★★★☆☆
~フェアリーテイル~
漫画原作のワンクールアニメ。
原作完結よりも先にアニメは終了したが、尻切れトンボな形ではなく原作と同じまとめ方がなされた模様。きちんと終わっていて気持ち良い。
原作未完状態のアニメ化は昨今非常に多く、オリジナル展開にしてきちんとまとめるか、バッツリと断ち切って終わるかの二者択一。
もちろん程度には差があるが。
二期への期待をつないだり制作の安全性で考えると「断ち切り」の方が有力になっても仕方がない。
オリジナルの展開でまとめる労力は甚大であろうし、そのあげくファンに批判を浴びる可能性も高い。
ただやはり、原作ありのアニメが一つの作品としてきちんと残っていくことを目指すなら挑戦すべき困難であるだろうと思う。
今作はこの点絶妙のタイミングで切り抜けた形。ほぼ同時進行形でクライマックスというのは最も良い形の一つだろう。
物語はかなり強引な設定で違和感は無視したまま進行する。毛色は全く違うが突然理不尽な世界に叩き込まれて説明もなく戦いに巻き込まれる「デスゲーム」物に近い。
なぜか一週間ごとに友達の記憶だけがリセットされてしまう女子高生。人間関係の構築が不可能となった彼女はクラスの誰とも関わらずに過ごしていた。そんな彼女に惹かれた主人公は友達になって欲しいと声をかける……。
状況設定がおもしろく、そこから二人の関係が少しずつ動いていく様子も緊張感をもって見守ることが出来る。
なぜなら一つ間違えばすぐに関係は忘却され、リセットされるのだから。
積み上げてきたはずの人間関係が、ふとしたことから崩れ去って他人になる。特に恋愛関係において多くの人が実感したことのある悲劇ではないだろうか。今作の一週間でリセットの仕組みは、常に関係のはかなさ、断絶を予感させる装置として有効に働いている。
反対に考えると、設定も人物の反応も現実離れしている。それなのに感情としてはリアル。まともに取り合うとつっこみどころの多さに疲れてしまうかもしれない。意識して一歩引いた方が楽しみやすいだろう。
してみるとこの物語はおとぎ話として視聴したほうがしっくり来るかもしれない。
その一助となってくれるのが画面の現実離れした美しさ。特に放課後のやりとりが多いためか夕日のシーンが多い。実はそんなに多くはないのかもしれないが、印象が強い。
赤く染まる画面と射し込む光の美しい処理。中でも海のシーンは波の表現と相まって非常に美しく、幻想的な優しい空気で作品を包み込んでいる。
背景の美しさが世界観を強く打ち立てるという構成は新海誠監督の諸作品と通じるかもしれない。雰囲気で持って行ってしまうのである。
今作はキャラクター描画のクオリティも高く、作画、演技ともに申し分ないが、驚くほどステレオタイプである。純真無垢で素直すぎる反応を見せる主人公とヒロイン。視聴者としてはこれも反発せず、おとぎ話だからとふっくら受け止めた方が世界の幸せが増えるだろう。
まじめに作られた、誠意ある作品だと思う。
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