~入りきれない壁~
★★★☆☆
2003年に制作、公開された韓国映画。監督は『パラサイト』でアカデミー賞を取ったポン・ジュノ。
1986年10月、農村地帯華城市の用水路から束縛された女性の遺体が発見される。地元警察の刑事パクとチョが捜査にあたるが、捜査は進展せず、2か月後、線路脇の稲田でビョンスンの遺体が発見される。どちらも赤い服を身に着けた女性で、被害者の下着で縛られた上に、絞殺されていた。<Wikipediaより>
今作は実際に発生した「華城連続殺人事件」を下敷きにしており、公開時点でも犯人は特定されていなかった。2019年にようやく犯人が見つかったが時効が成立しており罪には問えない状況。ただし、犯人は別の強姦殺人ですでに無期懲役の執行中であったとのこと。
事件を元にはしているがノンフィクションでは無くフィクション。陰惨ながらも各所魅力的な内容となっている。
現場捜査官のパクはいわゆる前時代的な刑事。しぶとく事件にしがみついていく熱意は持つが、これが犯人だと目星をつけたら、容赦なくつきまとい、警察署内の拷問部屋に連れ込んでは都合の良い供述をさせようとする始末。スニーカーの足跡を押し込むなど証拠の捏造にも迷いが無いが今回は拉致があかない。自白強要がマスコミに漏れ捜査陣が糾弾される始末。
そんな中、ソウル市警のソ刑事が参入。パクと異なり科学的な捜査、事実の積み上げを信条とし、拷問や強要を是とはしない。同じように強い情熱を持って犯人逮捕に挑む二人だが、対照的な存在ということになる。
この構図が事件の進展に合わせて変容していくのが本作の魅力の一つ。
パクは頭を押さえられながらも、自分が見ていなかった真実をソが明らかにしていくにつれ、感銘を受けて徐々に己を見つめ直していく。
ソは残酷な事件の展開に己を失い、軽蔑していた拷問脅迫へと近づいていく。
最終的には立場は完全に入れ替わり、パクは刑事をやめていく。
ただの田舎風景なのに、わびさび含めた透き通った印象の映像が美しい。みすぼらしい食堂など、生活感のある部分はとことん汚いので全体としてのバランスがとられており、猟奇的な事件にリアリティを与えている。
容赦の無い暴力描写(痛そうなシーンが多い)も含めて目を離せないサスペンスに仕上がっているが、主要人物が全て大仰で暑苦しく、好きになれない。パクにしてもソにしても魅力はあるのだが決して友達になりたいタイプでは無く、感情移入しがたい壁を終始感じてしまう。
主人公たちがやたらハイテンションで暴力的。年齢に関係なくチャラいのである。これは時代や作品によるというより、韓国映画の特徴だと思う。結末の割に暗い気分にならないのは主人公のチャラさのおかげなので悪いことばかりでは無い。
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関連作のリンク。
◆同監督の『スノーピアサー』 の自分の感想はこちら。
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