★★★☆☆
~記憶していたよりハードな物語~
1983年のTVアニメシリーズを1988年に全三巻にまとめた総集編。各巻1時間弱なので全49話(ざっと16時間)をだいたい6分の1に圧縮していることになる。監督は『機動戦士ガンダム』の 富野由悠季。キャラクターデザインは『伝説巨神イデオン』『戦闘メカ ザブングル』の湖川友謙。
精霊や妖精が存在し、オーラの力で機械を駆動させる世界、バイストン・ウェル。
海と大地の狭間に存在するといわれるその世界はオーラ・ロードによって現実世界と接続されており、そこに住む者を「地上人」と呼んでいた。
地上人はバイストン・ウェルの人々に比べてオーラの力が強いため、バイストン・ウェルの領主、国王たちは己の勢力を拡大するための戦力として地上人を召喚し、相争っていた。
主人公ショウ・ザマは日本で暮らす青年であったがバイクで失踪中にバイストン・ウェルに召喚。オーラ力(ちから)で駆動する人型兵器、オーラバトラーの搭乗員として戦渦に巻き込まれていく。
聖戦士ダンバインは玩具会社がおもちゃ販売を前提にスポンサーしていたアニメーションなのだが、『宇宙の戦士』の宮武一貴によるデザインは子供受け、一般受けはしにくい物だった。巨大な虫(というより巨獣)の甲殻を外装としているという設定に合わせてデザインされたオーラバトラーは直線が極端に少ない生物的なフォルムをしており、足先は巨大な爪として構成、飛翔用の羽根もトンボのような雰囲気とかなり攻めている。
おもちゃ類の販売は難航し、途中スポンサーの変更があったりと打ち切りの憂き目にも遭いながら何とか完走した作品とのこと。だがこの唯一無二のデザインは時が立っても陳腐化すること無く、逆に時が立つほど他の幾多の作品の中にあって輝きを放つ。今回視聴して改めてその格好良さを再認識させられた。
やはり総集編ではあらすじを追うくらいしか出来ず、幾多の勢力、数多の人物が理解できないまま現れ、消えていく。それでもとっ散らからずに本筋は追っていけるのだから、総集編としては良くまとまっていると言えるだろう。
その上で以下のような感想。
・人が死にすぎ
特に終盤は凄まじい勢いで人が死ぬ。モブでなく主要人物が結構あっさり退場していくのであっけにとられてしまう。
総集編だと思い入れが薄いので軽く感じるが、49話の長旅を経てと思うと、ちょっときつすぎる。
・ファンタジー世界と現実世界の接触が楽しい
中盤以降はバイストン・ウェルの戦力が地上世界に現れ、慣れ親しんだ世界地図の上で戦闘を繰り広げる。
昆虫的なロボットと、戦闘機、戦闘ヘリと行った各国軍が戦闘、共闘を繰り広げるのはこれだけ色々な作品を見てきても新鮮。
これもオーラバトラーのデザインが根っこから現代兵器とは異なっていると感じられるからだろう。デザインの力すごい。
・OP&EDが魅力的
歌謡曲を持ってきてはめるのではなく、この作品用に作られた楽曲で、ダンバイン、バイストン・ウェルといった作品由来の単語がきっちり使われている。
作品名叫び系のOPはともかく前奏から格好良く、耳に残る名曲。しっとりバラード調のEDは妖精が花の上を走るという単調なアニメーションと共に流れるが、このアニメーションがコマ数細かく綺麗で気持ち良い。ぼんやり見ているとソウルフルなサビが襲いかかってきて最後は柔らかく終曲。素晴らしい。
・ガタガタで質が低いのに見ていられるアニメーション
近年のアニメはTVシリーズであっても3DCGを使用して密度とクオリティを上げて来ているが、物語の中の要素としては説明が足りなかったり、引っかかりが無さ過ぎたりと3DCGをつかっているから良いということではない。今作は古い作品であり、締め切りに追われるスタイルのTVアニメであるため、アニメーションとしては中割が少なく、ガタガタ動く印象が強い。まさにフルアニメ(24フレ)に対するリミテッドアニメ(12フレ以下)である。
だが、きっちり動いて感じる。何が起こっているのか(製作者は何を見せたいのか)もしっかり伝わってくるのだ。絵コンテの基本がしっかりしている上に、原画がきっちり押さえられているのだろう。これはゲームでいうと3Dポリゴンと2Dドットの関係に近いのかも知れない。
決めポーズがことごとく格好良い。
・女性キャラが魅力的
これは大人びたキャラデザイン、スケールの大きな物語が基盤となっているのだろうが、言い回しやちょっとした行動がともかく魅力的なのだ。
気が強く、能動的で無謀なのに、突然しとやかに、甘やかな空気を湧き出させる。
富野由悠季監督の魅力は様々に語られるが、台詞、特に語彙と語彙を結びつけるセンスに特筆すべき才覚を感じる。女性の台詞ではないがオーラバトラーの推進機関の輝きを「オーラ光(ひかり)」と言ったり、そもそも「ダンバイン」という題名の響き自体素晴らしい。
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