2021年8月15日日曜日

リオ・グランデの砦

リオ・グランデの砦 HDリマスター [Blu-ray] 

★★☆☆☆
~丁寧な脚本のウエスタン~


 1951年制作の米映画。日本公開は1952年。
 名匠ジョン・フォード監督の騎兵隊三部作の一つで、後の二つは『アパッチ砦』『黄色いリボン』。
 南北戦争後インディアン討伐を任務とした騎兵隊を舞台として家族のつながりを描いた映画。
 
 西部劇とくればともかく戦闘に明け暮れるアクション映画かと思いがちだが、ジョン・フォード監督の映画は異なる。映画を作るための方便として西部劇の形をとっているが、真実描きたいのは土地に根付く人々の生活の有様であるように感じる。脚本は丁寧に丁寧に作られていて、小さな言葉の端々に含蓄や意味が垣間見える。
 

 リオ・グランデはアメリカ南部、メキシコとの国境付近であり、国境を侵犯できない両軍の合間を行き来するようにしてインディアン達の攻撃が頻発していた。部隊を指揮するカービー・ヨーク中佐(ジョン・ウェイン)は国の命令に従って国境内側での作戦を行うが被害は続くばかり。補充兵として新兵が到着するが、その中にカービーの一人息子ジェフが居た。ジェフはカービーと妻キャサリン(モーリン・オハラ)の紛れもない実子であるが、過去の事件でキャサリンがジェフを連れて別居して以来もう10年以上会っていない。親として、子として上官と部下としてぎこちないやりとりが始まるが、なんとキャサリンも乗り込んできて――。


 偶然(?)配属された息子はともかく戦場に奥さん連れ込むの? と驚くが、シチュエーションとしてはこの上なくおもしろい。実際当時の戦場がどうだったのかは分からないが、映画の中では洗濯を受け持つような婦人団が結構な人数随伴しており、それが部隊員誰かの妻や恋仲という感じ。子ども達も1ダースほど。ラッパ兵や進軍のための歌唱隊(これは要人歓迎の儀式に活躍。今作では出番がめちゃんこ多い)も賑やかで、ともかく世界大戦のイメージとは隔絶している。言うなれば貴族的趣味や様式美が色濃く残っている印象。ロマンが残った戦争。
 真実かどうかはともかく舞台背景としてとてもおもしろい。
 
 映画を観ただけでは分かりにくい部分があり、以下ははっきり理解しておいた方が楽しめる。

 
 ・南北戦争時、北軍に従軍していたカービーは命令に従って妻キャサリンの親族の農場を焼き払った
  ※このとき実際に火をつける作業に当たったのが……。
 ・それに怒ったキャサリンはジェフを連れてカービーの元から離れた
 ・離れてはいるもののカービーは二人を気にかけそれ以降の動向を把握していた


 馬の疾駆するシーンの迫力は近年の映画に負けない。というか、別次元の生々しさ。ジョン・フォードは黒澤明との会話で乗馬シーンのこつは「コマ落とし」と「土煙」だと語ったと聞いたことがあるが、まさにそれ。不自然ぎりぎりの馬の走りは、あっという間に小さくなり、また近づいてくる。ある意味特撮なのかも知れない。土煙の効果もすさまじく、画面が賑やかで変化に富む。
 白眉のローマ乗りシーン(二頭の馬を軽装させ、それぞれに片足ずつ乗せて仁王立ちの状態で疾駆)はこれはもういろんな危険性排除から今では再現不可能なのでは……。CGやVFXで似たようなシーンは作れるだろうが、さらっと長回し気味に追いかけていくようなカットは採用されずばたばたと慌ただしい物になりそうだ。

 白黒映画だが観ていると色を感じることがある。
 これは他の白黒映画でもままあることだが、明らかにそうであるという材質について色味を感じるのである。今作の場合は荒れ地とそこに生える下草。土の色と草の緑がうっすらと感じられて、あれ、古くて色あせたカラー映画だっけ? とまで混乱した。
 映像は、脳が見ているのだなあ。 

 

 

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