティティ。代わりに身につけた圧倒的な頑強。まるで悪魔に魂を売った(売らされた)ようなそのアンバランスな存在。
それに比べて今作の彼のなんと中途半端なことか。覚悟や凄みの無いまま、周囲に踊らされ続けるだけのピエロに成り下がっている。
それに引きずられて物語の陰影も薄くなり、派手な戦闘シーンもただのにぎやかしにしかならない。
偉大なオリジナルに対抗するために、様々な努力をしたのだろう事は感じられる。
鈍重なパワータイプのイメージから、俊敏なスピードタイプへの変更。
乗り物もパトカーから専用バイクに。
はじめは黒塗りにされ、後に……。
だがどれも、変わって良かったね、という要素ではない。
上辺だけで、血肉が通っていない印象。

描写のグロテスク具合はオリジナルの方がひどいと思う。生きたままの身体欠損をさっと見せるのがバーホーベン監督流だと感じる。
今作も中々えぐい描写はあるが、それよりも精神的なスプラッタがひどい
脳をいじって記憶を改ざんしたり、人間の意志をすげ替えてしまう哲学的ゾンビの領域に突入したり。
これに比べれば、オリジナルは人間の精神に対して大きな敬意を払っていたと思う。このような状況のロボコップに家族愛を体現させても、心底寒い。
やはり、ヒーローにはその代償として悲しい過去と取り戻せない喪失があるべきなのだと思う。

2012年12月21日金曜日

リンカーン -秘密の書-

★★☆☆☆
~違和感のある強さ~

「ウォンテッド」で鮮烈なイマジネーションを見せた:ティムール・ベクマンベトフ監督作品。
あの、エイブラハム・リンカーンが実はバンパイアと戦うハンターだったというとんでも設定。どう料理されるのかという期待に反してどうも面白味のない作品だった。
リンカーンを筆頭に登場人物に魅力を感じないのがつらい。
時間に比して描きたいエピソードが多すぎるのか、早回しのあらすじを観ている印象で、物語の流れは分かるのだが、それが心に竿をささない。
キャラクターはそれぞれに魅力的な要素を持っていると思うのだが、主要人物が多すぎるのか、各人を描き切れていない。典型としては、リンカーンのヴァンパイアハンターとしての能力。怪力、不死身、透明化。このような力を持つ化け物に立ち向かうリンカーンのハンターとしての能力に全く説得力がない。
ヴァンパイアに恨みを持つただの人間がそれらと互角に戦うには、とてつもない修行が必要だと思うのだが、観る限り極短期間、斧を振り回していただけだ。あれで対抗できるなら誰でも対抗できる。ひょろりと背の高い印象もハンターの印象としては良くない。ぶっちゃけていうと、全く強そうに見えず、戦っているときでさえ違和感の方が強いのだ。

これら不満点は同じ原因からの問題だと思う。
リンカーンは余りに有名で、すでにエピソードが多すぎるのだ。
友人や妻子の構成。アメリカ南北戦争。政治家のリンカーンを描くだけでてんこ盛りなのに、ヴァンパイアとの暗闘まで背負わさせるのは酷すぎる。
なまじ有名人物が周囲にいるため、人物の配置にも制限が生じているようで物語としての役割がかぶっている。

最後の頼りは絵の力だが、馬群に紛れての戦闘や、ヴァンパイア達との乱闘など、ストップモーションを織り交ぜた映像は迫力ある。が、今一つ独創性を感じることもなかった。

上映時間は100分台と、比較的短めだ。多少延長してその時間を特訓や人物の彫り込みに当てていれば全体の印象がずいぶん変わったと思うが、そうできない諸処の事情があったのだろう。ウォンテッドを気に入っていただけに残念だ。

2011年8月7日日曜日

ライアーゲーム ~ザ・ファイナルステージ~

★★☆☆☆
~決勝戦を劇場で~

テレビドラマを2シーズンこなした果てに最終エピソードを劇場版で公開。自分もテレビドラマを一通り楽しんでいたが、映画館に足を運ぶほどではなくテレビ放送で視聴した。
こういったいわゆる劇場版商法は、これまでの時間を人質に取られたみたいで反発したくなる。なにか納得いかず卑怯なんて言葉も浮かぶが、おそらく突然告知するのが阿漕だと感じるのだ。最後の最後でそれまで説明の無かった料金を求められるのは、とても詐欺っぽい。フェアじゃない。
テレビ放送で一応完結してくれていれば、さらなるコンテンツの登場を喜べるだろうが、今作は見事にテレビ版は中途半端。これまでの戦いの決勝戦を映画でやるというのだから何を言われても仕方がない。最後を豪華に締めくくってくれて嬉しいという人もいるだろう。自分にも多少その気持ちがある。
公開当時は見に行かず、先頃のテレビ放送でやっと視聴した。
もともとテレビ版も編集にこってあれこれ手を尽くしていたので、映画だから何が豪華と言うこともなく、そのままのクオリティ、そのままのテンション。納得のいかないところ、つじつまが合わないところを展開の早さで煙に巻き、うまく興味を持続させていく。
見事だなと思う。映画の流れに身を任せるのが気持ちよい。ごちゃごちゃ考えず、ややこしいトリックはああそうなんだで流してしまうのが楽しみ方だろう。
お金を払ってみるかというと、やはり少し物足りないが、ドラマの延長としてテレビで見る分には完結編として十二分に楽しむことが出来た。

2010年10月29日金曜日

リング

★★☆☆☆
~和風ホラーの定番~

一世を風靡した和製ホラー。
マルチメディア展開で一気に人気の頂点を極め、強烈な印象を残してこれまた一気に消えていったようだ。恐怖のキャラクター「貞子」は怪異の典型として定着した。

感染していく呪いの恐怖はビデオテープが媒介となっている。ビデオテープは当時非常に身近なメディアであったため、恐怖をリアルに感じることが出来た。
映画の作りとしてはオーソドックスだが手堅いもので、主演の真田広之が映画の格を上げている。人気の波をうまくすくい上げることに成功。

時を経た今見ても興味を引かれる展開と恐怖。
詰め込みすぎず、薄すぎず、ちょうど良いあんばいの映像密度。
安っぽく見える場面も多いが、楽しむことが出来る。

らせん

★☆☆☆☆
~恐怖から不気味へ~

一作目「リング」の続編。
小説は「リング」「らせん」「ループ」という連作になっているが、ループは映画化されていない。

リングの登場人物を引き継いで、物語は呪いの規模を日本中へと拡大させていく。荒唐無稽さが強くなり、素直に飲み込める範疇を超えてしまっているため、感情移入しにくく、あまり怖くない。
実体のない訳の分からないものに対する恐怖が一作目だとするなら、今作はその恐怖が実体をともなっていく過程をえがいており、物語の印象は恐怖よりも不気味さへとスライドしている。

一作目を受け継いだ物語を見たい者には、拒絶反応を起こしそうな要素が多く、単体で見るとただただ妙竹林な映画という事になる。多くの映画に埋もれていく、凡百の作品。

リング2

★☆☆☆☆
~結局ループと同じ印象~

原作にそった正当な続編「ループ」とは異なる方向の続編が今作。
ループはあまりに突拍子もない方向に話が進んだため、このような作品が出ることもなるほどとうなづける。が、印象はループとさほど変わらないように感じた。
今作も、訳の分からないものに輪郭を与えようとする物語だからだろう。
物語は新たな事件を設定し、それを解こうと奔走する人々の姿を追うが、物語として吸引力のあった一作目の謎は、一作目できちんと解けてしまっている。それ以上の状況を設定できない限り前作を超えることは出来ないだろう。
そしてそれはやはり難しいことで、今作は縮小再生産の続編となってしまっている。

続編を二種作るというアイデアは興味深いが、それだけの作品となってしまったようだ。

2010年5月12日水曜日

ルパン三世 バビロンの黄金伝説

ルパン三世 バビロンの黄金伝説 [DVD]

☆☆☆☆
~あなたを愛しているわ~


ルパン三世の劇場第三弾。
第一弾「ルパン VS 複製人間」、第二弾「カリオストロの城」が評価を高めているのに対し、本作はもはや無かったような扱い。だが、確かにそれも仕方がない。

テレビのサードシリーズ、ピンクジャケットのルパンが今作の主人公だ。
サードシリーズは原作の洒脱な画風を強調したものになっており、見方によっては雑や手抜きに見える。今作は残念ながら「味」で済む範囲を超えて、クオリティが低い
全体の構成もテンポが悪く、おなじみルパン&銭形のカーチェイスが妙に長かったり(しかも映像の使い回しが多い!)、会話がつぎはぎでうまく流れてなかったり。
コミカルな表現もサードシリーズで強調される部分だが、アニメーションの動きとして出来が厳しく、気持ちの良くない動画となっており、悪ふざけになってしまっている。

これら状況からみれば観る価値のない有象無象の一本となるが、自分はこの映画がなぜか忘れられない。
公開は1985年。自分が12歳の時。劇場で見た記憶はなく、数年後テレビで見たのだと思う。思春期まっただ中だ。
そんな自分には、いくつかのシーンが焼き付いている。

ロゼッタばあさんが、とぼとぼと線路を歩くシーン。
ルパンが事の顛末を不二子に説明する絵本のような画面。
列柱の螺旋を流れる地下水道。
下水道の蓋で夜空に飛び上がるルパン。
そして、最も心に残っているのが、ヒロインの別れの言葉。
「ルパン、あなたを愛しているわ」
決まり文句といえばこれ以上の決まり文句もない。
なのに、このシーンが好きで、ずっと覚えていた。

今回十年以上ぶりにみるにあたって、気づいたことには、この大ざっぱな物語や画面の中で、ヒロインの描写だけが細やかで継続的なのだ。
きちんと表情が感情を物語って、最後の言葉につながっている。おしむらくはルパンとヒロインの今作以前の関わりが全く描かれておらず、気持ちの突端が不明なのだ。
ヒロインの孤独。一人で過ごした長い時間。それを受けてこそ、最後の言葉が光るのだろう。
おそらくヒロインの設定が自分の好みなのだ。一途に長い時間を過ごしたヒロインに、自分は弱い。
「タイタニック」しかり、「LUNAR2」しかり。
だから人にはとても勧められないし、★も一つだ。だけどまた10年以上後、僕は一人でこの映画を見直すだろう。
そんな、作品。

ちなみにヒロインの声優はタイアップでアイドルの河合奈保子。
棒読みに近い台詞のたどたどしさも、その不器用がキャラクター性に見合って悪くないと思っている。