2014年5月30日金曜日

アメイジング・スパイダーマン

★★☆☆☆
~新旧比較~

映画館で見たきりだったのだが、続編公開に合わせてテレビ放送されたのを再鑑賞。

やはりサム・ライミによる前三作のシリーズ(2002~2007)と比較することになる。
サム・ライミ版一作目からちょうど10年目の2012年公開。
映像技術は当然時間なりに高まっているのだと思うが、インパクトいう点で前シリーズに劣る印象。
蜘蛛の糸による移動シーンも、スリリングな空中戦も、豪華で見栄えのするものだが、前と同じように感じられる。

スパイダーマンの誕生が描かれる点は同じだが、設定や物語は大きく異なる。
アメコミの状況や、スパイダーマンの歴史は明るくないのでどういった前提によるのかは分からないが、思っていた以上に違うので前シリーズの焼き直し感は薄い。
主人公、ピーター・パーカーの人格、ヒロイン、スパイダーマンになる過程、はじめの敵……。
十分別物として楽しむことができる。

自分が寂しく感じたのは、ピーターがかなりのリアル充実組に入っていた点。

前作では学校ではからかわれ、カメラだけが外界との接点であるかのような、根暗の秀才。
そんなピーターがスパイダーマンとなり立場を逆転させていく痛快さが強く押し出されていた。
今作では端から結構イケてる。いじめられる方ではなく、いじめている側をとがめる強さを持っている。(その後ボコられるが)
スマホを使いこなし、恋人も早々に手に入れ、卒業式の充実っぷりと言ったら……。
何もかも思い通りかというとそうではない。前作では叔父叔母を親族の中心にすることで軽く過ごしていた両親の不在とその原因が新ピーターの大きな問題となっている。前作では叔父の言葉がピーターを規定するものだったが、今作では実父、叔父、彼女の父、と様々な父性が主人公を導き、また縛り付けている。

ヒロイン像に関しては今作の方が確実に一般受けするだろう。
前シリーズのヒロイン、メアリー・ジェーンはこれでもかというくらい惚れっぽい。一本の映画中で4人も渡り歩くという凄まじさ。そういう女性に惚れるピーター・パーカーがまたオタク気質でたまらんと言う手合いもありそうだが、万人受けしそうにない容貌と言い中々強烈。
今作のヒロイン、グウェインはまるっきり反対で、一途であり、理性的であり、地に足がついており、かわいい。確実に軍配はグウェインに上がる。

ヒーローとヒロインセットで見比べてみると中々に興味深い。

前シリーズはさえない秀才とビッチ(最近はそんなに悪い意味でもないらしい)。お互いあまり裕福ではない家庭。
ヒーローは堅く、ヒロインは緩い。
根本的にさえない者同士が、様々な事件を経て陶冶されていく。人並みに近づいていく。
スーパーヒーローとしての活躍はあれど、ただのラブロマンスとしてみた場合、非常に身近だ。

新シリーズは普通の青年(多少学力はありそう)と才女。ヒロインは割と裕福。主人公の貧乏描写は少ない。
ヒーローは軽く、ヒロインは堅い。
すでに一定の地位や自分を持っている者同士が、それ以上を求めて悩み、求める。
スーパーヒーローであることは早々にヒロインとの共有事項となり、おとぎの国のラブロマンスだ。

前シリーズの垢抜けなさに比べて今シリーズのなんと洒脱なことか。
これが10年の世の変化だとは言わないが、ああ、そうかもなと感じなくもない。
旧ピーター。公私を切り分け、仕事(ヒーロー)をまじめにこなすあまり家庭を顧みない古いサラリーマン。
新ピーター。仕事(ヒーロー)はそれなりに私事を重視して人生を楽しむ今風のサラリーマン。
ちょうどそんな感じだが、良い悪いではないと思う。
異なる主題を持ち、それにアプローチした結果だろう。
今作の主人公達は十分に魅力的で、スピーディーで、楽しい。

ただ、さえないピーターが僕は好きだった。

まじめで、それなのにM・Jなんかに惚れて、小学生の時からずっと好きで。
ヒーローであることを受けとめ、責任を持ち、暑苦しくのたうち回って。
どこまで行っても垢抜けないピーターが僕は好きだったのだ。

比較はここまで。
単体作品として観た今作の弱点として、敵に魅力がない。
リザードマンは壁も移動できるししっぽもある。爪も強力で再生能力も驚異的。
強いが、ただのでかいトカゲだ。
絵的な見所はスパイダーマン側のアクションが主体になり、見所が少なく感じる。
話も決着のつかない要素が多く、尻切れトンボの印象が強い。
続編前提なのだろうが、単体で見た時のすっきりしない感じはひとまず評価を下げるだろう。

それにしても、なぜこんなに早く新シリーズを立ち上げなおしたのか。
旧シリーズ三作目は2007年公開。五年空きはやはり短いと感じる。
ハルクも気がつけば同じ話が映画化されており、アメコミ系実写映画の乱立にはいささか閉口する。
きっちり3Dにするための新シリーズ、と考えれば多少すっきりするかも知れない。

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