★☆☆☆☆
~魂の惨殺~
ポール・バーホーベン監督の金字塔をリメイク。
ミニチュアアニメーションなど旧式特撮技術を多用したオリジナル版と比してCGによる画像完成度は高いのに、どうにも魅力の薄い駄作。
主人公の喪失したものの量が違いすぎる。
前作マーフィが失ったのは、記憶、家族、アイデンティティ。代わりに身につけた圧倒的な頑強。まるで悪魔に魂を売った(売らされた)ようなそのアンバランスな存在。
それに比べて今作の彼のなんと中途半端なことか。覚悟や凄みの無いまま、周囲に踊らされ続けるだけのピエロに成り下がっている。
それに引きずられて物語の陰影も薄くなり、派手な戦闘シーンもただのにぎやかしにしかならない。
偉大なオリジナルに対抗するために、様々な努力をしたのだろう事は感じられる。
鈍重なパワータイプのイメージから、俊敏なスピードタイプへの変更。
乗り物もパトカーから専用バイクに。
はじめは黒塗りにされ、後に……。
だがどれも、変わって良かったね、という要素ではない。
上辺だけで、血肉が通っていない印象。
描写のグロテスク具合はオリジナルの方がひどいと思う。生きたままの身体欠損をさっと見せるのがバーホーベン監督流だと感じる。
今作も中々えぐい描写はあるが、それよりも精神的なスプラッタがひどい。
脳をいじって記憶を改ざんしたり、人間の意志をすげ替えてしまう哲学的ゾンビの領域に突入したり。
これに比べれば、オリジナルは人間の精神に対して大きな敬意を払っていたと思う。このような状況のロボコップに家族愛を体現させても、心底寒い。
やはり、ヒーローにはその代償として悲しい過去と取り戻せない喪失があるべきなのだと思う。
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